月見草
今日もヤツはこの時間に帰って来た。
きっと、彼女を送って来たのだろう。
「あれ、まだ起きてたの(笑)」
「お前が帰ってこなかった時おばさんになんて言い訳するか考えてたの!」
隣の家に住んで、知り合って、仲良くなって、もう17年経つ。
好きなもの、嫌いなもの、得意なこと、お互いのことはなんでも知っていたし
隣にいることが当たり前だった。
高校生になってからは
少しずつ自分の時間も持つようになって。
それでもこの関係は変わらないと思っていたし、このままずっと続けばいいと思っていた。
だけど、
元々運動が得意なヤツは急遽、運動部に駆り出されて大活躍をしてからは一躍有名になって
少しずつ歩く歩幅も変わってきてしまった。
そんな中でヤツにも彼女が出来た。
儚げで柔らかくて、透明感のある子を選んだ。
『お前は俺の1番の親友だから』
そう言って片想いの話も聞いていた。
正直、耳を塞ぎたくなる時もあった。
だけど両想いだとわかって、付き合ったというときは
やっぱり自分の事のように嬉しくて幸せで、だけど、どこか寂しかった。
あぁ、やっぱり、僕は男なんだと実感する。
君が好きなのは彼女であって、僕は君の1番の友達だから。
なんでも知ってる僕たちの、唯一、君が知らない僕のこと
『僕は君のことが好きなんだ』