第1部「狩りの開拓」 第8話 タウロスロイヤルガード、そしてギルド加入へ
だいたい身長2メートル50センチほどの個体が多いタウロス族。基本的に鎧らしい鎧は身に着けない。精々が腰鎧や脚絆、手甲ぐらいだ。なぜなら、その屈強な体を覆う鍛え上げられた筋肉こそが彼らを守る鎧なのだ。しかし頭だけは鍛えられないらしく特に眉間に弱点が設定されている。そこを狙うのがタウロス族戦でのセオリーだ。
だが、フィールドボスであるタウロスロイヤルガードにはそのセオリーが通用しない。ただでさえ硬い体は鎧に覆われ唯一の弱点である頭部もヘルムによって守られている。手にはその体のほとんどを覆い隠す大楯と重厚な片手剣を持っている。
「ヤバいな。おいノブナガ、こいつの討伐推奨人数って何人かわかるか?」
「最低2パーティ8人でござるな。そして拙者らは2人。かなうものではないがボス戦は死に戻り以外に逃げる手段がないでござるからな」
そう、ボス戦は一度遭遇すると死に戻りするか勝利するかしか離脱する方法がない。ならば、
「俺の装備もお前の装備もドロップするとヤバいもんばかりだ。なら、勝つしかないだろう」
「それはそうであるが・・・」
「大丈夫だ。俺がどうにかしてやるよ」
そして俺はとっておきの装備を身に着ける。称して「反逆者の手甲」と「反逆者の脚甲」、「反逆者の装束」
反逆者の手甲 ユニークアイテム 武器兼防具
武器と防具を兼用する珍しき武具。着用者の筋力を上げる。
STR+10 スキル「防具損傷」
反逆者の脚甲 ユニークアイテム 武器兼防具
武器と防具を兼用する珍しき武具。着用者の素早さを引き上げる
AGI+10 スキル「影の道を歩むもの」
反逆者の装束 ユニークアイテム 防具
遥か遠方の帝国にて圧政を覆した反逆者の身に着けた装束。願わくば身に着けし者に強大な力を
全ステータス+5 スキル「反逆者」 「ボスキラー」
「さてと、ここからは、俺の戦争だ。ってね」
「ストブラでござるな。さすが師匠、かっこいいでござる。では、拙者も。「ドウタヌキ」抜刀でござる」
ドウタヌキ レア度6 武器
かつて敵将の頭を兜ごとたたき割ったと謳われる東方より伝わった武器。敵を真っ向から斬り倒す
STR+10 スキル「防具損傷」
ノブナガも武器を構える。戦闘態勢は整った。俺も構えをとる。それに呼応するようにタウロスロイヤルガードも咆哮を上げる。タウロスロイヤルガードが疾走する。
「ノブナガ、散開だ!」
「了解でござる!」
二人で疾走してくるタウロスロイヤルガードの脇に回り、同時に攻撃を叩き込む。
「瓦割りぃっ」
「迅雷っ」
二つの武器による攻撃スキルが入る。ジャストアタック認定が出て体力が1割ほど削られた。更にスキル「防具損傷」によって防具の脇に穴が開く。
ここで攻撃スキルを説明しておこう。攻撃スキルは武器を使っていくうちに上昇する武器熟練度によって習得されていく必殺技のようなものだ。だが使うたびにスタミナを消費するのと再使用するのに時間がかかるのが欠点だ。俺の瓦割りは消費するスタミナも再使用する時間も比較的少ないので重宝している。
こちらを向きながら攻撃を加えようとしてくるタウロスロイヤルガードの攻撃をよけながら喋るがきついな。
「ノブナガ、お前の使えるスキルはいくつくらいだ?」
「ざっと5というところでござるか。師匠は?」
「8だな。たぶんアイツを倒せるスキルも持ってる。だが・・・」
「何でござるか?」
「どれも隙が大きい。一番威力のデカいやつはスキルが立ち上がるのに20秒近くかかる。そいつをぶち込む隙が欲しい。いけるか?」
「ふっふっふ、拙者の使えるスキルに相手を麻痺状態にするスキルがあるでござる。任せるでござるよ」
「任せた!」
「いくでござる! 麻痺手裏剣!」
ノブナガが腰のポーチから棒手裏剣を取り出しさっき空いた脇の露出部分に投げつける。狙いたがわず棒手裏剣が刺さるとタウロスロイヤルガードが動きを止める。頭上に稲妻のようなマークが表示されている。これが麻痺をしている証だ。
