第一部 第17話 This is war
俺の話が終わると皆で白楼閣に帰った。街に入ったらガスマスク姿の俺たちは相当目立って少し恥ずかしかった。今日もみんなで馬鹿騒ぎかと思ったら違うらしい。帰ったと同時に初日に見たゲンヤとか言うプレイヤーがウコンに耳打ちをした。そのあと広間に全員で集まるように言われ、時間通りに行くとギルメン以外に見慣れないプレイヤーが数人いた。全員が黒ずくめの装備を着こんでおり、なにより種族がワービーストで統一されていた。戦闘のリーダーらしき男は座っていても頭二つ分は飛びぬけた長身であり痩せた枯れ枝よりも太い樫の木を連想させるような体だ。黒髪を短めに刈った頭の頂点にある黒くて丸い耳が愛嬌を感じさせた。
(どっかで見たことあるような?)
「揃ったようであるなウコン殿。話を始めようである。」
「前から言ってんだろうが。そんな話は」
「そこをどうか!ウコン殿が吾輩たちのギルド「ナイト・オブ・ケモナー」に入ってくれれば百、否!千人力であるぞ!このような弱小ギルドマスターでいるよりも良い待遇を考えているであるぞ!」
(ああ、初日に見かけた変態集団のリーダーか)
その瞬間、ウコンがカタナを抜きリーダーの首に突きつけていた。俺の目にも見えないほどの速度だった。その眼には怒りの色が浮かんでいた。
「俺の家族を、侮辱するんじゃねぇ。なるほど、てめぇん所は今この街で最大大手のギルドだからな。俺らみてーな小さいギルドのギルドマスターぐらいのメンバーも何人も抱き込んでるだろうさ。だがなぁ、うちにもおめぇぐらいの奴らはゴロゴロいやがる。てめぇらに打ち崩せるか?」
そういって納刀する。だが向こうの奴らは収まらないようで腰や背に差した武器に手をかけていた。
「てめぇ、ふざけんじゃねぇぞ!」
「頭に武器向けといてタダで済むと思ってんじゃねえぞコラ!」
「辞めんか馬鹿者どもが!」
そこにリーダーの一喝が響いた。
「すまなかったな。吾輩の部下たちと吾輩の言葉を詫びよう。失言だった。許してほしい。ところで、今回の交渉は決裂ということでよろしいであるな?」
「おう、そうだな。さっさと帰れ。出してた飲み物代はこっちの奢りにしといてやるよ」
「宿のサービスで出た無料の水だろうがァ!」
「辞めろと言っているである!では、吾輩たちと戦争をするということでよろしいであるな?」
「おう、望むところだ。いつでも来やがれ」
「うむ、「ナイト・オブ・ケモナー」団長ベア・グリズリウスの名に懸けて貴殿らを叩き潰し、ウコン殿を手に入れるである」