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高校時代に“思い”を知る

 高校生になってからも相変わらず私は一人でいることが多かったんだけど、ある日ガラの悪い女子生徒たちから喧嘩を売られてね。もちろん返り討ちにしたんだけど。

 いや、ね。入学した頃はまだ中学の友達の事が頭から離れなくってさ。

 自然とイライラすることが多くなっちゃって、売られた喧嘩を見事に買ってしまったワケ。


 それで、散々なまでに叩きのめしてこれ以上関わらないように忠告したら、その人たちは何と言ったと思う?

 「あたいらを舎弟にしてくれ!」って至極まじめな顔で言ってきたの。

 あ、舎弟っていうのは……ああ、それはわかるんだ……。じゃあ、話を続けるね。


 その女子生徒たちっていうのが、親とか先生とかを毛嫌いして好き勝手したがる人たちの集まりでさ。

 そう、反抗期。髪の毛とか金色に染めたり制服のスカートを短くたたんだり、夜中も町を出歩いたりして先生たちとか親に心配と迷惑ばかりをかける反抗期を迎えていた子たちばっかりだったんだ。

 んで、どうもその人たちにとってリーダーっていうのは頭が回って腕っぷしが強い人のことを言うらしくてね、私に最初から目をつけていたらしいんだよね。

 ほんと、はた迷惑というかなんというか……。


 ああ、うん。きみが想像しているとおり、なんだかんだで私はリーダーをする羽目になってね。

 でも、素行の悪い人と一緒にいては小中学の頃とあまり変わりがないからさ、組織の改革ってのを行ったんだ。

 具体的に言うと、あまりにも派手な化粧をしないとか、夜遅くまで出歩かないとか、誰彼構わず相手の嫌なことをしないように注意したりだとか……。


 え? 意外? みんなと一緒に悪いことをしているのかと思ってた? ……まさかあ。

 私ってこう見えてもまじめちゃんだったし、親の言うことはちゃんと聞くタイプの女の子なんだからね。


 もちろん、意見が合わなくて喧嘩になりかけることも度々あったよ。だってみんな反抗期で、自分のやりたいようにしたいわけだし。

 けどね、以外と仲違いするまでにはいかなくてね、その子たちとは今でも仲が良いんだ。

 普通なら喧嘩してしまったらそれまで、仲直りしても気まずくなってしまってお互いに気持ちが離れていくことが多いんだろうけど、私たちはそうはならなかった。


 これにはちゃんと理由があってね。みんな()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんだよ。


 例えば、夜遅くに出歩くのをよしとしている子と絶対にダメな子がいてね。長いこと言い争っていたんだけど、お互いの事情を知ってからはすぐに話が落ち着いたんだ。

 夜遅くに出歩く子の方は両親が夜遅くにしか帰ってこなくてさ、帰ってから寝る前におやすみの挨拶をするまで起きてなきゃいけなくて、それまでの暇つぶしとして外を出歩いていたって。

 早く家に帰る子の方はこちらも両親の言いつけでね、早く帰らないと夕食を抜きにされてしまうから、とにかく急いで帰らなきゃいけなかったんだよ。


 相手の事情がわかってから二人はとても仲が良くなってね、どっちも親の言いつけを守らなくなったんだ。

 ……うん。結局は悪いことをする羽目にはなってるんだけど、二人の両親も子供たちのことを考えてないような言いつけをしてたからさ、まあ仕方がないよね。


 きみも今は誰一人として助けてくれる人がいなかったから逃げてきたんだろうけど、きみにちょっかいを出してくる子たちが全員、からかいたくてからかっているワケじゃないんだって思ってほしいな。

 きみのクラスにもリーダー的な男の子がいるでしょ? ……そうそう、力が強くて言い返したりしたら怖そうな子とかね。

 その子に嫌々ながらに従っている子もきっといるんだよ。だって、従わなくって目をつけられちゃったら何されるかわかったものじゃないからさ。

 うんうん、理不尽だよね。怒ってもいいと思うよ。でも、その子たちだって怖い思いや痛い思いをしたくないんだってのはわかってあげてほしいな。


 じゃあ、どうすればいいのかって?