「これで30秒は持つはずである。やっちゃってください師匠!」
「言われなくとも!」
麻痺によってがら空きになった胴体にスキルを叩き込んでゆく。
瓦割り
鎧砕き
飛竜脚、鎧にひびが入る
竜墜脚
鉄鋼拳
虎牙破掌、鎧が砕けた
それらをまるで星座を描くように打ち込んでゆく。
そして、
スキルの描く星座の最期のピースを埋める一打を、
「うおあぁぁぁっっ!!」
叩き込んだ。その一撃によってできた後は、まさしく北斗七星を描いていた。
その瞬間、タウロスロイヤルガードに打ち込まれた北斗七星の図形が輝き爆発する。その瞬間タウロスロイヤルガードの残っていた体力が減っていき、0になった。
タウロスロイヤルガードは爆散しドロップアイテム「牛近衛兵の鎧」だけが残った。
牛近衛兵の鎧 ユニークアイテム 防具
タウロス族の近衛兵が身に着ける由緒ある全身鎧。身に着けると素早さが下がるが耐久力が大幅に上がる
VIT+20 AGI-10
ラグナが使ったスキルは「グランシャリオ」 自らの持つ攻撃スキルを北斗七星を描くように連続で敵にあて7打目に成功すると相手の防御力無視の一撃を与える。今回は途中で麻痺中のダメージボーナスと鎧破壊によるダメージが入り7打目で終わることができていた。
「終わった・・・か?」
「すっ、すごいでござるよ師匠っ。何でござるか、いまのはっ?」
「面倒だから教えん」
「そ、そんな~」
「お~~い、ノブナガ―。大丈夫か~」
平原の向こう、街の方角から二つの人影が見える
「あ、兄上殿達でござるな」
こちらに来た二人はワービーストだった。
一人は背が高く腰に刀を吊るしているウルフカットにした髪と顎や頬を覆う髭に反して優しそうな目が印象的だ。
もう一人も背が高くがっしりとした体格のの三白眼、短くカットされた髪と顔の下半分を隠す狼の顎を模した仮面が野性味を感じさせる。背中に背負われた巨大な両手槍が威圧感を与える。もう一人に似た目元をしているから兄弟なのだろうか。
「おっ、兄ちゃんか。妹を助けてくれたのは。俺はウコンってんだ。よろしくな」
「・・・・・・サコンだ。俺も・・・感謝している」
「ああ、ラグナだ。あんたらは?」
「ノブナガの兄貴二人さ。もちろんリアルでもな」
「・・・・兄貴。・・・あまりリアルの情報は・・・・」
「こんな世界じゃリアルもクソもねーよ。ま、そこの妹はな、自分が俺たちの足手まといになってると思い込んだらしく勝手にギルドハウスを飛び出したんだ。困った妹だろう?」
「ああ、まったくだ。人を勝手に師匠にしたりするしな。っていうかノブナガ。お前ギルド所属だったのか?」
「ええっと、実は・・・」
「ったく、お前はいつも説明ちゃんとしろっつってんだろ。そういうわけでな・・」
ウコンがメニューを呼び出し俺にメールを送って来る。受け取ったメールの内容は、
「ギルド「帝守護兵団」?」
「おうよ。俺たちの他20人程度の人数を抱えるギルドだ。どうだ兄ちゃん。俺たちと一緒に来ねえか。あんたみたいなやつと一緒なら楽しいしな」
「あんた、このゲームが楽しいのか?」
「なんだ。兄ちゃんは楽しくねえのか。こんな最高のゲームなんだ。楽しんで最後はクリアだ。これ以上のことはねえだろう」
「いや、楽しいさ。今までそんな風に言ってくれるやつがいなかったからな。いいぜ、あんたのギルドに入るよ」
そうしてメールの返信画面を開きギルド加入のボタンを押す。すると俺のステータス画面に「帝守護兵団」のギルドフラッグマーク「狼と月」のマークが表示される。
「おうし、じゃあ今日から兄ちゃんは俺たちの義兄弟だ。よろしく頼むぜ」
「ああ、よろしく頼む」
「師匠、よろしくでござる」
「・・・・・よろしくな・・・」
このゲームが始まって1年、俺に初めての仲間ができた日だった
ウコンのイメージは「うたわれしもの 偽りの仮面」のウコンから。サコンは同じく「うたわれしもの 偽りの仮面」のミカヅチです。
これからもこの作品を応援ください