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僕はヒーローなんかじゃない10

014


「村雨。お前さ、付き合うときに僕が言ったことを覚えているか?」


 僕は後ろにいる村雨の方を見ることなく言葉を続けた。


「僕は確か言ったはずだぞ? 『お前がこれから顔を怪我でもして今の美貌を維持できなくなったら即効で分かれる』って」


「ええ、覚えているわ」


「僕が間に合わずに今の攻撃がお前の顔面をとらえていたら、間違いなく僕はお前とは別れていた」


「……」


「遅れてごめん。でも無事でよかった」


 僕はそう言うと、目の前の木原と目を合わせる。


「僕の彼女が世話になったな。次は――僕が相手だ」


「お前、何なの? その失敗作のピンチに駆けつけて、ヒーロー気取りなの?」


 木原はいかにも気に入らないといった顔で僕に問いかける。


「ヒーロー『気取り』じゃねぇよ」


 僕は掴んでいた木原の腕をそのまま振り回して木原を吹き飛ばす。


「見て分からないのか? ヒロインがピンチのところに遅れてやってくるんだぞ?」


 ――そんなの、正真正銘、本物のヒーローしかいないだろうに。


「空気の読めない敵役を持つとヒーローは苦労するよ」


「てめぇ、いい気になるなよ?」


 吹っ飛ばされて壁に打ち付けられた木原は凄みながら言う。


「俺の超人性はお前を上回っている。すべてのパラメーターでお前は俺の下なんだよ。さっき戦って分かっただろ」


「うるせぇやつだな。そんなことは分かってんだよ。

 それにいい気になってるわけじゃねぇ――ヒーローを名乗って格好つけてるだけだ。

 そして、ヒーローである俺がいる限り、お前はいつまでたっても敵役のままだよ」


「……殺す」


 そう言って木原は僕の方へ先ほどと同じく瞬間移動のような速度で突っ込んでくる。


 僕はそれを何とか両手で受け止めると――その場に崩れ落ちた。


 しかし、その場に崩れ落ちたのは僕だけではない――僕と同じく木原もまるで体の力が抜けたようにその場に座り込んでしまった。


「てめぇ、一体何をした!?」


 僕は両手を木原に密着させたまま、持てる力をすべて使って木原を羽交い絞めにした。


 そして、僕の手の中には不思議な光を放つ石が二つ入っている。


「てめぇ、それは一体何の石だ!?」


「僕だって詳しいことは知らねぇよ。ただ、『僕たち』宇宙人はこの石にあたると途端に力が入らなくなるんだよ」


「――!? 何だそれ、そんな石なんて聞いてねぇぞ!?」


 木原が知らないのも無理はない。


 この石はあいつが――あいつが自分を殺すために持ってきたもので、僕とあいつしか知らない秘密だからだ。


 だから僕はこの石をいつも鞄に入れて持ち歩いている――万が一、僕が暴走しても大丈夫なように、いつでも死ねるように僕もこの石を持ち歩いていた。


「でも、動けねぇのはてめぇも一緒だろうが。俺にとどめなんて……」


 そこで木原は気が付く――拳銃を構え、今まさに引き金を引こうとしている村雨の姿に。


「じゃあな、お前の負けだよ。ヒーロー気取の敵役ヒーロー


 ――パァーン!!


 大きな銃声とともに僕に羽交い絞めにされていた木原が崩れ落ちた。


 銃弾は綺麗に木原のこめかみをとらえ、石によって力を失っている木原は普通の人間と同じように銃弾を受けきれず――死んだ。




 僕は石をしまってゆっくり立ち上がると、村雨に感謝の言葉を述べた。


「ありがとう、村雨。助かったよ」


 すると村雨は、


「……ちっ、外したわね」


 と、やたら険しい顔を僕の方へ向けるのだった。


 ……いつか僕は自分の彼女に撃ち殺されるかもしれない――なぜかそんなことを僕は思った。

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