小学時代は破天荒だった
今回から暫く二人称展開で物語が進んでいきます。
私ってさ、きみぐらいの年だった頃はどちらかと言えば男っぽい性格でね。女の子の友達よりも男の子の友達の方が多くって、校内で静かに遊ぶよりも校庭で元気に遊ぶ方が好きだったんだ。
きみはどっちかと言えば図書館で本を読んでそうな気がするけど……。
そうでもない? 意外だけど、やっぱり男の子なんだなあ。
ああ、そうそう。それでね、女の子たちって噂話が好きでしょ? 男の子たちはめんどくさいことが苦手だから直接的に口に出したりして気持ちもわかりやすかったりするんだけど、女の子たちってそう一筋縄にはいかなくってね。
ある女の子が他の子よりも太っているからって理由でいじめられるようになっちゃったんだ。
体格なんて小学生くらいだと痩せているよりも少し太っているくらいの方が健康的だし、生まれつきってものもあるってのにね。
だから私はいじめていた女の子たちにこう言ってやったの。
「自然体でいる彼女よりも、美しく取り繕うとしているあなたたちの方がよっぽど意地汚くてかわいくない」ってね。
まさか、直接関係のない私にそんなことを言われるとは思ってなかったんだろうけど、その時のいじめっ子たちのびっくりした顔は面白くてしかたがなかったなあ。
そんなことをして何もされなかったのかって?
もちろん、いじめっ子たちが黙っているはずもなくってね。いじめの対象はいじめていた子から私に変わったよ。
失敗だったのはいじめっ子たちの中にクラスのマドンナ……ってわかるかな。そうそう、人気者の女の子の事ね。彼女がいじめっ子たちを率いていたことでね。
自分の事をバカにされたってめちゃくちゃ怒ってからさ、悪口とか陰口とかだけじゃなくって物を隠されたり体操服をはさみで切られたり、なんでもかんでもやってきたんだ。
流石に授業に支障が出たりしたからやめるように文句を言ったりしたんだけど、そしたら人気者の女の子のいうこと全てに従うようにって言われちゃってさ、あんたはお姫様か何かかよってね。
そりゃあ、そんな脅しに屈するような私じゃないけどさ、あまりにもちょっかいが酷くてうっとうしくなっちゃってね。
結局のところ、やられたことに対してうまく言い返すことなんてできなかったから、それと同じことをやり返したわけ。
教科書が破られたらその破ってきた子たちの教科書も破ったし、体操服をはさみで切られたら切ってきた子の体操服を胸元ぐらいまで真っ二つに切ってやったりと、目には目を歯には歯を、って感じに留めてね。
そしたら私に対するいじめ行為はぱったりとなくなってさ、みんな私のことを怖がって近づかないようになったんだ。
そんなこんなでようやく気楽になった私だけど、ここでもまた酷い勘違いをしちゃってね。
力にはそれを超える力を以て制する……要するに、やられたら倍返しこそが全てなんだって思っちゃったんだ。
現にマドンナに言いくるめられたクラスの男子が私に喧嘩をふっかけてきた時、その男子をボッコボコに叩きのめした翌日から私の前では陰口すらも言えなくなっていたあたり、やはり暴力……! 暴力は全てを解決する……! ってなってたもん。
……うん、引くのもわかるよ。今の私だって昔の私は破天荒だったなあって思うもんね。
だってそれから長いこと「何があっても私は悪くない!」って考えでいたからさ、ほんと、聞き分けのない子供だったなあって。
まあ、やられない限り自分から相手にちょっかいを出したりしなっかったことだけは褒められるけど。
もうちょっと性格が良かったらきっとモテてたかもね。まあ女の子からだろうけどさ。
話が脱線しちゃったから戻そうか。今私が言った昔話は聞いてわかったかもだけど悪い例でね。
今君が嫌なことを言われているとしても、絶対に強い言葉で言い返したり暴力を振るったりしちゃいけないよ。
肝心なのは、相手が自分にちょっかいを出しても良いことがないと思わせることなんだ。
毅然に……って言ってもわからないか、何か言われたとしても気にしてない風に見せたり軽く聞き流したりしたら、意地悪って自然とおさまっていくもんだよ。
だっていじめてくる人たちからしてみたら君に悪意があってやってるわけじゃなくて、面白い反応を見たくていじわるしてるだけだもん。
それにね、悪口を嫌に思ってしまうのは、なんとなく自分に当てはまる事を言われているように思っちゃうから何だよ。
例えば助ける気はなかったんだけど結果的に私が助けたちょっと太っていた女の子だけど、その子は自分が他の子と比べて太っているってわかっていて、それが悪いことだとちょっとだけでも思ってしまったから辛い思いをしていたんだ。
さっきも言ったけど、見た目なんてたいしたことないのにダメなことだと思ってしまう、それこそ自分の心の中に深く重くのしかかってきちゃうんだよね。
だから君ももう、自分は『死神』だ、なんて口にしちゃダメだよ。
自分は悪い人なんかじゃない。他の子と変わらない普通の男の子なんだって覚えておいてね。
私も決してそのことを忘れないからさ。
……はい、これで小学生の頃のお話は終わり!
それで次は中学生の頃の話なんだけど、このお話の方がきみには重要かもね。
え、なんでかって? それはね────。
私の一番の友達が自分からこの世を去っちゃった時のお話だからだよ。