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血脈を継ぐもの 断片  作者: pico
セイエイ26歳ぐらい
4/4

セイエイとシャル

ワンシーンだけです。

火の精霊を喚んで対処した後、その後遺症で苦しむセイエイ。


王城の奥、余人を排除した国王の居室。

苦しげに息を乱して、ただ1人セイエイが倒れ伏し、熱に浮かされていた。

その傍らに、どこからともなく人影が姿を現す。

そして、痛ましそうにセイエイを見やり、たおやかな手をそっと額に乗せる。

そのまましばらくすると、セイエイが目蓋を開いた。

「・・・・しゃ、・・る?」

乾いた唇が開き、ほとんど聞こえないほどの、かすれた声がそう呟く。それに人影は涼やかな声で応えた。

「ええ、わたしよ」

セイエイの熱でうるんだ瞳は、茫洋として、覚醒しているようには見えない。

水の精霊シャルの姿も見えてはいまい。額に感じる水の気に、思わず溢れた呟きだろう。

うわごとさえも声にならず、荒く乱れた呼吸音だけ発している唇に、シャルがそっと指をあてる。

すると、唇にほんのりと湿り気が宿る。

唇から指が離れ、つっと首を辿り、胸の上でとまる。そして押し当てるように胸の上に手のひらを乗せられた。

しばらくすると、セイエイの呼吸が整い始めるが、浅く早いまま、それ以上はよくはならない。

シャルは麗しいかんばせを曇らせると、投げ出された左腕を眉をひそめて見遣る。

セイエイの左腕の肘から先には、乱れた文様を描くように火傷の跡がある。それが、今日傷を負ったばかりのように赤く熱を持っていた。

シャルは、そっと両手で包み込むようにセイエイの左手をとると、歌うように何かを口ずさむ。


そのまま、どのくらいたっただろうか。

「・・シャル」

セイエイがはっきりと呼びかけ、シャルは歌をやめる。

その時には、左手の熱は冷め、セイエイの呼吸も随分と落ち着いていた。

シャルは小さく微笑み、セイエイの頰に手を当てた。

「気づいたのね」

「あぁ。・・・面倒をかけてすまない」

「面倒ではないけれど。あなたがこうして傷ついているのを見るのは嫌いよ」

「すまない」

セイエイは謝罪してくれるけれど、もうこんなことにならないようにする、とは約束してくれない。シャルはそれが悲しい。

セイエイが、シャルの手に自分の手を添えた。

「いつも、ありがとう」

そうしてわずかに笑む。それだけでシャルはもうセイエイを責められなくなる。

でも、これだけは忠告しておかなければと、シャルは言葉を紡ぐ。

「もうあの子の力を使ってはダメよ」

セイエイは頷いてはくれない。

「あなたの身体はもう耐えられないわ。あの子を使いこなすだけの生命力マナを与えきれてないから、その分の代償が身体を傷つける」

シャルは身を震わせた。

「私が来なければ、その左手も、呼吸を司る器官もまだ何日もあなたを苦しめたはず。・・・次にあの子を喚んだら、きっとそれだけでもすまないわ。左手だけじゃなく身体のどこかを失う」

それを聞いても、セイエイは顔色一つ変えなかった。だからさらに言葉を重ねる。

「セイ、だめよ。あなただけじゃない。これ以上は、あの子のためにもよくないわ」

火の精霊グウェンのためにもならない、と重ねられて初めて、セイエイの表情が動く。

「現状がどうであれ、元々あの子は貴方を護るよう願われて存在しているのよ。これ以上に貴方を傷つければ、あの子も歪んでしまうわ」

「・・・それは考えが及んでいなかった。すまない」

歪んだ精霊は魔に落ちかねない。その危険性があるのなら、うかつにグウェンを喚ぶべきではなかった。

今回は、咄嗟にグウェンを喚ぶ以外の方法が思いつかなかったのだけれど。

そう思いながら、セイエイの表情が曇った。

「あの子は生い立ちが特殊だから。・・とにかく、もう喚んではダメよ」

シャルが表情を緩めて、そう締めくくる。

セイエイも小さく笑み、気をつける、と答えた。

絶対に喚ばない、とは約束しなかったことに、シャルが気づくのは、その何年か後のことだった。



セイエイは獅子王の関係で、火の精霊とは相性が悪い。火の精霊を喚ぶのは左手からなので、左手が火傷し、今回は喉から肺も熱風などで傷めてたのを、水の力で冷やし癒しということなのですが、説明省いたらよくわからなくなってしまいました・・・筆力不足ですね。精進します。

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