宇宙人との邂逅3
前回の続きです。次回だけ一時的にヒロイン視点になります。
006
しばらく読書に耽っていたが、あまり集中できないと感じて、僕も帰ることにした。
そして、呑気に帰り支度をしながらふと窓の外を見ると、遠く、市街地のあたりから大きな煙が上がっていて――街中が炎に包まれていた。
その煙を見ながら、なぜか僕はさっきまでこの部室でスマートフォンをいじっていた彼女の姿を思い出す。
何かを決したように、僕は彼女が結局一滴も飲まなかったコーヒーを一気に飲み干してビーカーを水道で水洗いした。そして荷物をまとめて部室を出た後、僕は階段を『上って』いった。
僕は階段を上りきって――立ち入り禁止となっている屋上のドアの鍵を開ける。
無人の屋上にはもちろん誰かいるわけもなく、ただ四方に自殺防止用のフェンスが立っているだけだった。
僕はドアのカギを閉めると持っていた荷物をドアの横に置き、フェンスの近づいて
「――変身」
と、そう呟いた。
次の瞬間、僕の周りが光り出し、その光が収まると――僕の体は大きく成長し、骨格もより大きくなっていた。
しかし何より変わったのは僕の服装で――さながら、アメコミに登場するヒーローのようなスーツをまとい、背中にはマントをはためかしていた。
この状態になると、間違いなく知り合いが見ても僕が久間倉健人だとは気づかないだろう。それに、運動性能も通常時とは桁違いに跳ね上がる。
当たり前だ――だってこの状態の僕はもはや『人間』ではなく『宇宙人』なのだから。
文字通り人知を超えた力だって扱える――それこそ、春休みに出会ったあの宇宙人の少女と同じく。
「ずっとこの状態でいられれば楽なんだけれど、モノとか壊しまくって日常生活どころじゃないからな」
加えて『それに、あんまり周りにバレても面倒だしな』と小さな声でつぶやいた。
「――よし、行くか」
そう呟くと次の瞬間には屋上から僕の姿は消え失せて雲の上を飛行していた。
炎が上がっている市街地を目指して僕は真っ直ぐに飛行し、雲を割って市街地の中で着地場所を探し、炎が一番強く上がっているところに着地した。
そこに彼女――ボロボロの姿になった村雨類の姿を見つけたからだ。
村雨は、明らかに人間にしてはサイズが大きすぎるよく分からない生命体に向かい合っていて、僕はその生命体と村雨の間に勢いよく着地した。
屋上を飛び出してここまで来るのにかかった時間はおおよそ七秒。僕が着地した勢いで周りの炎はすべてかき消されていた。
「――やあ、助けに来たぜ」
僕は自信満々にそう言って村雨に手を伸ばしたが
「……えっと……どなたですか?」
と、村雨は首を傾けてまるで今日会ったばかりの他人に接するかのような反応をした。
そんな村雨に対し、僕はがっくり肩を落としながら敵――らしきものに向かい合ったのだった。
できるだけ早くアップします。