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友葉学園シリーズ

【友葉学園】U・ω・U &^・ω・^

作者: 田中 友仁葉

俺こと、内川(うちかわ) 公人(きみと)は。


……朝目が覚めると、美少女が同じベッドで眠っていた。


「……ついにやらかしたのか……俺」


肩まで布団が掛かってるとはいえ、露出加減から察するに、多分この少女は裸である。年は見た感じ同じか少し下くらい……多分中学生。

体つきは華奢で、寝顔は完全に緩んでいる。


なにはともあれ、女子中学生が裸で同じベッドに入ってるという状況に慣れているわけもなく、俺は急いで部屋を飛び出した。


まさしくドタドタバタン! というやつである。


「はぁはぁ……お、俺、一人暮らしだったよな……?」


目をこすり、再び部屋を覗く。


「ん〜っ! あ、主人。おはよー」


黙って扉を閉める。


……なんだあれは。


いや、説明なら簡単だ。


『JCが裸でカーテンを開けて、窓の前で背伸びをしている』


……いや、ますます分からん。そもそも外から裸を見られるぞ……


……ん? 外から……裸?


「ちょ、お前! どこの誰かか分からんけど、とりあえず何かを着ろ!」


「えー? なんでー? 今日なんかの記念日だっけ?」


「何を言ってるかさっぱりだけど、とりあえずそこの棚から適当に!」


「……仕方ないわね」


なんだあの態度悪いやつ。


そもそも裸で同じベッドと言う割には脱力感がない……いや、してもあるのかしらんけど。


とりあえず幻覚なのかもしれないし、顔洗いに行くか……


*****


洗面所でとりあえず昨日のことを思い出してみる。


まず、家に帰ってゴロゴロして……飯食って風呂入って寝たな。


……おい、俺昨日何もしてないぞ!?


キッカケみたいなものあったか……?


……わからん。


とりあえず部屋に戻って、確認するかな。


*****


念のためにトントンとノックする。


「おい、入るぞ。服は着たよな」


「……大丈夫ー」


……幻覚の可能性はこれで消えた……か


ゆっくりと警戒しながら扉を開けると……


そいつは、カッターシャツを羽織ってベッドの上でゴロ寝していた。

なんちゅうニート。


「というかボタン止めろよ。あと下も履け!」


俺の目線からは辛うじて女性的恥部は見えなかったが、こいつには恥じらいというものはないのか……。


「なによもう、注文が多いわね」


「そもそもお前は何なんだ!」


「失礼ね。いつもタンポポって呼んでるじゃない!」


た、たんぽぽ?


……なぁっ!?


