15話 新学期と新入生
新たな出会いに胸躍らせる4月、真新しい制服の新入生やスーツ姿の新社会人が行き交う。緊張と期待に不安な面立ちになるのが大半だが、美しき女性2人を目の当たりし一気に吹き飛ぶ。
社内や校内にもあんな美人と美少女いるかもしれない、お近付きになれる可能性も無くはないと。知らず知らずに他人に心の綻びを与えていたのは、仲良く歩く古賀峰奈南と柳家怜であった。
「オリテの後どうすんだ?」
「んー……服見たり適当にぶらぶらかな」
「そうか。一緒に行っていいか?」
「うんうん! 勿論だよ!」
新学期早々に幸福感に満たされる奈南、腕を絡め幸せを共有。特に拒むことなく会話に花咲かす怜、1年前の関係が嘘みたいな反応だ。
友人達と再会しオリエンテーション後、憩いの場である和み同好会へ赴く奈南と怜。別館には新入生を迎え入れる光景が映り、初々しい姿を流し見で見守る。
「お、よっしー部長からだ。早速和み同好会に新入生が入ったらしい」
「ホント? 目と鼻の先だね!」
「おぅ」
あれやこれやとハードルを上げ、待望のご対面の時。後輩に先輩風を吹かせる気満々な怜が先陣を切る、根拠なき自信はどこからくるのか。
「さてさて、どんな奴か楽し……」
「Dear! My! Sister! 怜っぃいいぃ!」
「ふぎゃ?!」
「れ、怜!?」
開けるや否や、何かが目にも止まらぬ速さで怜を押し倒した。怜を余裕で覆い隠す女性の体、ブラウン色のセミボブカット、白シャツとジーパンのシンプル姿。
何が起きたのか把握に時間を要する、この子は怜にとって何のかと。
「5年振りデスネ! ワタシとっても会いたかったデス!」
「っ……ろ、ロゼ……何でお前がいる……うげ……重」
くねくねと体を動かし喜びを表す謎の子ロゼ、現在進行形で下敷きになっている怜は呻き声で助けを求める。慌てふためく奈南を筆頭に駆け寄る後輩2人が救出、謎っ子は申し訳なさそうにしょんぼり。
「面目ないデス……」
「別に何ともないし気にすんな」
「うぅ……怜~!」
翡翠色の混じる蒼眼がうるうる潤い、感情のまま抱き着く。明らかに大きなお椀型の胸、余裕で腕を挟み込むキャパシティー、丁度奈南と美影の間ぐらいである。
嫋やかさと活発性の黄金バランス、誰とでも友達になれるタイプなのは一目瞭然。
「とりま紹介するな。こいつは遠目の親戚のロゼ」
「ロゼと言いマス! よろしくお願いデス!」
続け様に改めて自己紹介するロゼ・シャルロット18歳は幼少期から日本文化大好きっ子。日本語ペラペラで語尾は外国人アピール用、悠長に話すことも容易。モデルさながらのプロポーションは何度見するほど、女性陣の容姿偏差値が異様に高まる。
本場の日本を知りたいがため、怜と同じ大学へ留学しに来た有言実行ちゃん。
一通り話し終えると、1つ上の先輩方が先陣を切る。
「外間ヶ丘紫音です。以後お見知りおきを」
「紫音先輩サン! お見知りおきマス!」
してやったりな顔を見せつけ、あからさまな煽りを美影に向ける。言わずとも効果覿面、紫音の前へ無理やり割り込みだす。
「この亜咲原美影に何でも頼ってくれよな!」
「頼もしいデス! 美影先輩サン!」
「おぅよ! ……へっ」
「ムカ……コホン……ロゼさん。僕の方が何倍も頼り甲斐があります」
「あぁ? 紫音てめぇ……」
戯れの前振りを同好会メンバーが察するが、何も知らないロゼだけが慌てて2人の間に割り込む。いがみ合いを忘れるぐらいの行動、美影と紫音が気を緩めた隙を見計らい、ロゼが頬キス。プルっと血色の良い唇が離れ、頬に手を触れ赤面する先輩方。
「仲良くなれる特別なおまじないデース! 喧嘩はいけまセン! プンプン!」
「お、おぅ……わ、悪かったよ……」
「い、いいえ……僕も悪気があった訳じゃないので……」
「わー! 今度は美影先輩さんと紫音先輩だけで仲直りのおまじないデス!」
「「え」」