 そうそう、ここからがその話の本題なんだ。


 さっきはガラの悪い女子生徒たちとは言っちゃったけど、一人一人考えていることとか好きなこととか全然違ってね。

 ある子は体を動かすのがすごく好きで、嫌なことがあったとしてもなにかしらのスポーツをしていたらすぐに気分が良くなっていたんだ。

 また違う子は、さっきの子とは逆で漫画とかアニメとかが好きでね、嫌な気持ちになったら好きなアニメを見て気持ちをリラックスさせていたんだよ。


 さて、ここで問題! 性格とか好きなこととかが全然違う二人だけど、ある共通点が一つだけあります。それは一体なんでしょう!

 あ、私と仲がいいとか、同じグループだったとかそういった意味じゃなくってね。まどろっこしくてゴメン。

 ……お! そうそう、当たりだよ!


 正解は、『嫌なことがあったら好きなことをやる』、でした!


 嫌な気持ちをずっと抱えていたらそれこそずっと悲しいままだし何も解決しないよね。

 けど、同じように解決しなくても嫌な思いをずっと持ち続けるよりは楽しい気持ちになりたいじゃん?

 それにね、暗い気持ちじゃうまいこと考えられないし、一度そのことから頭を切り替えて、別のタイミングで考え直してみるとよりよい解決策が思い浮かぶものなんだよ。


 だからきみも、辛いときは楽しいことを考えたり、好きなことをやって気持ちを切り替えよう。

 好きなことがないとか、わからないとかなら、今のうちにいろいろやってみるのもいいよ。

 大人になるにつれてやれることは増えてくるけど時間はどんどんとなくなっていくからさあ。

 好きなものを見つけるために何かしらをやってみるのもまた、辛いことを考えなくて済むしね。


 ……そう。私はその子たちのリーダー的なことをやってみたことで今までの暗い気持ちだとかに区切りをつけることができたんだ。


 助けることが出来なかったあの子の事を悔やんでも、時間はもう戻っては来ない。

 だから、次に苦しんでいる子を見つけたら、今度こそ私が持てる限りの力を尽くして助ける。

 いつか訪れる命の終わりを今になって怖がっても、それが今日なのか百年後なのかは誰にもわからない。

 だったら、くよくよ悩んでいるよりも今を精一杯、悔いを残さないように生きていく。

 ……なんてことを自分に言い聞かせて、ようやく前向きな気持ちでいろんな人たちに関わることができたんだ。


 それからはさ、今までと見ている世界が変わっていったんだよね。

 あ、何その顔。さては信じてないな? 冗談じゃなくて本気で言っているんだぞお?


 みんなみんな違う考えを持っていて、好き嫌いがあって、見ているものが別だったりする。

 そんなの当たり前だって思うかもしれないけど、なんて言ったらいいかな……頭ではわかっていても気持ちがついていかないってことあるでしょ? それと同じで、今までは気持ちがついてきてなかったんだけど、その時になってようやく気持ちがついてきたって感じ。


 あはは、今はまだわからなくてもそのうちきっとわかるようになるよ。

 私だって高校一年生の冬真っ盛りの中、今まで身だしなみとかまったく気にしていなかった子が、好きな人ができてからは自分の格好を凄く気にしだしたところを目にしてからようやく理解したんだからね。


 それからはほんと、今までガラが悪い女子生徒で通してきたみんなが急にそこらにいる女の子たちとさして変わらなくなり初めてからさ、見ているがわからしてみるととても面白かったんだけど、取り巻く環境が次第に変わっていく瞬間を目にしているんだと思うと、なんか寂しくなっちゃってさ。

 みんなみんな、ずっと考えてこなかった将来のことを思い始めたから、なんだか取り残されているような気持ちになっちゃってね。

 ……もしかしたら、その時にはもう取り返しがつかないところに来てしまっていたからだったのかもしれないけれど。


 さて、これで高校生の頃のお話は終わり……ん? もう少し先の話はないのかって?

 あるにはあるけど、高校生から病人にジョブチェンジしちゃったからね……。


 聞きたい? きっと面白くない話になるよ?

 ……そう、今までいろいろと教えてくれたからもっと聞いてくれるんだね。────ありがとう。

 じゃあ、あまり暗くしても仕方がないから簡単に、面白おかしく話せるようにしてみるよ。


 というわけで、みんなが将来のことを考え始めているうちに迎えた高校二年生の春、

 授業中だというのにお腹が痛くて痛くて自分の席から転げ落ちちゃった私が病院に担ぎ込まれたところからお話を戻そうか。

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