第一話
新シリーズです。
よろしくお願いいたします。
一応、説明も書いておきます。
『こちらハウンド01。展開中のスピアヘッド01へオーバー』
「こちらスピアヘッド01。ハウンド01何かあったか?オーバー」
『緊急事態だ。目標が対地攻撃を始めた』
「…想定外の動きだな」
『ああ、全く持ってその通りだ。それでだが、ハウンド02が重傷を負った。援護は可能か?オーバー』
僕はアンチマテリアルライフルを構えつつ目標を視認する。
「援護は可能だが…司令部から攻撃許可が未だに出ていない。我の独断では判断しかねる。オーバー」
『了解した。友軍航空部隊は?オーバー』
「現在、友軍航空部隊は第二空域に展開中だそうだ。オーバー」
『了解。緊急事態に付き、対空攻撃を行う為ヘルドッグ大隊へ注意喚起を願う。オーバー』
「了解した。武運を祈る。アウト」
僕はそう言って再度、スコープを覗く。
その先では先程、連絡を取っていた部隊が対空攻撃を行なっている。
僕は司令部に連絡を取り発砲許可を貰い目標に標準を合わせる。
『緊急!緊急!こちらヘルドッグ大隊。展開中のどの部隊でも良い!衛生兵を一人で良い、ポイント・デルタへ回してくれ!』
『ヘルドッグ大隊へ。こちらはハウンド大隊。残念ながらこちらもそちらに割けるほど人員が居ない。遺憾ながら我々の隊からは回せない』
『…了解した。他の隊からも…無理か。了解した…』
「こちらスピアヘッド01。ポイント・デルタで何があった?」
『スピアヘッド01へ。ポイント・デルタで民間人を発見。年齢は約15から16歳だと思われる。オーバー』
「了解した。今すぐ向かう。到着予想は今から300。オーバー」
『感謝する。観測機からの情報では近くに敵性勢力は無しだ。アウト』
僕はすぐさまアンチマテリアルライフルを鞄に直して五階建てのビルの屋上から縄を使って降下してバイクに飛び乗る。
そして、エンジンを付けて急ぎポイント・デルタへと向かった。
『こちらヘッドボーン06。スピアヘッド01へ。目標を狙撃せよ。繰り返す、目標を狙撃せよ。優先度は最優先だ』
僕は無線から飛び込んで来る司令部の管制官に苛つきつつも民間人と思しき人の保護に向かう。
ポイント・デルタ…つまりはビルの屋上だがそこで倒れているのは報告通りの少女だった。
「低体温症らしいが…出血があるな…。何があった?」
僕は一人で考えつつもバイクから持って来た処置セットを使い止血した上で自分の着ているジャケットを少女に被せてアンチマテリアルライフルを再度構えて目標を狙撃する。
アンチマテリアルライフル…つまりは対物狙撃銃だが国家予算から出された銃なだけはありICBMの弾頭ですら壊し切れない敵の外殻を一瞬でブチ抜く優れ物でである。
とはいえ、HEIAP(徹甲弾・榴弾・焼夷弾の三つの機能を持つ弾頭)の威力も相まっているのだろうが。
「こちらスピアヘッド01。目標破壊に成功。また現在、ポイント・デルタにて民間人を保護した。出来ればジープを一台回して欲しい。オーバー」
『了解。急いでジープを回す。御苦労だった。アウト』
と、その時少女が目覚めた。
「誰?」
少女は何処に隠し持っていたのか拳銃…それも見た所マグナムのリボルバーをこちらに向ける。
「どう言う気だ?」
「こっちのセリフよ」
少女はそのまま走って僕にナイフを突き立てようとする。
僕はそんな少女の手首を軽く捻って拘束する。
「さて、君は何者だ?」
「…答える訳…いたっ、ちょっ、痛いって!」
「答えないと…どうしようかな、拷問でいっか」
「適当ね…。というか、私の手首捥げちゃうから!」
「まっ、大方予想は付いてる。お姫様なんだろ?」
「…なぜ知って?」
「これでも諜報員やってるんで。まあ、アンタがその例の眼を持ってるのが決め手だが」
「やはり知っているのね」
「まあね」
僕は拘束を解いてライフルを片付けて彼女を到着したジープに乗せる。
「先輩も乗ったら良いんじゃないですか?」
「残念ながら司令部のお偉いさん方は僕を徹底的に扱き使うらしいので帰れないんだよ」
「あまり悪く言ったら怒られますよ?」
「はいはい。じゃあな」