*****


それは一週間前ほど。


俺が下校中にシャッターの閉まったタバコ屋で見つけた段ボールが始まりだった。


『井村屋みかん』と書いている段ボールを覗くと、そこには泥々に汚れた一匹の子猫がいた。


そいつは、よくうちの前で鎮座していたコラットに似ていたので、その猫の子どもと判断したが、その猫の飼い主はどうやら引っ越してしまっていたらしい。


結果、タンポポと名付けた猫を俺が親代わりとして飼うことを決めたのだが……


「まさか、人間に見えるとは……俺もおかしくなったか」


「何言ってんの? 私は元々から人間よ」


……。


『飼い猫は自分を人間だと思い込んでいる』というやつか。


……しかし、よく見ると確かに猫耳っぽい髪型で、さらになにやら尻尾みたいなものもついている。

目元もくっきりしていて、確かに猫っぽいっちゃ猫っぽい。


「それよりお腹すいた。ツナ食べたい」


「あー、はいはい……待て、それで足りるのか?」


「ん? どうしたの? スープあるの? それとも鯖缶? もしかして金缶!? マグロ!?」


「いや、無いけど……」


「なんだ」


……食べるものは同じらしいな。


*****


タンポポを連れて一回リビングへ。


さてと……雛はどんな反応をするかな……


ガチャ


「ご主人様おはようございまーすぅ!!!」


「のわぁっ!?」


……こ、この可能性は考えてなかった。


*****


雛は、俺が一人暮らしを始めて最初に家族になったゴールデンレトリバーである。

元々は実家で飼っていた犬だったのだが、とある都合により俺が預かることになったのだ。


体躯が大きめなので、一人暮らしの学生に手が負えるか心配だったが、思ったよりもずっと賢く忠実だったためそんな心配はなかった。


問題があるとすれば……少々甘えん坊なところだろうか。


「ご主人様ぁぁぁ!撫でてください!撫でてください!」


「ちょ、ちょっと待て……雛だよな?」


「はいぃっ!」


雛はタンポポと同じスッポンポンで俺の前で犬のように伏せている。


ただ、タンポポと大きく異なる点が性格ともう一つ……。


「ややや? どうしましたかご主人様! お顔が赤いご様子で!」


タンポポと比べ完全に熟れているムッチリとした体つき、中学生というよりも高校生や大学生のような体つき。 これが子猫と成犬の違いなのだろうか。


しかし身長は俺を超えているとはいえ、見た目は俺と大して年の差があるようには見えない。いうて大人には見えないだろう。


「それにしても驚きました! 朝起きたらこんな姿になってましたから!」


「雛は自覚があるんだ……」


ともかく、四つん這いの雛から視線を外しながらタンポポ同様に服を着せることにする。等のタンポポは窮屈だったのか、ボタンを外していたが羽織っているだけ大目に見ることにする。


