クライム
改行が上手くできていないかも…
ちゃんと練習しないと!
ーーーザザァーーちゃぷちゃぷーーザザァーーー
(ここは、どこ....だ?)
[彼]は、大樹海の奥にある湖に繋がる川にいた.....少女と共に。
(ティアッ! おいッ....)
[彼]の口は言うことをきかない。
それは、まるでさっきまでのように体を[神]に操られているような感覚だ。
「あはは、楽しいね....あっ、名前を聞いていなかったね、
私の名前はティア、あなたの名前はなんて言うの?」
[彼]に少女はとても楽しそうに話しかけた。
そして、名を[彼]に聞いた。
(な、まえ?....もう忘れてしまったよ。)
そう、[彼]はもう90年くらいの間自分の名前など聞いていない。
しかし、[彼]の口は勝手に動き出した。
「僕は....そう、クライムだよ。」
[彼]の口からは、聞き覚えのある名前が出てきたが、誰の名だったかまでは思い出せない。
(そういや、僕はそんな名前だったかな…。)
そうは考えてみたものの、やはり誰か別のヒトの名前のように感じる。
しかしながら[彼]は、その違和感を気にとめることもなく新たな疑問を持った。
(ん? そういえば、今は川に足をつけているはずなのに水の感触や冷たさを感じない....。)
[彼]は漸くして自分の今の状況を思い出し、今の現状を把握する作業を始めた。
(あれ、手が少し小さい...。そういえば背も低く.....。ん? ティアも少し小さく....。)
[彼]は、自分たちが子供のようになってしまっている事と、
ティアはこちらの事を覚えてはいないことがわかった。
そして、今の状況はティアと初めて出会い小さな川で遊んでいた、
もうほとんど覚えていない昔の光景の様に思えた。
「もうそろそろお昼時ね〜、良かったら私のお母様の作ったお弁当を一緒に食べない?
お弁当を作ってくれるのには感謝しているけど、いつも多いのよね〜。 」
そう言って少女は、四角い箱のようなお弁当箱を開けた。
その箱の中には、色とりどりの沢山の食べ物がぎっしり詰まっていた。
「わぁー、すごぉーい。」
(なんてガキくさい反応をするんだ...)
ティアとクライムがお弁当を楽しそうに食べている間に、
[彼]は、ティアを眺めていた。
それは、ティアを見つめていたいなどというわけではなく、
なにかティアに足りない部分があるように思えてならなかっからである。
先程の戦闘では、ゆっくりと顔を見ていられたわけではないので、
ずっと昔の頃を思い出さなくてはならない。
(胸は....そんなに変わっていないな…うん。)
そんなくだらない事を考えているうちに、すっかりお弁当は空となったようだ。
とても満足そうなティアの顔を見て、
[彼]はこの優しい世界がずっと続いて欲しいと思い始めた。
体はやはり動かせないが、もう元の世界に戻って人なんかを殺したくはない。
そう考え、[彼]はその場の流れに身を委ねる事にした。
「あぁ〜、とっても美味しかった〜!分けてくれてありがとう、ティア。」
そんな事を考えているうちに、2人はお弁当を食べ終わったようである。
クライムの声を聞くと、その美味しさがこちらにまで伝わってくる。
「どういたしまして〜♪クライムに喜んで貰えて嬉しいわ!」
ティアもとっても嬉しそうに笑い、そのままお弁当をササッと片付けた。
(元の世界にいたティアもここに来ているのかなぁ....。)
[彼]は、どうしてももう一度ティアと言葉を交わしたかった。
しかし今の[彼]は、[神]と同化していた頃とは異なり、少しの感覚もなく、
どれだけ強く気持ちをぶつけても体は動かせそうにない。
[彼]はそのまま、体の主導権を奪えないかずっと模索していたが、全くの手応えもなく、
ゆっくりと日が沈んでいくのをただただ待っていることしか出来なかった。
「もう随分と暗くなってきたわね〜。そろそろお家に帰らないといけない時間かしら。」
ティアが空になったお弁当箱を布で包み、背に持ち上げながら言ってきた。
そしてそのまま[彼]が少し前までティアと2人で戦っていた城の方へ歩き出した。
「ティアの家はそっちにあるの?」
急いで追いかけてきたクライムが首を傾げてティアに聞いた。
「うん、私の家は向こうの方にある町にあるわ!あなたはそこから来たんじゃないの?」
ティアは、クライムが自分の住む町から来たと思っていたのか、
少しだけ驚いているようだった。
「うん、僕はもっとあっちの方から来たんだ。」
そう言ってクライムは、少女の向かっている方向とは反対の方向を指さしている。
「あら、そうだったのね…。では今日はここまでね、私は明日もここに遊びに来るわ。
お弁当も持ってくるし明日も遊びましょ♪」
ティアは、もう住むところについての興味はなくなったのか、
またニコニコ笑って手を振っている。
その顔を見てやはり何か昔と違うように思えたが、
クライムが動き出したので考えるのはやめることにした。
「分かった。明日もここへ遊びに来るよ!」
そう言ってクライムも手を振り、2人は別々の方向へと歩き出した。
今回から暫く、このクライムの生きる世界の話しが続きます〜