僕はそう言ってバイクをジープとは逆方向に走らせる。
「チッ。ありゃ、ウチの子でも抜けるか怪しいぞ?」
僕は大量に蠢く夜闇に潜む“何か”を見ながらそう呟き司令部に援軍を要請する。
『スピアヘッド01は即時離脱を』
「了解した」
僕はそう言って無線を切ってバイクを基地の方に向けて走らせる。少し走ると門が見えて来た。
アレこそが第六要塞都市バトスだ。
侵入はほぼ不可能だ。
とまあ、そんな感じで僕は軍に所属している。
ちなみに、第六要塞都市は別名:亀型要塞と呼ばれており緊急の事態が発生した場合この上の空の防殻が閉まる。
と、そんな事を考えつつ軍基地に到着する。
「大尉殿、ドグレイ少佐殿から呼び出しです」
「了解。少尉、ご苦労だった」
「はっ。身に余るお言葉、ありがとうございます」
軍基地に到着するなり自分の部下――ル―グレン=フィドクレアが敬礼をしてそう言う。
僕はそんな彼を尻目に少佐の部屋に向かう。
「失礼します。第一特殊小隊長ルドレア=フォン=ヴィドレ大尉であります。第六都市防衛基地総長バレリア=フォン=ドグレイ少佐の指名により参りました」
「入りたまえ。ヴィドレ大尉」
「はっ。失礼します」
僕はそう言ってドアを開けて閣下の部屋に入る。
相変わらず女子女子した部屋だ。
「ヴィドレ大尉。貴官に新たな命令を下す」
そう言って閣下は僕に命令書を渡す。
「拝見します」
僕はそう言って命令書を確認する。
「…第一特殊小隊は第二学園要塞都市で防衛任務ですか?」
「そうだ。先程の襲撃によってあっちの防衛軍主力が損害を受けた」
「了解しました。ドグレイ少佐」
「…緊急だ。奴らの襲撃によって例のが」
「了解。第一特殊小隊出撃します。少佐、出撃許可を」
「最後まで言わずと理解するとは…優秀な部下を持ったものだな」
「こっちこそ優秀な上司を持ったものですよ」
「では、ヴィドレ大尉。新しい命令を下す。第一特殊小隊は即座に一個師団が浸透中のエリア52に出撃せよ」
「了解致しました。ドグレイ少佐、命令を了解。アレは用意して貰えるんでしょうね?」
「ああ、既に第九〇五特殊部隊に出撃命令を出してある」
「では、我々は向かう事と致します」
「幸運を祈る」
「はっ。勝利は常に我らと共に!」
僕は敬礼をして部屋から出て行く。
僕は中隊を集めて作戦を軽く説明してジープに乗る。
「了解しました。先輩」
「というか、常々思うのですがこの部隊、人数少なすぎじゃありません?」
「この部隊が設立された理由知ってます?」
「?」
「先輩、教えても良いですか?」
「別に問題ないだろ」
「そうですか。では、少尉諸君。私達は能力を持っている。が、能力がない者とある者では戦い方が全く違う。ついでに言うと思考回路も。よって、参謀本部ではその者を集めた新設の大隊を作る事にしたのだけども…。基本的に此処に配属になってる人って殺傷ランクAより下は居ないわね?」
「そうですね。中尉殿」
「その為、大隊に混ぜると危険と認定した者だけを此処に配属してる訳」
「つまりは危険人物の詰め合わせパックだと?」
「そう言う事です。ちなみに先輩のランクは2S、人類最高峰の危険人物です」
「褒めてないだろ」
「そんな事ありませんよ、先輩」
「っと、そろそろ来るぞ。総員、第一種戦闘配置へ移行せよ」
僕は無線で並走しているジープにそう告げる。
他のジープには第二分隊・第三分隊・第四分隊が乗っている。
僕が無線でそう告げてから数分も経たない内に隊列が形成されサンルーフから狙撃手が顔を出す。
流石の手際の良さだ。
『こちら02、移行終了』
『同じく03、移行終了』
『04も移行完了です』
「よろしい。敵は多いぞ」
僕がそう言うと前方から対能力者用のヘリと対空対地ミサイルを乗せた〈M1A4アラーニア〉が数十機突撃して来る。
第二分隊と第四分隊が対能力者用のヘリを撃墜していく。
僕らと第三分隊は〈M1A4アラーニア〉を破壊して行く。
普通なら負ける相手だろうがあっちは分厚い装甲と機動性に欠けた汎用型の〈M1A4アラーニア〉。小回りの効くジープ相手には少々キツいものがある。
