第1部「狩りの開拓」 第5話 ログアウト不可になっちゃった♪
「おっ、おいっ!だれかログアウトできるヤツいないのか!?」
「まだ誰もログアウトはできてねぇ。どうなってやがる、くそっ」
「俺この後デートだったのにぃ!!」
「そいつは嘘だな」
あの後「始まりの街」に戻ってみたらこんな感じだ。まったくもってカオスだ。こんなアメリカ禁酒法時代のような喧騒は苦手だ。
「おいラグナ、中央広場の集会所になんでログアウトできないか運営からお知らせ看板が立ったらしいから見に行ってみようぜ」
「あんなカオスな連中がいるところにか?断りたいところだが・・・・そうもいかんよな」
そのまま街の中央にある広場で青空教室のごとくカウンターやクエストの張られたボードが置いてある。そこが集会所だ。雨の日は休むなんとも謎な営業形態をしている。
「あ、あったぜ。ええと何々・・・」
「やめとけよ。現国の授業でお前が朗読すると漢字読めないから必ず俺がかわる役になってんだ。ゲームでもそんなことするのはごめんだな」
「うぐぐ・・・」
「さってと」
隅のお知らせ看板にはこんなことが書かれていた。
「拝啓エブリバデ
俺様はこのゲームの開発主任の木場・善吉だ。この知らせが届くころにはテメーらは誰一人このゲームからは出らんなくなってることだろう。な・ぜ・な・ら、
おれがそう作ったからでーす!!
ああ、でも別にデスゲームとかじゃねーよ。ひと昔前の三文小説じゃあるまいしよ。ただログアウトする条件は一つ、それはこの第一回アップデートで実装された七つのダンジョンすべてをクリアすることだ。精々がんばれよ、ひゃっはっはっは
敬具ッバイ」
何ともカオスなお知らせだ。しかもセンスが微妙すぎて笑えてきた。隣のガルグイユはそれを聞いてただ無言で立っていた。しかしすぐにこれからどうするかの話になった。
「なぁ、ラグナはどうするんだよ。俺はベータテスト時代の仲間と一緒に行く予定だったけど」
「俺の性格はよく知ってるだろ。こんなカオスな世界なんだ。好き勝手にやらせてもらう。デスゲームじゃないってことは復活はするんだし、しばらくはソロで狩りしたりしてるさ」
ガルグイユは一瞬沈んだような(なにぶん表情が読めない)仕草を見せたがすぐにいつもの調子に戻り、
「じゃあここでいったんお別れだな。仲間が来たし。とりあえず困ったこととか聞きたいことがあったらいつでもフレンドメッセージ飛ばせよ?」
「ああ、わかってるよ」
そんな風にして俺たちは別々の道をたどることになった。
俺はそんな状況にワクワクしていた。
今までいた現実世界とは違いここではどんなことでもできる。
現実なんてクソゲーだ。このゲームのように自分でパラメーターを決められるわけでもない。こんなゲームの中よりよっぽどカオスな世界だった。更にこのゲームではPKをすることも可能だ。ちょっとしたペナルティもあるが相手の装備品や所持アイテムを奪える。それに対応したスキルや称号スキルと呼ばれる一定条件を満たすと取得できるスキルもある。
「最っ高の世界だな」
この日から俺とガルグイユの進む道が変わってしまった日だった。