第一話 世界初のVRMMORPG
私立衣笠高校二年A組
俺、暁・大和は2学期の始業式を終え帰宅する準備をしていた。
「おーーい、大和」
同じクラスの直江・美月が声をかけてくる。美人の癖に男のようなしゃべり方をするせいで彼氏もいない残念美少女な幼馴染だ。
「や・ら・な・い・か?」
「FUCK YOU」
すかさずアームロック。
「うがぁぁぁーーーー!!やめて、それ以上いけない!!」
「本題を話せ」
「お、お前は俺みたいな美少女にアームロックかけて楽しいのか!?」
うるさいから離すことにした。
「それで、何の用なんだ一体。これから家に帰ってモ○ハンしなきゃいけないんだけど」
「そんな貴方に朗報です。俺が夏休みの宿題と引き換えに参加した世界初のVRMMORPGゲーム『レジェンド・ハンター・オンライン』のβテスト知ってるだろ?」
俺が抽選に落ちたやつだな。VRゲームは最近主流になってきたジャンルだがまだ数は少ない。特にMMOはこれが初めてだ。夏休み中の宿題全部だとすると随分な等価交換だな。
「さっきお前が担任のサーシェス先生に呼び出しくらってたのはそのせいか・・・」
担任のサーシェス先生は日本生まれのアメリカ人で怒ると滅茶苦茶怖い。ちなみに先生のお世話になる率が一番高いのはダントツで美月だ。
「その事は話さなくていい。ともかく、そのゲームの正式版が発売されることになってβテスターには特典版が2つ送られるんだが・・・お前に一つ分けてやってもいい」
「何を企んでる?」
「宿題写させてください」
こんなこったろうと思った。恐らくサーシェス先生に一週間以内に宿題の提出を求められたのだろう。昔から長期休暇の宿題が提出できず泣きつかれたのは片手の数では足りない。
「特典の内容は?」
「『レジェンド・ハンター・オンライン』では四つの種族を選んでゲームをプレイする。人間、エルフ、ドワーフ、ワービースト。特典ではその四つに加えて選択できる種族がランダムでもう一種追加される。その種族の種類はわからない。他には初心者用装備やアイテムパックとかだね」
「わかった。だけど、もうこんな温情は無いと思えよ」
「やったーーー。愛してるぜベイベー」
「またアームロックくらいたいか?」
「冗談ですごめんなさい勘弁して下さい」
その日は先生に事情を話して宿題を美月に渡し家に帰った。
三日後
九月になったとはいえまだまだ暑い。今日の俺は兄貴のグアム土産のアロハシャツに半ズボンだ。今は美月から連絡があり美月の家に向かっている。ウチの向かいだが。
「あらーいらっしゃい大和君。美月とデート?」
「こんにちはカグヤさん。昔から言ってますけど失礼ですがそれだけはありません」
この人は直江・カグヤさん。美月の母親であり俺の母親と同い年のはずだが二人とも高校生くらいにしか見えない。俺たちと同じ衣笠高校に通っていたので近所では「衣笠高校シスターズ」と呼ばれている。美月や俺と同じく相当なゲーマーらしい。
「美月は?」
「部屋にいるわよー。私はこれから買い物に出るけどあんまり激しくしちゃだめよ」
「絶対に無いのでいってらっしゃい」
とりあえず二階の美月の部屋に上がらせてもらう。ドアをノックして中に入る。そこにはホットパンツにTシャツ姿の美月がいた。
「おっ、来たな。届いたぜ『レジェンド・ハンター・オンライン』」
机の上には三日間待ちわびた世界初のVRMMORPGゲームのパッケージがおいてあった。
「持ってきたよな?」
「ああ」
俺が持っていたバッグから取り出したのはヘルメット型VRゲーム専用機器の「ミラージュ」、天才少女物理学者によって実現された現代科学の結晶だ。美月からソフトを受け取りミラージュに挿入する。
「準備は良いな?」
「ああ、もちろんだ」
「じゃあいくぜ、せーの」
同時に叫ぶ。
「リンク・オン!!」