帰り道
冷たい風が吹く中をロンと二人で並んで歩く。ロンの手を取ろうかと思ったけれど、彼女は両手でオルゴールを抱えている。
「オルゴール、直したかったんだ」
「そうなの」
「うん。アデールがすごく大事にしているのは分かったし、魔王様がどんな音をアデールに贈ったか聞きたかった。それでこれ後ろ側が開くだろ。開いたけど中が見えなかったから振ったら埃とかゴミとか出てくるかなって振りかぶったところでアデールが帰ってきたんだ」
やっぱりそうだった。ロンは人の大事なものを粗末にするような娘ではない。だというのに私は。
「ごめん。ごめんねロン。あなたの話を聞きもしないで怒鳴ってしまった。あなたを信じることができていなかった。ごめんなさい」
「ううん。あたしがアデールの大事なものを勝手に触ったのがいけないんだ。直すのだとしても、ちゃんとアデールに断らなきゃいけなかった。それでリゼットに視てもらったもらったんだ。そしたら壊れてないって言われた」
「え?」
どういうことかしら。現に音は鳴らない。でも確かにリゼットは技術省の中でも整備工としての能力を買われて採用されているし、最近は軍隊の装備品の修理なんかにも携わっていたはずだから、その手の修理は得手としているはずで。
「中に魔術が仕掛けられてるって言ってた。アデールの声を収集して動くんだって」
「声? ……あ」
「心当たりある?」
「あるかも」
これをくれた時にアルテュールはなんと言っていたか。
『君の声を、君の話をこれからも隣で聞いていたい』
そんなことを言っていた。あれはそういう意味だったのか。
「そっか。壊れていなかったんだ」
「うん。仕舞われていたのと、ずっとアデールの声を聴いていなかったから鳴らないだけだって。だからこれ、机の上に置いておこう? それでごはんの時とか、寝る前とかたくさん話そう。そうしたらきっとまた鳴るよ」
ロンの言葉に涙が止まらなかった。良かった。壊れていなかった。私の大事なアルテュールとの思い出はちゃんと残っていた。そして大事な娘も、隣にいる。
「ロン、ありがとう」
「ううん。早く聞けるといいな」
そして二人で並んで歩く。城内に入ると風が当たらない分暖かい。急いで部屋に戻って、お風呂に入って今日は寝てしまおう。そして明日からたくさん話そう。