「でも可愛いですね〜。ご主人様小さいです」


そう言うと雛は立ち上がって俺の頭をナデナデ始めた。


愛犬に撫でられる飼い主とは。


「でもお腹空きました! ご主人様! ご飯ご飯!」


「あ、そうか……んー」


犬とはいえ人の姿をしているからなぁ……タンポポはツナだから大丈夫だとは思うけど、こいつにドッグフードやるのは……なんか気がひける。


*****


「ご主人様ぁ〜まだですかぁ?」


「ちょっとは待ちなさいよ、雛。今回は明日手が込んでるみたいだから期待できるわ」


「わたし、ポポちゃんみたいに美食家じゃないですし、たくさん食べられたらなんでも嬉しいです」


「出来たぞ」


二匹(ふたり)の前に餌皿を置く。

しっかりと洗ってるから衛生的な部分は大丈夫だろう。多分。


今回はとりあえず『ねこまんま』を2人にやることにした。


ちなみに、雛にはとりあえず良さげなTシャツ(メンズLサイズ)とゴム留のジーパンを着せた。

ただそれでもサイズがギリギリで、かなりエッチい仕上りになってしまった。まあ半裸のタンポポと比べたら充分にマシなのだが。


しかし、太ってるとは思っていたけども……散歩のコース長くすることにしよう。


「……ウマイナー、マグロウマイナー」


他に目もくれずにタンポポはガッついている。……とりあえず今度食器の持ち方でも(しつけ)えよう


「……」


「……? どうした雛、食べないのか?」


「……まだですか? 焦らしますね、ご主人様」


……あ、そうか忘れてた。


「雛、よしいいぞ」


「やったー!」


そしてタンポポとは似つかぬ速さでガッつく雛。こら飯をこぼすな。


「……それにしても」


ペット用の餌皿にご飯を入れて、床に伏せて手を使わずにがっつく女性か。


かなり背徳感を感じるものである。


「ご主人様! 食べました!」


「早っ! 俺まだ食べてないんだけど」


「散歩いきたいです!」


「……さ、散歩かぁ……」


すっかり忘れてた。


時刻は6時半。いつも雛の散歩に行く時間だが問題が二つ。


まず、タンポポを家に置いていいのか。

イタズラなどは流石にしないだろうが、ダボダボのカッターシャツを羽織っただけの少女を家に置くのは心配である。

そもそも家に誰かが来て、変な噂を立てられるのはとにかく避けたい。


そして、どうやって雛を散歩に連れて行くか。

従来のやり方だと、首輪にリードを通してそのまま公園をほっつき回る。


人の姿で流石にさせられまい。


……よし。


「タンポポ、これから雛の散歩に行くけど大人しくしてて。あと外に出たらダメだからな」


「言われなくてもそうするわよ。寒そうだし、家で寝てる方がいいわ」


なんだ。


「よし、じゃあ雛。絶対そばを離れないって約束できるか?」


「多分大丈夫です!」


不安だ。


「雛、じゃあお手」


「はい!」


保険として手を握らせることにする。


「……? あのご主人様。リードは……」


「人の姿ですると問題になるんだよ……。ともかく、離すなよ」


「はい!」


*****


なんとか誰とも会わずに公園に到着。


この時間帯は散歩に行く人はまだ早すぎるらしく、いつも人は少ない。


「……ご主人様!」


「声が大きい! ……なに?」


「催してきました!」


「……」


しまった。忘れてた。


「……と、とりあえず。我慢できるか?」


「……たぶん……無理ですぅ」


本当に限界らしく、顔を赤くしながら内腿をくねらせている。


こいつ、普段家でトイレしないからなぁ……。


「……誰もいないと思うから、そこのそこの草むらで隠れてしろ」


「……分かりました……でも」


でも?


「……きちんと処理してくださいね?」


「ちょ! お前処理ってまさかうん……」


「が、我慢できないです! 行ってきます!」


*****


都合につき割愛


*****


「すっきりしましたぁ」


「そうか、じゃあ帰るか」


「え! そ、そんな。しっかり処理してくださいよ! 見られたら恥ずかしいじゃないですか!」


「恥ずかしいなら野糞すんなよ! 大丈夫だ。管理の人も女の人のうんこだと分かれば喜んで肥料にするから」


「い、嫌です! そんなの嫌です! ご、ご主人様なら構いませんけど」


「うんことかいらん」


そう口論しながら『犬のフン罰金』の看板の横を過ぎて、家に帰ることにした。


*****


「ただいま」


「お帰りなさい」もぐもぐ


「楽しかったー!」


とりあえずこれでひと段落つける……。


……ん?


