盲目の憧れ4
012
前節であれだけ大見得を切っておきながら誠に情けない話ではあるのだけれど、結論から言うと、僕たちは文月ちゃんのフライトの時間に間に合わなかった。
理由は単純で、電車の遅延である。
僕たちの住む街から空港まで行くためには電車を乗り継いで一時間半ほどかかる。その電車が人身事故で遅延してしまったため、僕たちは文月ちゃんのフライトの時間にタッチの差で間に合うことができなかったのだ。
(僕は文字通り飛んででもたどり着きたかったのだけれど、それは村雨に全力で阻止された)
文月ちゃんからは『気にしないでください。むしろわざわざご足労いただいて申し訳ありませんでした』という内容のLINEが村雨のスマートフォンに届いていた。
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………申し訳なさすぎる!!
というか今の僕たちってとてつもなく恰好悪いじゃん!?
何だよ『ヒーローの役目と相場は決まっているだろ?』なんて恰好つけておきながら電車の遅延で間に合いませんでしたとか、あまりにあんまりだろ!!
空港から見える滑走路にはおそらく文月ちゃんが乗っていると思われる飛行機が今まさに離陸しようとしていた。
「まあまあ久間倉君、そう気を落とさないで。もう行ってしまったものは仕方がないのだからあとはデートを楽しみましょうよ。そうだ、確かこの空港でしか売っていないぬいぐるみがあるはずなの。折角だから一緒に空港デートと洒落こみましょうよ」
「お、おう……まあ、そうだな」
村雨の気持ちの切り替えの早さは正直どうかとも思ったけれど、でも彼女なりに僕を励まそうとしてくれているのはどうやら事実らしいので、僕は彼女の案に乗っかって空港内で初デートと洒落こむことにした。
文月ちゃんの乗っている飛行機はもうすでに空高く飛び立っていて――
――その飛行機に向かって二つの光線のようなものが光ったかと思うと、次の瞬間には両方のエンジン部分から爆発が起こった。
「――!?」
エンジンを失った飛行機はバランスを崩して空港まで真っ逆さまに落ちてくる。
空港にいた人たちは皆パニックになって悲鳴を上げながら逃げ惑っていた。
「行って来る」
「気を付けてね」
「村雨もな」
僕は村雨とそんな短い会話を交わした後、逃げ惑う人の波に逆行して進んだ。
手荷物受取場の物陰に一瞬身をかがめた後、周りの目がこちらに向いていないことを確認して、そのまま超人化した僕は急いで天井を突き破って落下する飛行機まで一直線に飛んだ。
若干短めのアップになってしまったので3日以内に続きをアップします。