しかも、あちらの兵装は対空対地ミサイルと四〇mmの機関砲のみ。
対地ミサイルを飛ばせば味方を撃つし機関砲では能力者の造る薄い装甲に弾かれる。
頼みの綱で有ったのであろうヘリも先程と比べると目減りしている。
しかも、第二分隊の連中はヘリを上手く堕として一機を自分達の物にしている。
能力者に対抗する為の一五〇mm機関砲がヘリの装甲に当たる事は加味されていないので第二分隊の操作するヘリ以外はすぐに溶けて行く。
そんな感じで戦闘していると付近に爆発音が起きる。
ウチの〈マリオネット〉だろう。
〈マリオネット〉には兵装が数種類あり対地戦闘用・対空戦闘用・対艦戦闘用・対潜戦闘用・対能戦闘用・対ゴーレム戦闘用に大別される。
その中でも今回は対空戦闘用のミックス装備らしい。
先程の爆発音は〈マリオネット〉の電磁砲だった様だ。
アレは5.9km/sと言う爆速で重さ約五kgの弾頭を発射するのだ。
避け切る事はほぼ不可能だろう。
しかも、対能戦闘用ヘリに向かっては対空ミサイルを惜しみなく使って行く。
蹂躙と言っても過言では無い。
流石、一個中隊を動員して動かすだけはある。
勿論、この〈マリオネット〉の操縦自体は一人、又は二人だけで完結するが動力炉の制御・冷却、砲弾の装填、サブミサイルの照準etcの仕事を熟すとなると一人では確実にキャパオーバーだろう。
しかも、アレの整備には一個師団が居ると来た。
あれ一つに対しての労力はとんでも無いのだ。
『こちらマリオネットよりスピアヘッド01へ。オーバー』
「こちらスピアヘッド01。RSレポート、ファイブナイン。オーバー」
『了解。こちらも同じくだ。貴官の部隊の状況を教えてほしい。オーバー』
「了解。こちらは現在、主だった損害も無く戦闘中。尚、ヘリ…えー、機体識別番号一二◯五にはスピアヘッド02が騎乗中だ。くれぐれも堕とさない様よろしく頼む。オーバー」
『ああ、ウチにそんな間抜けはいないはずだ。安心して飛んでくれとよろしく頼む。オーバー』
「了解した。我らに勝利を。アウト」
僕はそう言って〈マリオネット〉の通信兵からの無線を切る。
さっきからかなり無茶な運転ばかりしている所為でエンジンが危ない。
まあソレよりも、隊員が誰も酔っていないのが凄いと思う。
十回転スピンの後にドリフト、自分ですら酔いかけたのに…と尊敬の念を抱く。
そんな事はどうでも良いのだが…。
僕は車をドリフトして〈マリオネット〉の逆側––つまりは敵の方に車を走らせる。
「先輩!?何を!?」
「あっちの全部隊に通達。総員、避難すべし。と」
「急にどしたんですか?」
「地中に巨大な魂の波動を感じた」
「つまり…」
「魔物大行進だ。しかも、要塞都市を蹂躙出来るレベルの。な」
「了解。第一分隊は総員、警戒及び戦闘準備を。私は第二・第三・第四分隊に避難勧告を出します!」
「頼む。僕はマリオネットに通告する」
「はっ!」
ジープの中で慌ただしく人が動き始める。
僕と助手席に座って居るミリア中尉が無線で連絡を入れる。
『こちらマリオネット。通告感謝する。我々は今すぐ撤退し司令部に伝える。オーバー』
「了解した。こちらは出来る限り遅滞戦闘に努める。アウト」
僕が無線を切るとミリアも丁度、終わった所だった。
「先輩、備え付けの誘導弾の用意をして良いですか?」
「ああ。中尉、急げよ。会敵予想時刻は五分後だ」
「りょうか――」
ミリアがそう言おうとして言葉を止めた。
RSレポートとは…
アマチュア無線における相手側の受信状況を報告する際のコードで了解度(R)信号強度(S)で、シグナルレポートと呼ばれることもある。
了解度…主観で判断。
1…了解できない。
2…辛うじて了解できる。
3…かなり困難だが了解できる。
4…事実上困難なく了解できる。
5…完全に了解できる。
信号強度…Sメータを読む。
1…微弱で辛うじて受信できる信号。
2…大変弱い信号。
3…弱い信号。
4…弱いが受信容易な信号。
5…かなり適度な強さの信号。
6…適度な強さの信号。
7…かなり強い信号。
8…強い信号。
9…非常に強い信号。
両方が最大値を示す言葉が“59《ファイブナイン》”と言う訳です。