「……タンポポ何食べてんだ?」


「草よ」もぐもぐ


「……え?」


「草よ」ごくん


……今度からは普通にペットフードでいいか。


*****


学校につき、ゆったりと疲れを癒す。


「おはよう内川くん」


「小野か……」


小野 広樹。同じクラスメートの友人である。

いつも青空と一緒にいる……クラス公認カップルである。


「……ん? 今日は青空はいないのか?」


「うん、なんか遅刻っぽいんだよな」


「遅刻っぽいって……連絡つかないのか?」


「いや。華さん、携帯持ってないから」


……なかなか大変そうなカップルである。


*****


学校のチャイムが鳴り響き、席に着く。 結局青空は来なかった。


「……青空は来てないのか。まあいい、これから転校生を紹介する」


ザワザワと教室が騒ぐ。 まあ俺は男でも女でもそんなに気にしないーー


内川(うちかわ) 蒲公英(たんぽぽ)さんと内川(うちかわ) (ひな)さんだ」


え。


「内川 蒲公英です。潔癖症なので、そこんとこよろしく」


「内川 雛です!! 好きなものは散歩とご飯です!!」


開いた口がふさがらない所為で声も出ない。


すると、二人揃ってこちらを見つめると、タンポポは得意げにドヤ顔を食らわしてきて、雛はブンブンと尻尾を振ってウズウズしていた。


「すいません! 遅れました」


「なんだ青空。どうしたんだ?」


「あ、いえ……普通に寝坊です」


「そうか。今度からは気をつけろよ」


*****


「ごめんなさい内川くん!」


「い、いや、なんで青空さんが謝るんだ?」


「えっと、そのね。 実は私妖精なの」


「いきなり謝られて、頭お花畑になられても困る」


自分を妖精というとか何を言ってるんだ青空さんよ。


確かに人並みはずれて小さいし、羽生えてるし、可愛らしい姿してるし……あ 妖精だ。


「……マジで?」


「うん……。それでね、それと今回の二人と関係するんだけど……」


青空が言うには、今朝学校に来ると校門で怪しい二人がいて、距離をとっていたら突然人並みはずれた瞬発力でタンポポに捕まったらしい。


「……まあ猫だからな。というかあいつら外出るなって言ったのに」


「……まあ、油断してたわ。私が妖精じゃないと騙せるのは人間だけだから、動物には効かないの」


「なるほど。それで得体の知れないものを見たタンポポは興奮して青空さんを捕まえたんだな」


その後、話によると青空は雛とタンポポに捕まった後、解放されるために条件を課したらしい。


「……それが」


「……うん、学校の生徒にさせろって」


……なるほど。それであのドヤ顔ね。


「……でも、違和感感じないのか生徒(あいつ)らは。こんな中学部ギリギリの時期に転校生なのもあるけど、そもそも獣耳と尻尾が生えてんたぞ」


「耳は髪型として誤魔化せたのもあるけど、尻尾は認識阻害……えっと」


「あ、いや分かった。その手の言葉はゲームで学んだからな」


……しかし、当初の目的は叶ったとはいえ、あいつら早速囲まれてるし。


「タンポポちゃんの髪の毛ツヤツヤだね! どうしてるの?」


「いつも毛並みに気をつけていれば誰でもなれるわよ」


「雛さん、おやつあげる」


「ありがとうございます!!」


相変わらずである。ってかタンポポって人名にするには無理があるだろ。


「なぁなぁ内川」


突如クラスメートのモブに声をかけられた。


「内川って、雛さんもタンポポさんも同じ苗字だよな。関係あんの?」


「あー、いや。その……」


「主人は私の主人よ?」


あ、余計なことを。


「そうです! 私のご主人様です!」


「違うわよ! 私のでしょ!」


「撤回を求めるです! 私のご主人様ですー!」


「……なに? モテてんの内川」


あーもう、面倒なことになった。


「どっちとも俺のだから喧嘩すんなっての」


……ん?


