33話 ドジっ子と卑猥
9月上旬、美影宅でとある女性が訪問していた。
「そんじゃ実葉月、旅行の3日間サタッペを頼んだぜ」
「全身全霊をもって子守をさせて頂きます!」
「おぅ、土産楽しみにしとけ」
「はいっす! お気を付けて!」
朧実葉月20歳、美影一派を統率する若きレディースのトップ。
ポニテの赤髪、愛嬌ある猫目、妙に体付きが艶かしい美少女。
尊敬する美影を見送り、ふんすと気合を入れ直す。
「3日間よろしくっす! サタッペ!」
「ミャー」
「お、擦り寄ってくるっすね! このこの~」
上機嫌なまま抱きかかえ、大きな胸に埋もれるサタッペも心なしか居心地良さげ。
《妾もフォローするので心配いりませんわ》
「オナシャス! 蕾さん!」
「ミャー」
首輪の小型カメラから様子を窺う蕾、美影に頼まれて快く引き受けていた。
普通なら必要ない筈が、今回は実葉月のためであった。
「さてと……自由に過ごしていいと言われたっすけど……何すればいいか分からないっすね」
《サタッペ様が遊んでほしそうですよ?》
「お! なら早速遊ぶっす!」
「ミャー」
おもちゃスペースでガサゴソとおもちゃ選び、サタッペも向かい側で眺めていた。
「どれで遊びたいっすか? これっすか?」
「ンニャー!」
「おっと! 猫パンチで選ぶっすね! 了解っす!」
次々に選ばれるおもちゃ、猫パンチでことごとく除けられる。
これはこれで遊びの一種だと思われるが、真面目な彼女は選び続ける。
「では、これでどうっすか! 羽の猫じゃらしっす!」
「ニャー!」
「キャ!」
興奮のあまり飛びつき、突然の事に後ろへ倒れてしまう。
「いたた……」
《あら、立派な谷間ですわね……ふむふむ》
どうしてか服が大きく捲れ、立派な胸が御開帳。
そんな事は気にも留めずに、キョロキョロとサタッペを探していた。
「だ、大丈夫っすかサタッペ? どこっすか?」
「ニャ♪ ニャ♪」
「ほっ……後ろにいたっすね」
ドジっ子な上、毎度何故か卑猥さを覚える姿になってしまうのが彼女。
本人は気にせずにその姿で放置気味、なのでその都度正していくのが蕾の役割だった。
《実葉月様、捲れ上がった衣服を直して下さい。お胸がエロイですわ》
「は! ご指摘感謝するっす! んしょんしょ!」
何をしても仄かに卑猥さが滲む実葉月、サタッペが再び擦り寄って甘える。
スラっと柔らかな太股に乗せ、撫でたり匂いをスンスン嗅いだり楽しむ。
オヤツの時間になり、尻尾を振ってチューブタイプオヤツをぺろぺろ。
「美味しいっすか?」
「ミャー」
《オヤツも上げ過ぎに注意ですからね》
「了解っす! ワタシも自分のおやつを食べるっす!」
キャリーバッグから荷漁り、手作りクッキーとグミを嬉しそうに出していた。
冷蔵庫で一礼し、牛乳を拝借。コップにも一礼し飲みたい分だけ注ぐ最中、足元に擦り寄ったサタッペに気を取られ、手元が疎かに。
「あー……牛乳零しちゃったっす! 拭かないと!」
「ミャー!」
「キャ! さ、サタッペ! ぺろぺろ舐めないで欲しいっす!」
《ほほぉん……牛乳で張り付いた雅な体……大いにありですね》
「そ、そこは大事なところっす! あ!」
甘い吐息を静かに拝聴、卑猥な姿も目に焼き付ける蕾、冷静に分析する姿は変態の鏡。
サタッペに翻弄されながらも、どうにか止めることに成功。
「これは着替えないといけないっすね……張り付いて気持ち悪いっす」
《誰もいませんですし、その場で脱いでは?》
「そうっすね! んしょんしょ……」
素直に従い下着姿となり、女体品評会を1人で楽しむカメラ越しの変態。
プラプラと揺れる下着の紐、サタッペがうずうずと目で追い、我慢できずにダイブ。
「ニャー!」
「きゃ!? ぱ、パンツはおもちゃじゃないっす!」
《おほぉお~! 縞パン強奪ですか~いいですわ~》
軽々しく縞パンを強奪された痴女スタイル、どうせお風呂に入るんだから別にいいかの精神。
これが素の状態であるから驚きだ、美影一派も大変に苦労している。
「さぁサタッペ! 一緒にお風呂に入るっすよ!」
「ンニャー!」
「あ! 逃げないで下さいっす!」
家中を走り回りドタバタ、サタッペを捕まえた実葉月は何故か素っ裸になっていた。
それにすら気付いていない彼女のズボラっぷり、傍から見ればただの裸族。
