11話 年越しと御神籤
人がごった返す隣町の有名神社、奈南と怜がそわそわと到着。出店と賑わう人達で溢れる年越しの祭り、寒さを忘れる程の暖かな空間。
「人多」
「だね。いつも近所の神社だったから、凄く新鮮! 怜は?」
「そもそも行かねぇ」
「あ……」
空気を察し言葉を控える奈南、別に気にしてなかったものの態度が気に食わない怜。無言で弱点の横っ腹を小突く、案の定境内の男共がざわつく。ここのどこかにとんでもないメスがいる、拝めれば素晴らしき年明けが待っていると。
「おっふ! 奈南殿、怜殿! こちらですぞ!」
「こんばんは吉田部長さん!」
「お疲れっす。他の皆さんは?」
小柄ぽっちゃりの春山は、春山ライトニングの年末年始セールで引っ張りだこ状態。ジーザスこと外間ヶ丘真男は妹の紫音と遅れ来るそう。1年生の2人はそれぞれ境内で何か準備中だと。
「世良殿は神主仕事で大忙しなのです!」
「あーここ紳士先輩とこでしたもんね」
「え、ソウナンダ……」
紳士さんこと世良デビット明慶、アメリカ人の血を継ぐハーフ。今になって知った奈南は目を背け現実逃避。とりあえず3人で出店周りや参拝を軽く済ませ、無料配布中の甘酒で一息。
「怜はいらないの?」
「匂いが無理」
「むぅ……美味しいのに……」
「まぁまぁ奈南殿! 好き好みは千差万別ですぞ!」
「そうですけど……んー……」
以前の誕生日会でも飲酒は一切せず、ジュースをクピクピ飲んでいた怜。酔い姿を一度でいいから見たい、好奇心が前面に出る奈南。大根芝居で甘酒を怜の手に持たせるも、無言の圧力で睨まれ失敗。
ニッコリと微笑み返しつつ、再度挑戦する執着っぷり。諦めなさなら誰にも負けない、そう自負する自信家のアホ美人であった。
「怜達も来てたんだね」
「ん? おぉ! 夏乃斗……ん?」
「どうしたの怜?」
「夏乃斗の後ろに誰か隠れた」
奈南と怜がそわそわと背後を覗き見、大きな瞳の小柄な美少女がいた。もじもじが似合う愛嬌仕草にハートがキュンとなる奈南。自然とハスハス気味に手が気持ち悪く動き出す。一種の変態興奮モンスターである。
「紹介するね。彼女の綿縫一二三さん」
「わ、綿縫です……こ、こんばんは……」
栗色髪の清楚系美少女、怜並みの小柄でありながら強く主張する胸部。赤面し再び夏乃斗の背後へ隠れる仕草、キュンと更に胸高鳴る奈南。
「はぁ……はぁ……綿縫ちゃんって幾つなのかな?」
「あの……その……」
「後輩だから1つ下だよ」
「マジか……」
平らに近い自身の胸、突き出る年下の胸を見比べる怜。成長暴力をまじまじと実感し、内心軽く挫ける可愛らしい一面を見せる。
談笑する内に美少女後輩が打ち解け、柔らかな優しい笑みを浮かべる。年終わりに美少女美女達の眼福な光景を拝めたモブギャラリー、未だかつてないほどの素晴らしい初夢を確信する。
「……お。一二三さん、皆そろそろ来るって」
「あ、うん!」
「もしかして先約?」
「高校時代の友達とね。境内にいるから何かあったら連絡してね」
「おぅ。またな夏乃斗に綿ちゃん」
手を振る2人を見送った直後、境内で祭囃子が鳴り響く。音の中心にはコワモテ女性達が神輿を担ぎ、神輿上には花魁姿の美影が。
「怜の姐さん! 奈南の姉貴! 吉田部長さん! もうすぐ年が明けますぜ!」
「さ、寒くないの?」
「平気っす! 肩の一つや二つ! なんなら上半身マッパでも余裕っす!」
「美影ちゃんの世間体が心配だよ!」
「痴女まっしぐらだな」
可憐に神輿から降り、高下駄を鳴らし3人に接近。花魁姿の全身から溢れる色気、モブギャラリーの男共は鼻の下を伸ばす。ハイクオリティーな衣装に興味津々な怜、まじまじと頭先からつま先まで凝視。
「なぁ美影」
「はい! 何でしょうか!」
「触って生地を確かめていいか?」
「も、ももも勿論です! 好きなだけ触れて下せぇ!」