どうしてみんな静かになる。


「えっと内川くん? 今のは流石に問題発言だと思うけど……」


「……ああああっ!? ち、ちがっ…」


「違わないです! ご主人様は私にちゃんと愛情注いでくれてるじゃないですか!」


「そ、それなら私だって……昨日も一緒に寝てたもん!」


だからそういうこと言うのはやめろ。


「そんなの私も毎日首輪に紐つけて散歩に連れてってくれますよ!」


うおーい。それはかなり誤解を浴びせるぞー。


「私はあの雨の日に抱かれてから、主人に惚れたんだから!」


「ほーう、それなら私の方が長いです! 親の反対を押し切って連れ出してくれたんですから!」


「わ、私なんか一緒にお風呂入ったもん!」


「それは私も一緒ですよ!」


「お前ら、止めてくれ……」


もう……聞いてて、みんな引いてるから。


俺の立場なくなるから。


「わわっ! ご、ご主人様が落ち込んじゃないました!」


「あんたのせいよ」


「というよりもわたしたちが喧嘩したからです。喧嘩するといつもご主人様怒ります……」


「……そうね。悪かったわ」


……良かった。


いや良かったけど微妙に違うんだよ。


僕の立場なんだよ問題は……。


「……ご主人様、元気出してください」


すると突然、灰になっていた俺の頬になにやら慣れているようで慣れていないような不思議なものが触れた。


「はっ! な、何が起こった?」


「……う、内川くん。ごめん、フォローできないわ……」


「……な、何をした?」


「何と言いましても、元気がなかったので顔をペロリと」


「なぁああああぁあぁあっ!!!?」


思わず顔が青ざめ、周りの様子を見る。


もはや、全員が証人である。


「お、お前、雛さんとどこまで……」


「むぅ!? なによ! 私も主人のこと好きなんだから」


そういうとタンポポも俺に顔を近づけると、ペロペロと頬を舐め始めた。


「あーん、私も励まします!」


そして、結果両方向から顔を舐められる状態になってしまい。


もはや逃げ道などどこにもなかった。


*****


授業が終わり、昼休みになった。


朝のあれから、俺と雛、タンポポに関わろうとする勇者は誰もいなかった。


「……はぁ。なんでこうなるんだか」


「すいませんご主人様。人の姿なのを忘れてつい……」


「……いやいいよ」


「でもこれでクラス認定カップルですね!」


「反省しろよ」


ともかく、今日も変わらず家の近くのパン屋で買ったサンドイッチを頬張る。


「主人。魚食べたい」


「無い物を強請るな」


「私も食べたいです。なんでもいいので」


「お前は朝におやつもらってただろ。というか、お前らは朝と晩の二食だろ」


制するが、視線が気になって食べられない。


「……はぁ。仕方ないな」


まあもう人の目を気にしても意味ないか。


「雛、お座り」


「はい!」


「待て」


「待ちます!」


椅子の上にいつものお座り体制をさせている間に、手のひらに非常用のクッキーを乗せる。


直接手で持って渡すと怖がる事があるのである。


「……よし」


「やった! もぐもぐ」


うひぃ……犬ならともかく人に直接手が舐められてるのはかなりヤらしい感じだ……。


「しゅーじーんー!」


「わかってるよ。……これで勘弁」


「……許してあげる……もぐもぐ」


うぅ……タンポポも猫の舌だからか、ザラザラしてる……でも人の姿なんだよなぁ。


「うひぃハンカチハンカチ……」


「……なあ内川」


「ふぅ……ん? 小野どうした?」


「華さんから話は聞いたけど、その二人ってペット……なんだよな」


「……いつもは犬猫な。ここ重要だから」


そうか、小野は青空の彼氏だからそういった超常現象には慣れてるのか。


「なんというか……災難だな」


「もう少し大人しかったら特に困らないんだが」


「まあ充分大人しいぞ。……ただお前のハーレムっぷりと二人の気持ちにドン引きしてるだけだ」


「ですよね」


やはり引かれてた。いや寧ろ引かれない方が異常だ。


「そうだな。今からイメージを戻すのは流石に無理だと思うし……このままいつもと変わらずに接すればどうだ?」


「……もう、そうするつもりだけど」


「なら多分大丈夫だと思うぞ」


「んなアホな。余計引かれるだろ」


……まあいいか。小野が大丈夫だというなら大丈夫なんだろ。


*****


数日後、教室。


「お前ら……なんで頭に葉っぱ乗せてんだ?」


「……登校途中で白い蝶が飛んでたから」


「わたしはそれを追いかけるポポちゃんを追いかけてました!!」


「……とりあえず取ってやるから頭貸せ」


そう呼ぶと、二人は揃ってこちらに向いて体をしゃがめた。


体制はともかく、上目遣いの二人の二人を撫でるような動きから頭についている葉っぱやら枝を取り除く。


しかし、この耳と人間の耳のどちらが本体なんだ……?


「ほら、雛。取ったぞ」


「ありがとうございます!」


「舐めるの禁止」


「……クゥンU´・ω・`U 」


危ない危ない。 もう見られるのには慣れたとはいえ、ヤられる俺が慣れないからなぁ。


「じゃあ次、タンポポな」


するとタンポポは俺の膝に座ると、耳をペタリと下げた。


「……早くしてよね」


「……ああ、そうか」


確かに、こういうのはいつも膝に抱いてしてたからな。


………

……


「はい、取れたぞ」


「まだ細かいのついてる。手ぐしして」


「……はいはい」


相変わらず綺麗好きだな。猫の姿のときからそれは変わらないご様子で。


「こんな感じでいいか?」


「……フニャア……ゴロゴロ(^=ω=^)」


気持ちいいらしい。


それにしてもヤケに雛がおとなしいな。

いつもなら、『私も撫でて欲しいです!』とか言いながら特攻してきそうだけど。


変なことをしていないか心配になり、周りを見ると……


「お手出来る?」


「出来ます! はい!」


餌付けされてた。


「えっと、牛沢さん……」


「ん? あー、雛ちゃん借りてるよ〜」


「あ……う、うん」


*****


タンポポが満足し、俺の膝の上で眠ったので、牛沢さんと話す。


「雛ちゃん可愛いね。ワンコみたいだもん」


「まあ正解だ」


「ふうん、やっぱ犬なんだ。同じ苗字ってことは内川くんのペット?」


「正解だ」


……ん?


