第1部「狩りの開拓」 第9話 帝守護兵団の歓迎
「では、新たな兄弟であるラグナの入団を、この俺、「帝守護兵団」ギルドリーダー ウコンが、ここに宣言するっっ。それではっ、乾杯!!」
「乾杯っっっ!!」
「乾杯でござるっ!」
「乾杯」
ここはギルド「帝守護兵団」のたまり場兼定宿「白楼閣」だ。その宴会場で現在は俺の歓迎会をしてくれる運びになった。男女が入り混じり酒アイテムを浴びるように飲んだり並べられた料理を奪い合っている。なかなかにカオスだ。
「おい、それ俺のやぞ」
「早い者勝ちだ」
「そういやいつもの飲み会かと思ったら新入りの歓迎会だったのな」
「お前知らないのかよ。なんでも牛ボス(タウロスロイヤルガードのこと)をスキル一発で倒したらしいぜ」
「あれ、俺はワンパンで倒したって聞いたぜ」
!? なんか話がデカくなってるぞ。なぜだ。
「そうだ頭ぁ。いつものアレ、やらねぇんですかい?」
メンバーの中からそんな声が上がる。すると酒で赤くなったウコンが答える。
「おお、そうだ。ヤローども、いつものアレやるぞ」
「おおおおおっっ!!」
ウコンの一言で周りの奴らが立ち上がり雄たけびを上げる。
「何が始まるんだ?」
「ウチの流儀でな。新人の歓迎方法だ。酒はイケるクチか?」
「は?」
すると20人ほどのギルドメンバーが俺の周りに集まってきた。
「全員、整列っっ!!」
ウコンの号令とともにギルドメンバーが俺の前に一列に並んでいた。全員が手に酒瓶を持っている。ウコンが朱塗りの盃を一つ渡してくる。
「新人はギルドメンバーから酒を一杯ずつ注いでもらって飲み干していき最後にギルド幹部からの盃を受けるんだ。覚悟しとけよ」
ウコンが離れ一人ずつ名前を読んでいく。
「ノブナガ!」
「はいでござる」
ノブナガが手に持つ酒瓶の中身を俺の盃に注いできた。俺はすぐにその酒を飲み干す。幸い田舎の祖父の晩酌に付き合っていたおかげで酒は飲める。
「よしっ、良い飲みっぷりだ。サクヤ」
「はぁい」
その次も大勢のギルドメンバーが俺の盃を酒で満たしていく。
「カタナ」
「おう、よろしくな」
「神虎」
「はい」
「アイザック」
「ま、たのむわ」
「クマッタ」
「うん、よろしくねー」
「バルバラ」
「ふふっ、よろしく坊や」
「バイス」
「ふふふ、今生でも巡り合ったな我が友よ。さぁ、共に世界を・・・・」
「ああわかったわかった。エム」
「はい」
「エヌ」
「よろしく」
「www」
「かわった名前だがよろしく」
「クロイヌ」
「よろしくぜよ」
「フリート」
「よろしくであります」
「ムサシ」
「期待してるぜ」
「ヤマト」
「兄のムサシ共々よろしくお願いしますわ」
「タモン」
「よろしくな少年」
「サモン」
「料理なら任せとけ」
「マロン」
「服を作るなら任せて頂戴ね」
幹部以外全員の酒を受け取った。そして、
「サコン」
「・・・・・妹を助けてくれて感謝する。これからも・・・頼む」
「ああ」
「そして、俺ウコンだ。今日この時から、お前は俺たちの家族だ。その名に恥じぬよう振る舞え。ま、テキトーにやってくれや」
「ああ、わかった。誓おう」
ウコンの注いできた酒を盃に受ける。その酒を一気に飲み干した。それと同時に周りから歓声が上がる。
「いいギルドだな」
「そうだろう。俺の家族で、お前の家族でもある」
「拙者も師匠と義兄弟の契りを交わせてよかったでごじゃりゅよー」
「・・・・・ノブナガ。・・・飲みすぎだ」
周りのメンバーも歌を歌ったり寝たりするやつが出てきた。
「そろそろお開きに・・・・」
「お頭ぁっ!」
宴会場に若い男が慌てて入ってきた。
「あいつはお前と同じく新人のゲンヤだ。おい、どうした」
「ヤベェぜ。緊急クエストだ。期間は明日からだ!」
「なに? 3日前にあったばっかじゃねえか。種別は」
「討伐クエスト。標的は「グランドラゴン」 MVP報酬は・・・・7大ダンジョンへの地図っす」
「な、なんだと」
緊急クエストとは基本的に大人数で動くクエストだ。ゲームが始まって4カ月目に第1回の緊急クエストが発行された。それはスローター系クエストで大量発生した「ゴブリンラット」を可能な限り1日で多くの数を狩るというものだった。俺は当時別のクエストを受けていたため参加しなかった。
「期間は5日間。超巨大モンスター「グランドラゴン」を討伐せよとのことです」
「ちっ、早えな。全員もう今日は寝ろ。明日は戦だ。ラグナ。テメーも働けよ」