第1部「狩りの開拓」 第6話 サムライガンナー ノブナガ
「ラグナ師匠、次はどうするでござるか?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「あの~、師匠?」
「・・・・・・・」
「あ、なるほど! 瞑想の訓練でござるな。拙者もするでござるよ」
そういってその場で胡坐をかき目をつむる女。頭が痛くなってきた。この女はいったいなぜ俺についてくるのだろう。こんなことならあの時助けないほうが良かったか?まったくもってカオスだ。
※※※※
ガルグイユと「始まりの街」で別れてから一年ほど経っただろうか。俺はソロで草原フィールドを回りながら順調にレベルアップを繰り返していた。ガルグイユとは偶に連絡を取るが最前線攻略組=フロントランナーはまだダンジョンを見つけられていないらしい。俺のほうはソロなのをいいことに装備強化の素材にこだわり「武装制作」スキルや最近贔屓にしている鍛冶屋で作った武具に変わっている。
狩人の衣(黒) レア度4 革防具
プレデターが一人前の狩人の証として身に着けることのできる革鎧。
VIT+3 AGI+5
この防具はハイディングにボーナスあり。
黄鳥のネックレス レア度6 アクセサリー
黄鳥の羽を集めネックレスにした逸品。貴重な冠羽をアクセントに使ったため幸運が訪れるとされている。
LUK+6
狩人のガントレット改
最初期から使われていたガントレットを改良したもの。その能力は使用された素材により桁違いな力を発揮する。初期と違い両手に装着可能
STR+6 VIT+3
こんなところだ。他にもいくらか装備しているが今日のところはこんなもんでいいだろう。おっと、待ってる内に敵のポップが始まっ・・・・なんだありゃ?
「ああああーーーーーーー。誰か助けてでござる――――!!」
革鎧と金属鎧を半々で着こんだ女性プレイヤーだ。髪を髷のようなポニーテールにし背中にはレア武器である「ボウガン」、腰にはこれまたレア武器の「カタナ」シリーズの脇差を装備している。
そして、
その後ろには、
20匹を優に超えるモンスターをトレインしていた。
「ああああーーーーーーー。そこなお方、助けてほしいでござるよーーーーーーー!!」
確かにあの集団に巻き込まれたら一瞬で死ねるな。このゲームでは死んでも直前に立ち寄った拠点に戻るだけだが、装備または所持していたアイテムがランダムでロストしてしまうのだ。彼女の装備はレアなものが多いから大変だろう。
「仕方ない、食い散らかす・・・・・」
そのまま向かってくる女性プレイヤーを追い越して集団に突っ込む。相対するのは2メートルほどの体高を持つ雄牛、キングブルと少し小さい1・8メートルほどの体高の雌牛、クイーンカウだ。ここでつい昨日手に入れた挑発スキル「ウォークライ」を発動させる。
「ウオァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!」
その瞬間全てのキングブルとクイーンカウが俺に向かってくる。だが、それはどこか怯えたような動きだ。
「ウォークライ」
レベル10以上で習得可能。声の届く範囲の敵のターゲットすべてを自分に向ける。※同時に相手に状態以上「混乱」をもたらす。
どの個体も頭の上でヒバードが飛び回る謎のエフェクトが出現する。カオスだ。だが混乱状態で仲間同士で頭をぶつけあってダメージを受けている。これはチャンスだ。
「さぁ、狩りを始めようか」
俺は一気に牛集団の中へと駆け出して行った。両手のガントレットに武装を展開する。それはガントレットの甲部分を覆うように展開される鉤爪状の刃だ。名付けてガントレットブレード。
ガントレットブレード レア度6 特殊武器
ガントレットに装着しなければ使用不可能。だが使用する素材により能力が変わる
集団の中に突っ込みガントレットブレードを一振りする。頭をぶつけあっていたキングブル2頭の首にクリティカルヒットが発生。攻撃が当たった瞬間に混乱が解けるが2頭の牛はヒットポイントを削られアイテムをドロップする。拾うのは全部片付けた後だ。
※※※
30分後
全ての牛を殺しつくした俺はドロップアイテムを回収する。キングブルからは肉系アイテムと角、クイーンカウからはなぜか乳製品と角がとれた。
「あ、あの~」
「ん?」
後ろを振り返るとさっきの女性プレイヤーが立っていた。どうやら無事だったらしい。
「あ、ありがとうでござる。拙者はノブナガと申すでござる。此度はどうもかたじけなかったでござる。リポップしたところがちょうど群れのど真ん中だったもので・・・。もう少しで死ぬところでござった。本当にありがとうでござる」
「そっか、まぁ気ぃつけろよ。じゃあな」
「ちょっ、ちょっと待つでござるよ!」
もう行きたいんだが結構しつこいヤツだ。
「拙者を弟子にしてくだされぃ!!」
「・・・・・・・・・・はい?」
「おお、ありがとうございます! 早速「師匠」と呼ばせていただくでござる!」
それは俺にとって初めての弟子?が出来た瞬間であった。
なかなか戦闘描写は難しいですね。次回にこうご期待