「待て。それって比喩とかなんでもなくストレートに受け取っていいんだな?」


「比喩って何?」


「……あー、信じられるのか?」


「まあ青空さんも妖精だからねー。妖精がいるくらいなら、人の姿の犬や猫がいても変じゃないし」


そういいながら雛の首元を撫でる牛沢さん。雛はもう絶頂を迎えそうなエロい目になっている。


それにしても牛沢さんも青空さんのことを知ってたのか。


「んでタンポポちゃんは猫だよね? 教室の天井の隅っことかよく見つめてるけど、あれは何か見えてるの?」


「あれは埃を見てるっていう話があるが……まあ正解、猫だな」


「犬と猫両方買うのって大変じゃない?」


「まあ多少大変だが、どっちも賢いからな。いうほどの苦労はない、あと雛を解放してやってくれ。そろそろ本気で漏らす」


気づくと雛は完全に出来上がっており、痙攣しながら喘いでいた。


「ん? 今って発情期なの?」


「いや、牛沢さんの撫でテクで絶頂しただけだ。ただ重いかもしれないが撫でるのをやめても、支えてやってくれないか? 床に寝て服従のポーズでもされたら制服が汚れてしまう」


「うん。おお……なかなかの重量感、お腹プニプニして気持ちいい」


ふむ。牛沢さん結構力あるんだな。


*****


「ただいま……。ほら、雛、しっかり歩け」


「ら、らめれす……。アヘッ……」


「……タンポポ任せるわ」


「無茶言わないで、私寝てくる」


……あいつ。

しかも服脱いで行きやがった。


「ともかく……ほら、雛。 ちゃんと来れたらガムやるから」


「ガッガム……ほ、ほしいれす……」


といいながら歩かないのか。


くそ、今度ライトのフードでダイエットさせるか。


*****



「……主人。眠い」


「……じゃあ俺の部屋じゃなくて、寝てこい」


「無茶言わないで、私はお風呂に入るなと言われて、湯船に浸かれないわ」


なにその因果関係。


「いや、昨日まではソファやら雛のそばやら、別のところで寝てただろ」


「……いいじゃん別に。寒いの」


そういうとタンポポは有無も言わせずにベッドに潜り込んだ。


「ああ、ちょっと……」


「ほら主人も」


俺をベッドに誘うペットとは。


「……ご主人様、禁止事項破ってすみません。お部屋入りますことをお許しください……」


「どうした雛」


「……眠いです」


すると、雛は俺の方向に倒れかかってきた。避けきれずに、俺は雛の巨体とベッドに挟まれる。


「大人しくそうベッドで寝ればいいのよ」


「いや、それより。重い……」


「いいじゃない。確か人間の世界では肉布団っていうんだっけ? 人間の生殖ビデオに載ってたわ」


「に、人間の生殖ビデオって……AVのことじゃねえか。 どこでそんなものを……」


ああ、答える前に寝やがった。


「……」


「……ワフゥご主人様ぁ……♡」


「ゴロゴロ……主人……♡」


「……ハァ」


仕方ない。我慢するか。


*****


翌日


「……ん。朝です。ご主人様、朝です」


「……フニャア……雛? 主人は?」


「起きませんね。このままだと私の散歩の時間がなくなっちゃいます」


「……じゃあ昔からの起こし方でいいじゃない」


「そうですね。では久しぶりにしましょうか」


………


「「せーの」」


……………

………



……俺が目が覚めると、何故か顔中唾液まみれになっていた。


おかげで覚醒したと同時に、すごい冷や汗が出た。


そして


「おはようございますご主人様!!」


「主人、お腹すいたー」


なにも考えてないような二人(にひき)を見ると、何故かどうでもよく思ってしまうのだった。

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