宇宙人との邂逅4
続きです。次回からまた主人公視点に戻ります。
007
少し時間はさかのぼる。
私こと――村雨類は生物準備室を出た後、速足で階段を――下った。
さっき届いたLINEに学校の近くで組織に所属していない超人――らしき人物が暴れているとの連絡が入り、現場から一番近い位置に滞在している私に現場に向かうよう指示が下ったのだ。
私と久間倉君との憩いの時間に水を差されたのは気に入らないけれど、指示が下ってしまったものは仕方がない――そう、仕方がないのだ。
私には暴れている超人を放置するという選択肢などないのだから。
校門を出て少し進んだあたりで田舎町であるこのあたりは人気が全くなくなる。
私は少し進んで周りに人が全くいなくなった頃合いを見計らって、全力で走りだした。
それは人間では到底出すことができない、それこそボ〇トも腰を抜かすような速度で走り抜ける。今朝久間倉君を追いかけた時とは比べ物にならない、それこそ本気の全力疾走だった。
全力で走って市街地まで到達するのはおおよそ十四分。間に合ってほしいと心の中で祈りながら私は全力で走った。
こんな時、空でも飛べれば便利なのにとつい現実逃避をしてしまう。
市街地に到着したとき、街にはすでに火の手が上がっていた。
詳しい状況は読めないが、市街地の中心で暴れている巨大な超人が暴れていて、それが被害を発生させているということは分かった。
その超人はかろうじて人型を保っているものの、筋肉が膨れ上がり、おおよそ人間ではありえないような大きさになっていた。暴れまわる様子を見るにすでに理性はないようで、ひたすら暴れまわっているだけだった。
(あのモンスターも私と一緒か……)
私は鞄の中から対超人用に調整された拳銃を取り出し、まだこちらに気づいていない敵に対して引き金を引いた。
――パァーン
全部で六発放たれた弾丸はそれぞれ急所をとらえ、モンスターはその場にうずくまった。
私が『やったか!?』とそう感じた次の瞬間、モンスターは起き上がり、人間離れした速度で私の方へ突進してくる。
「―――くっ!?」
私は拳銃で迎撃するが、こちらの存在に気付いたモンスターは弾丸を全て腕で振り払い、かまわず突っ込んでくる。
そして私の前まで来ると思いっきり腕を振りかぶり、その反動で私を吹き飛ばした。
衝撃の瞬間に腕を前に出すことでかろうじて衝撃を抑えたが、吹き飛ばされた反動で手に持っていた拳銃を落としてしまう。
「しまった……!?」
ボロボロになり、這いつくばる私に勝利を確信したモンスターが一歩ずつ私に近づいてくる。
かろうじて人の形を保っているようなその顔には、気持ち悪い笑みだけが浮かんでいて、私が最期にみる光景がこんな気持ち悪い笑みなのかと思うとただただ残念だった。
しかしそれに対して特に後悔はなく、やっぱり自分の死に方なんてこんなものかと思うだけだったけれど、それでも私が死んだ後に、またあのモンスターが暴れまわることで被害が出ることだけはすごく心残りだった。
久間倉君には格好をつけて『改造人間』なんて名乗ってみたものの、実際のところは普通の人間にほんの少し運動神経をよくした程度で――言うなれば、私は失敗作だった。本来なら超人を名乗るのもおこがましいほどに私は――ひどく弱かった。
モンスターがあと数歩で私のところまで手が届くという距離まで来たところで、私とモンスターの間にものすごい勢いで――空から人らしきものが降ってきた。
その姿はまるでヒーローのようで、風になびかせたマントがとても格好良かった――それこそ、嫉妬で殺したくなるくらいに。
そのヒーローは私の方を向いて口を開いた。
「――やあ、助けに来たぜ」
自信満々にそう言って私に手を伸ばすその姿に見覚えはなかったけれど、それでもその人物の正体について私が見間違えるわけがなかった。
でも認めたくない私は
「……えっと……どなたですか?」
そう言って私はあくまで気づかないふりをした。
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