《首輪は外して下さいね》
「了解っす! よーしよし、怖くないっすからね」
「ミャー!」
「あ! 暴れないで下さいっす! んぁ! ふぁ!」
《吐息がいちいちエロイですわね》
浴室から聞こえる慌しい声と音、どうすればそんなことになるのか妄想する蕾。
しばしのティータイムで暇潰し、サタッペを抱えスッキリ顔の湯上り姿。
「ふぅー! スッキリし……まだ体拭いてないっすよ! サタッペ!」
《……風呂上がりの生乳ですか~素晴らしいですね♪》
「待って欲しいっすー!」
何度もどたばた行き交う揺れる生乳、無防備過ぎる卑猥な姿は関心もの。
どうにかサタッペを拭き、綺麗さっぱりに仕上がった。
「はい! もういいっすよー!」
「ミャー」
「ご機嫌になったっすね! ニャーゴロゴロ~」
《あの実葉月様……貴方は着替えないんですか?》
「寝袋とオヤツで中身がいっぱいだったんで、持ってきてないっす! つまり洗濯が終わるまで裸っす!」
ポジティブシンキングの塊、このままだとドジの連鎖がループする。
最悪の場合、美影宅があられもない光景になってしまう。
先輩でもあり同じ志を持つ仲間、何としてでも阻止ししなければならない使命に駆られていた。
《……実葉月様。妾が今そちらに向かいますので、大人しくして下さい》
「来てくれるっすか! 了解っす! お待ちしてるっす!」
サイズ的には同じか少し上、何もないよりかはマシであると衣服はありったけ用意。
移動中にも卑猥な光景になっているのではないか、若干の不安と一緒に美影宅へ。
「いらっしゃいっす! 早かったすね!」
「……なにゆえにエプロン姿なんですか」
「自炊する為っス! こう見えても料理に自信あるっすから、エプロンは常備してるっす!」
「完璧に裸エプロンですが、まぁいいです。お邪魔しますわ」
まるで新婚ほやほやの新妻がする格好、自然に着こなすのだから恐ろしい。
「こちら着替えです」
「感謝するっす! んしょんしょ……」
「……恥じらいを知らないんでしょうか」
「え? 何か言ったっすか?」
「ミャー!」
いきなり飛びつき出したサタッペ、目標は蕾の揺れたネックレス。
しかし大きな胸が邪魔をし、軽々しく弾き飛ばされていた。
「あらあら。妾は実葉月様と違い、強者ですよサタッペ様」
「ンニャー!」
屈んだことで自ら最適距離を作ってしまい、間髪入れずに二度目の攻撃。
ネックレスをもぎ取るのと同時に、服の首元も引き釣り落とす。
バルンと揺れた魅惑の胸がお披露目、蕾は陥落した。
「わ、妾がこんなにもあっさり……」
「さ、立ち話もなんなんでどうぞっす!」
「す、スルー……」
それからというもの実葉月のドジっ子に感染、あられもない姿が絶えない3日間が過ぎた。
「ただいまー……お、おい実葉月。な、何でパンツ姿で出迎えてんだ」
「話せば長くなるんっすよ!」
「ミャー」
「お、おかえりなさいませ……美影しゃま……くへ……」
一線を超えたのではないかと思わせる蕾の半裸、原因は言わずとも実葉月なのは分かっていた。
足へ擦り寄るサタッペの翻弄、実葉月の卑猥ドジっ子はある意味相性抜群。
「はぁ……とりあえず中に入るぞ。サタッペも大人しくするんだにゃ」
「ミャー」
嘘のように大人しくなった魔性の子猫、胸に抱かれて気持ち良さげ。
「ほら、土産の菓子に食いもんだ」
「あざっす! 全力で食べさせて貰うっす!」
「ありがとうございますわ……妾は疲れましたので、これで……」
「お、おぅ。本当に助かった」
「感謝するっす! 玄関までお見送りするっす!」
「い、いえ! ここで結構で……」
時すでに遅し、自分の足に引っ掛かり転倒、青ざめた蕾が巻き添え。
覆い被さった実葉月は蕾の胸を生で鷲掴み、お互いの服も乱れ合い、下着もなぜか半脱げ状態。
追い打ちを掛ける様、サタッペが縞パンの紐にロックオン。
美影の胸をジャンプ台にしダイブ、紐を可憐に咥え取り、しゅるりと下半身が御開帳。
「いたた……わ、悪い子だにゃ! サタッペ!」
「ミャー」
可愛らしく怒る美影もまた、黒パンツが見える体勢、蕾の視点からはもろ見えだった。
「ナイス……パンツ……ふへ……」
完全にノックアウトした蕾、幸せな夢へと誘われる。