とんでもない無茶振りに更に赤面、うるんだ瞳で見届ける気満々であった。初っ端から新入生との信頼関係に亀裂が生じてしまう、いくら何でもあってはならない。
プレッシャーの空気に根負けし、お互いに頬キスを済ませる。
「これでもう大丈夫デス! 良かった良かった!」
「顔熱ぃ……」
「顔から火が出そうです……」
部屋隅で仲良く恥ずかしがる先輩達、男性陣の紹介後いよいよ古賀峰奈南の番に。
「3年の古賀峰奈南です! 怜と同じ学部だよ!」
「とまぁ、こんな感じだ」
「WOW! 素敵なメンバーデス! これからもよろしくお願いしマス!」
ロゼの元気で明るい姿にほんわかとした空気に包まれる、場を和ませるとってもいい子。新学期初日に居場所を設けたロゼ、だが和み同好会に近付く新入生は彼女以外いない。
何故なら美人達の巣窟だと情報が拡散済みだからである。リア充でさえ中に溶け込むのに勇気がいる、既に近寄り難く尊い場というキャンパス内での認識。
この事実は和み同好会の女性陣は紫音以外知らない。
「さて、近日中にロゼ殿の歓迎会ですぞ!」
「祝いの席はアタシにお任せ下せぇ!」
「不安しか過らないので僕も手を貸します」
「あぁ? 紫音てめぇ……何かと突っかかってきやがるけどよ、アタシの事好きなのか?」
「何を言い出すと思えば……」
深い溜息で呆れるも、美影をチラ見しポッと頬を染める。
「まぁ……嫌いではないです……」
「あ、え……う、うん……アタシも嫌いじゃねぇ……」
本音をこぼした両者はチラ見で何度も顔を見合う、デレてしまえば可愛いもの。
微笑ましく胸キュンする奈南の横では、ぽわぽわと幸せオーラを出すロゼ。
「あんな風にワタシも皆さんともっと仲良くなりたいデス!」
「相変わらず天真爛漫だな」
ポリポリ菓子を食らい眺める親戚の怜、ロゼなら大丈夫だろうと安心して見守っていた。
「ソウデス! 明日から怜とルームシェアなのデース! ふんす!」
「へぇーそうな……ん? マジで言ってる?」
「サプライズデース!」
「な、何も聞いてねぇ……」
ガックリ肩を落とし明らかなテンションダウン、スマホをペムペムいじりだす。母親宛てにLINSメッセージを怒涛に送信、軽い謝罪スタンプとお小遣いアップの確約文が返ってくる。
「軽いな母さん……」
「怜怜怜~」
「むげぇ……近いっての……」
「いいじゃないデスカ~明日から一つ屋根の下なんデスヨ~?」
「暑苦しい……」
「照れ屋さんも可愛いデスネ! ウフフ~」
「んぁー……柔肉めー……」
子供をあやす要領で優しく抱擁、スベスベな柔肌が怜の半身に触れる。これはこれでありだなと美影達が小さく何度も頷く、男性陣は赤べこの如く首を垂れる。
「むぅ……」
大勢の前で堂々とスキンシップをとるロゼの姿、相手が怜だから余計に羨ましい。奈南は1人可愛らしく妬いていた、後輩達がムービーを撮っていることも知らずに。
「怜の頬っぺたはスベスベでぷにぷ……? どうかしましたか奈南先輩サン?」
「ふぇ? え? あ、何でもないよ!」
「ハハーン~……混ざりたいのデスネ! HEY! Come on!」
「ちょ!? ロゼ!? おま!?」
囚われた美少女の意志は反映されず、奈南を快く受け入れるロゼ。同好会の皆の前では恥ずかしいが、堂々と抱き着けるチャンスは滅多にない。答えは有無を言わさずYES、チャンスを有効活用するのが奈南のポリシー。
「えい!」
「……デカ共に挟まれた……」
両脇の美女に挟まれた美少女、温い体温を更に感じる。
「さぁ! 他の先輩サンも!」
「あ、アタシも行くぜ!」
「僕も!」
追加される美女はそれぞれ前面と背面から抱き着く、男性陣は身を引き静かに眼へ焼き付ける。今の室内はカオスそのもの、その中心人物である怜は息苦しく耐え凌ぐ。貧弱で華奢な体ではコイツらから抜け出せないからだ。
「美女ハーレムとは嬉しい限りですな怜殿!」
「う、嬉しくないっす……うげ……」
美女の四面楚歌は美少女にとっては柔肉の拷問に過ぎなかった。