好き放題に体を弄り、今後のコスプレの参考資料をゲットした怜。クタっと荒い息遣いで横たわるエロ花魁、美影一派を含むモブギャラリーは興奮状態。
唯一の良心である吉田部長が父親の様に見守る中、1人の女性が美影を見下ろす。
「何でもかんでも騒げばいいものじゃありませんよ、美影さん」
「うへへ……はっ! 出たな紫音てめぇ……」
遭遇する度に睨み合う両者、仲をどうにかしたくて慌てふためく奈南。怜と吉田部長によって何とか納まる後輩達、しかし睨み合いは続く。
が、両者が敬愛する奈南と怜がいる前、不快な思いをさせまいと気持ちを切り替える。視線だけで意思疎通が可能なほど、相性ピッタリでも認め合わない美影と紫音。ツンとツン同士は非常に面倒くさい生き物なのである。
「コホン……敬愛なる先輩の皆さん! これから先のプランはアタシらにお任せあれ!」
「「「しゃす!」」」
「う、うん」
「がんば」
「では美影殿を先導に参りましょうか!」
御神輿に再搭乗する美影が先導、美影一派は奈南達の周囲を保護。何も知らなければただの物騒な集団である。おもてなしプランを続々にこなす内に周囲がカウントダウンを始め、流れに乗る同好会メンバー。
「残り3ですぞ!」
「2」
「1!」
「「「ハッピーニューイヤー!」」」
近場で花火も上がり境内は大盛り上がり、中でも御神輿で主張する美影が叫び出す。
「とぉおおおおおおしかが明けたぁあああ! 同好会の皆さん! 新年あけましておめでとうございます!」
「「「おめでとうございます! しゃす!」」」
「お、おめでとう美影ちゃん……みんなも」
「おめ」
「おめでとうですぞ!」
ニッコニコで見悶える美影に対し、呆れ顔を隠し切れない紫音。同好会メンバーは早速御神籤をするため授与所へ。
「奈南様、怜様、部長。明けましておめでとうございます」
「紳士さん! 明けましておめでとうございます!」
「おめっす。装束衣装似合うっすね」
「おめでとうですぞ世良殿! 御神籤を人数分頼みましたぞ!」
「かしこまりました」
金銭を渡し御神籤箱をシャカシャカと振る奈南、連動するように揺れるわがままなメロン。自然とキモい声を上げるモブ男達、後輩達は欲に駆られ動画撮影。人数分の御神籤を引き、それぞれがチェック。
「やったー! 大吉!」
「同じく大の吉」
「ほっふ! 新年早々仲がよろしいですな!」
目線の合った奈南と怜、気恥ずかしさのあまり頬を染める。美女と美少女のもじっとした空気、後輩を含んだモブ達は感激するのだった。
「クソ……末吉かよ……奈南の姉貴と怜の姐さんと一緒じゃねぇと意味ねぇ……」
「ぷっ……末吉、お似合いですよ」
「紫音てめぇ……って、おめぇも末吉じゃねぇか!」
もちゃもちゃと取っ組み合いの後輩達、傍から見ればただの美女同士のイチャ付き。服も乱れ肌が軽く露出、歓喜に満ちた歓声が湯水の如く湧く。
「あんな後輩達がいれば今年も騒がしくなるな」
「だね! んふふ~」
「なんだよ……気味悪い声上げて」
「前の怜だったらそんなこと言わないよねーって思ってね?」
「……うっせー」
ヘッドホンとノンワイヤレスイヤホン、二重の防御層で外音をシャットアウトしていた怜。今では何も装着せずにゲームと会話を両立、ちゃんと心開いている証拠であった。
「れ、れい~……頬っぺた離ひてー……」
「モチモチで伸びるな。みょーんみょーん」
「ふえぇ~……」
そんな2人の友好関係に指を咥え羨ましがる人物がいる。言わずとも亜咲原美影、その人であった。
「いいなぁ……混ざってモチプニされて、させても欲しい……むぁ!?」
「美影さんも頬っぺた伸びますね」
「ひ、ひおん! てめぇ!」
「んぁ! 勝手にフニフニしないで下ひゃい」
「うっへー!」
モチプニ音が止まない境内、その日居合わせた人達は少しいやらしい初夢を見たそう。




