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前語り『世界の片隅で』
そこには何もなかった。いや、何もというと嘘になる。だが、現代社会を感じさせるものは一つもない。そこは何も常識の及ばない未開の地だとか、我々の知らない秘境だとかではない。世界的に見れば先進国、その中でもトップクラスの経済大国だ。そしてそこには一人の少女がいた。そこを監獄だと思った人もいるかもしれない。だがそんなことはないし、この少女は監獄に入らなければならないことなど一つもしていない。ただ、この少女がどういう存在なのかを知り、それが自国に、世界にどれだけの影響を与えるのかを少しでも考えられるのなら、余程の変わり者、いや超弩級の奇人変人常識知らずの天才にして一周回ってむしろ馬鹿、そして空前絶後の超人このくらいでなくては少女を知ろうとも関わろうとも殺そうともしないであろう。しかし、これはそんな少女とそんな超人が何の指図か出会ってしまったそんな話である。