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短編

マッチ売りの少女を救え

作者: oga

 とある図書館に、3人のなろう作家が集まっていた。

毎年、無理難題を押しつけてくる運営だが、今回は「マッチ売りの少女」をハッピーエンドに導け、というお題だ。


「ここはシンプルに、マッチを買ってくれる人を出せばいいんじゃねーかな、と思って、登場人物をみんな親切な人にしてみた。 だけど、売り上げがたったの20セントで、何も買えずに死んじまった」


 作家歴1年のハルが、そう答えた。


「ハルの話を聞いて、僕も考えてみたよ」


 次に話を始めたのは、ナツオだ。

ナツオは、「パンを配る紳士」を登場させた。

しかし、これもうまく行かなかった。


「知らない人から食べ物は受け取れない、だってさ」


「なら、知ってる人の食べ物なら、受け取るんじゃない?」


 3人目の作家、アキがそう答えた。

ちなみに、作家歴は一番長い。


「試しに、やってみっか」







「……ダメね」


 アキは、少女の母親を登場させることにした。

しかし、結果は惨敗。


「なんで、うまくいかねーんだ?」


「彼女、疑り深くて、本当の母親なら私の名前を言ってみてって言うのよ」


「マッチ売りの少女に名前なんてあったっけ?」


「ネットで調べたんだけど、出てこなかったわ。 そもそも、名前なんて無いみたい」


 3人は日が暮れるまで話し合い、ようやく、結論に達した。


「このストーリーなら、うまく行くわ!」






 ストーリーは、マッチ売りの少女が生まれた時から始まる。

とある病室で、女の子が生まれた。


「見て下さい、元気な女の子ですよ!」


 ナースが赤ちゃんを取り上げ、母親に見せた。


「初めまして。 あなたの名前は、メグミよ」

 

「おぎゃあ、おぎゃあ」







 しかし、幸せな生活とはほど遠く、父親は働くのをやめ、母親は愛想を尽かして出て行ってしまった。

 メグミが成長すると、父親はマッチを押しつけ、それを全て売ってくるよう命じる。


「マッチを売りきったら、帰ってこい!」


 街に出向き、マッチを売るメグミ。


「マッチはいりませんか?」


 しかし、通りすがりの人は、少女に見向きもしない。


(はあ、寒くなってきたわ……)


 マッチを取り出し、火を付けようとした直前で、見知らぬ女性に声をかけられた。


「今まで、辛い思いをさせてごめんなさい。 メグミ、一緒に帰りましょう」


「……本当に、お母さんなの?」


「あなたの名前を知っているのが、何よりの証拠よ」


 こうして、マッチ売り少女は母親と再会し、再婚相手の元へと帰っていった。

手を引かれる中で、少女は父親のことを考えていた。


(お父さんが一人になってしまう……)


 この後、少女は幸せ? に暮らしましたとさ。

めでたしめでたし。






「何か、スッキリしねーな」


 ハルが呟く。


「父親はろくでもないやつなんだし、自業自得だろ」


 ナツオが欠伸をする。

アキが椅子から立ち上がって、答えた。


「そろそろ帰んなきゃ。 私たちには、普通の家があるんだから」


「だな」


 二人が同時に返事をした。






終わり




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― 新着の感想 ―
[良い点] 読んでいる途中に何度も 予想していない「えぇー!?」が沢山あり とても面白かったです。 [気になる点] 続き? その後? の事でしょうか♪ [一言] なんだか、もう一度「マッチ売りの少女…
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