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昔、書いてた奴のまとめ  作者: 無職童貞
こそばゆい学園恋愛もの感(だいたい、あってる)
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001-1

昔、書いていた奴、その1になります。テーマはバカエロと勘違い。




 睡蓮学園。由緒あるお嬢様学校である。下は初等部から、上は大学院まで。生徒数は万を超え、敷地面積は東京ドーム幾つ分という数え方。敷地内には寮を初め、生活必需品を売るコンビニからスーパーまで揃う。都市とも呼べる規模であるが、アクセスは非常に不便。


 最寄のバス停は歩いて数時間。車で訪れるには峠を幾つか越え、山をのぼる必要性がある。日本という土地にありながら、携帯の電波が届くのは学園の入り口だけであり、校内では専用の連絡ツールが配られている。


 一見、監獄や隔離施設のようにすら思えるが、実際は異なる。純粋培養されている花の園、由緒正しきお嬢様学校。それが睡蓮学園なのである。


 そんな睡蓮学園が共学になったのは今年から。初等部、中等部、高等部に男子が入ることになった。その人数は全員で三十三人。最も多いのが初等部であり、二十五人。男子全体の八割程を占めている。高等部と中等部は六人と二人。


 無論、元お嬢様学校だけあって審査は非常に厳しかった。ハーレムを目指して入学を試みようとする下賎の輩は入試の時点で出禁を喰らうことなる。


 右を向いても、左を向いてもお嬢様。しかしながら、お嬢様という名詞が必ずしも心優しいという意味にはならない。


 高校からの編入組、お嬢様に憧れて入学した特待生の一人である少女は目の前に落ちてきた「変態」を見て、さらにはそれを女の子走りで追いかけながらも「殺す」「絶対に殺してさしあげますわっ!」「待ちなさいっ」とテニスラケットや薙刀、弓を構えた女性達を見て、お嬢様という言葉を考え直す必要性があると認識した。


 しかしながら、お嬢様学校の敷地内。その中でも高等部のグラウンドに何故、変態がいるのか。少女は頭を悩ませる。


 まごう事なき変態である。


 半裸に黒マント。顔にはバイクのフルフェイスメット。パンツは黒のVパンツであり、もっこりと男の象徴が上向きに主張している。


「あ、あややや」


 少女はガクガクと震えて、その変態を凝視していた。そして、視線に気づいたのか追いかけられていた変態は方向転換。熱い(想像)視線を送ってくる少女に向けて逞しい両足を向けて――全力ダッシュ。


 そして、眼前に近づき、少女に向かってこう言ったのだ。


「これは、美しいお嬢さん。お初、お目にかかる」


 気障ったらしい仕草。気品溢れた一礼に、少女は一瞬、目の前の変態が変態ではないのではないか? と思ったが。よく見れば半裸だった。変態である。


「私の名前は……いえ、名を名乗るなど、無粋の極み。お嬢さん、私のことは、こうお呼びください」


 美しい声である。まるで恋人に囁くように、甘い毒を流し込む。ヘルメット越しでも伝わる美声に一瞬、腰くだけになりそうになりながらも、少女は必死に両足を踏ん張った。腰砕けになりそうなのは多分、恐怖からだろう。美声であっても、変態に声をかけられたのならば並みの女子供では太刀打ちできまい。


「私は――『エロのカリスマ』」


「は?」


 少女は素で聞き返した。お嬢様学園に入学するに至って、必死に練習したお嬢様の仕草や挨拶を全て脳裏からはじき出された。


「『エロのカリスマ』です、お嬢さん。この学園に肉欲と快感と刺激を与え、退屈な学園生活を破壊する改革者です、どうぞ、お見知りおきを」


 そして、優雅に。マントをひらりと翻し。風のように走り去った。少女の目には今も、尚、男のボクサーパンツから浮かび上がるもっこりの幻視が瞼の裏に焼きついていた。


 この日、睡蓮学園に新たな勢力が生まれた。


 学園の安寧を守る生徒会役員、及びその下部グループ。厳選されたお嬢様から創設されたサロングループ。運動部の生徒の集まる組織。


 全てが全て、仲良しこよしというわけではない。


生徒会役員は運動部や文化部とは予算の都合上、度々に衝突することもある。能力重視で組織されている為に特待生。所謂、外部生の割合が非常に多い。


 サロングループは能力よりも家柄重視である。血統主義の少女達は自分達が生徒会役員に劣っているとは微塵も思っておらず、度々に校内で権力を振りかざすこともある。無論、幾つかは黙認されているが、度が過ぎて生徒会と衝突することもある。また、文化部を裏から操っているとも言われている。


 運動部もまた、第三の勢力として存在する。サロングループに噛み付く力は無いが、それでも一定数の人数はいるので、勢力図として生徒会と対立することはままとある。だからといってサロングループの言いなりというわけでもない。よほどのことがあれば、サロングループと対立することすらあるのだ。


 そして、今日、この日。


 四月の十七日。入学して三週間目の月曜日。新たな勢力が生まれた。しかしながら、この時、誰もまだ『その存在』を勢力の一角として認めてはいなかった。ただの気狂い、春に湧いた阿呆。その程度の認識だっただろう。


 しかしながら、睡蓮学園の歴史にその勢力が生まれ、引き継がれていくことになる。そして、生まれたのは確かにこの日、四月の十七日だったのだ。後の睡蓮学園生は四月の十七日を忘れることはない。


 睡蓮学園にとって、もっともおぞましき組織。下賎で、下品で、救いようがなく存在するだけでも汚らわしいとお嬢様に言わしめる組織が生まれたのは、四月の十七日に他ならないのだ。


 四月十七日。


 睡蓮学園にとって『ホワイト・バースデイ』と呼ばれる日に少女『自由ヶ丘 アヒル』は『エロのカリスマ』と出会った。




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