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僕はヒーローなんかじゃない5

009


「子供の頃ってさ、みんな正義のヒーローに憧れるじゃん? ウルトラマンだったり仮面ライダーだったり。俺もそういう子供だったわけよ。他の子と変わらない子供だったってわけ。

 でも、唯一違ったのは――俺は大人にならなかったってこと。

 まあなれなかっただけかもしれねえけどな。けど、要するにそれが理由で俺は研究者になったわけよ」


 まるで煙草でも吸いながら話しているような昔話だが、木原はそんな話をしている間もずっと僕と戦っていた。より正確に言うなら、僕が一方的にやられ続けていた。


「それ以来ずっと人間を強化する研究を続けてきたわけ――だって正義のヒーローになりたかったからな」


 そうやって話しながら殴ってくる木原の拳はもろに僕の顔面をとらえて、僕は吹き飛ばされて壁にぶち当たった。


「――痛って」


 僕は痛みに耐えながらすぐに体勢を立て直して追撃に備えるが、木原はゆっくりと近づいてくるだけで、それ以上僕を攻撃しようとはしてこなかった。


 僕を倒すことくらいならいつでもできる、と少なくとも木原がそう思っているということは僕にも分かった。


「『超人作成計画』が凍結された時は本当に絶望したし、正直死にたくなったよ。

 だから空から突然隕石が降ってきて宇宙人がやってきたときには感動すら覚えたね。だからお前には本当に感謝してるんだよ。

 落ちてきた隕石の解析はもちろん、お前や死亡した宇宙人の細胞を解析することで俺の研究は完成した。だから、殺す前に礼くらいは言っておこうかと思ってな」


「そうかよ。僕としては迷惑この上ない話なんだけどな」


 僕はともかく、この男は『あいつ』の細胞まで利用したことになる。


「それだけは絶対許すわけにはいかないな」


 あいつを殺してしまったのは紛れもなく僕なのだから――だからこそあいつを侮辱するようなやつは僕が始末しなければいけない。


「そうかよ。まあ別にお前に許してもらおうとは思ってないんだけどな。じゃあ礼も言ったことだし――そろそろ死ね」


 木原はそのまま瞬間移動のような速さで目の前から消える。一瞬、僕は目で追うことができなかった。


「――!?」


 気づいたときには僕のすぐ背後に立っていた木原の両目から光線が発射されていて――僕はそれを避けることはできなかった。


 それは決して反応できなかったというわけではなく、僕の背後、光線をかわした先には、慌てふためきながら避難する人々と――そこに村雨の姿もあったからだ。


 僕は木原の撃ったビームをもろに受け、そのまま崩れ落ちて――そして床に這いつくばった。


 死ぬときは走馬燈のように記憶が流れるのかと思ったけれど、そんな時間すらなかった。

 

 やっぱり僕の嫌な予感は――よく当たるのだ。

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