ハッピーバースデー
一話完結です。初めての会話主体作品です。拙さはご容赦下さい。
「20歳まであと10分だな」
「いやほんと、今日はこんな下らないことの為に集まってくれてありがとうな」
「下らないって言うなよ〜。企画したの僕なんだからな〜」
「ごめんごめん。そうじゃなくてさ、こんな下らないこともそのうち出来なくなるかと思うと、貴重だなって言いたくて」
「結局下らないのかよ〜!」
「あはは、確かに下らねえじゃん」
「0時ちょうど……誕生日になった瞬間にハッピーバースデーって……発想が中二レベル……」
「でもさ、こういう下らねえことって、なんつーか、青春っぽいじゃん」
「若気の至りとも言う……」
「それを言うなら、若さ故の過ちじゃん」
「もういいよ〜。僕が全部悪いんだろ〜」
「いや悪くないよ!俺の為にやってくれてるんだから嬉しいって!」
「……そろそろ……」
「おっと危ねえ、もう5分前じゃん。それじゃ、電気消すぜ!」
「え?まだ食事もケーキも出してないけど?」
「サプライズは既に始まっている……」
「今日のことは全部秘密にしてたからね〜。何が出てくるかお楽しみだよ〜」
「そうなのか、楽しみだな」
「ほい消灯。おわ、真っ暗じゃん!」
「気をつけてよ〜?」
「あれえ?さっきここに置いといたじゃん?」
「それ……私の足……」
「おっと悪い悪い!あ、こっちじゃん」
「もうすぐだよ〜。早く〜」
「これで準備完了じゃん!」
「何があるんだ?」
「それは見てのお楽しみじゃん!」
「……カウントダウン」
「3〜」
「2!」
「1……」
「ハッピーバースデー!!!」
「……で、何があるんだ?」
「あれ〜?電気点けてよ〜」
「いや、なんか電気点かねえじゃん」
「……停電?」
「こんな急に停電になるか?ちょっとブレーカー見てくる」
「まぁいいじゃん。とりあえずロウソクに火点けるぜ!」
「わ〜、ロウソクの灯りだけってのもいいもんだね〜」
「幻想的……」
「バースデーケーキか!ありがとう!でも、なんでロウソク1本だけなの?普通、年齢分じゃない?」
「結局よく見えないね〜」
「いいじゃんいいじゃん!とにかく、ほら、プレゼント出せって!」
「じゃあ僕からね〜。はいこれ〜」
「あ!これ、ポールスミスの財布!高いんじゃないのか?」
「そ〜でもないよ〜。去年のモデルで安かったから〜。それに、ずっと欲しがってたでしょ〜?」
「……流石のセレブ」
「本当にありがとう!大事にするよ!」
「……次は……私」
「これは、ロウソク?」
「……アロマキャンドル。お前の好きな香り……調合した……。癒し効果……抜群……」
「手作り!?すごいな、ありがとう!今夜から使うよ!」
「ふっふっふ、そして真打ちの出番じゃん」
「なんだなんだ?」
「オレは金もねえし器用でもねえじゃん?だから、オレの顔の広さを活かしたぜ!どうぞ!」
「ーーー久しぶり」
「あ、君は!」
「お前が高校時代に仲良しだった娘を連れてきたぜ!感動のご対面じゃん!」
「ーーー卒業以来だね」
「あぁ、本当に久しぶり」
「ーーー会いたかったよ」
「俺もだよ!」
「ひゅ〜ひゅ〜」
「運命的……」
「気持ち伝えればいいじゃん!」
「みんな、ありがとう。俺、言うよ!」
「ーーー」
「俺、……俺は、ずっと、君のことが」
ーーージジッ、チカチカ
光が溢れた。
蛍光灯が復活して、部屋には無機質な白色が戻る。
テーブルの上には、1本だけロウソクの乗ったショートケーキ、100円均一の財布、埃をかぶった芳香剤。
そして、4台のテープレコーダー。
テープは再生を終え、全て停止している。
俺はそれら一つ一つを巻き戻していく。
「ありがとう。みんな、ありがとう」
今日は、俺の20歳の誕生日。
20回目の20歳の誕生日。
人生で一番幸せな日。
来年の20歳の誕生日も、楽しみだ。
終わり