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第4話 恋愛は二人のもの

今日もあたしはあなたと歌を奏でる。

それがあたしの日常。

終わらない時間、永遠であってほしい愛。

あなたは忘れてないよね?


            あたしと見つけた未来を。










            「爽彼女と別れたの!?」


「らしいよ、朝隆から言われた」



朝教室で結子から真剣な顔で、話があるなんて何の話かと思ったけど、まさか爽と彼女が別れたっていう報告だったなんて。

別れるなんて思ってなかった。ケンカしててもちゃんと仲直りする二人だったのに、どうして?

何があったの、爽……。



「今日四人共“GROPE”の一周年のライブ練習する為に朝から部室に集まるんだって。だから知沙も行かない? 爽の事気になるし、授業さぼれるよっ」


「結子、あんたそれが目当てでしょ。どうせ優達に帰らされるよ」



“GROPE”一周年。あと1ヶ月したら“GROPE”は結成一周年を迎える。だからそれを祝う為にライブをするんだって。新曲も作って、ほんとはもっと前から練習してたみたいだけど。


            一周年を迎える事はとても喜ばしい事、でも爽の事の方がすごく気になるから……。



あたしは結子と一緒に四人がいる部室へと向かった。










「隆ー! 来ちゃった!」


「は? 結子と知沙! 何で?」



四人共相当驚いた顔してるよ。そりゃそうか、朝に来るなんて初めてだしね。



「応援しに来たよ! どっ? 順調ですか?」



結子はもちろん隆にベッタリとくっついています。

隆も大変だね、ほんと。



「知沙、何しに来たんだ?」


            ……あなたの声はあたしの時間を止まらせる。それほど影響してるなんてあなたは知らないよね。



「んー、ちょっと用があってね」



適当に誤魔化して目的の人物を探す。あ、いた。窓を見てボーッとしてる爽。あれはめっちゃ辛いな。


            「もしかして、爽の事か?」

            「ん、うん……。心配だし、話聞きたいんだよね」


「ほどほどにしとけよ」



苦笑しながら優はあたしから離れて良輔の傍に行ってしまった。

心臓の煩さも収まってくる。あなたが近くにいるだけであたしの心臓は早くなっちゃうんだよ。覚えとけ、バカ優。



優に指で作った銃を向けて、口でバンッと小さく呟いてあなたの背中を撃った。


            その後あたしはすぐに爽の元に駆け寄った。爽はあたしに気付いて目線だけを向ける。



「爽! しっかりしろ!」



バシッと背中を思いきり叩いてやる。でも痛くないのか、何も言わない。

いや、心ここにあらずなんだな。

重症だなこれは……。



「……なぁ知沙」


「何? どしたの?」


「俺さ……続ける自信ない、彼女と」



いつもの爽らしくない。

恋は人を変える。昔誰かが言ったのを聞いたけど、ほんとにそうだね。

爽は恋でこんなに変わっちゃったよ。



「彼女……浮気してたんだ」

            「えっ!? う、浮気ですか!?」



まさかあんな可憐で純粋なあの女の子が浮気しちゃったの!? とてもしそうには見えないけども!



「まじムカつく……」



そのまま爽は机に突っ伏してしまった。

ムカつくよね、浮気されたら。てか浮気ってあり得ないよ。何で? こんなに良い男と付き合ってるのに浮気するなんて……。

信じられない。



「……このままでいいの? 爽は」


「俺にどうしろっつーんだよ」


「まだ好きなんでしょ? だったら諦めちゃダメだよ。好きなら頑張って……」


「知沙には分かんない」



あたしはもうそれ以上何も言えなかった。

爽が可哀想すぎて、同時に彼女への怒りも出てきて、それであたしは一つの案を思い付いた。



実行は放課後、結子と一緒に。










生徒が沢山集まる時間の玄関に、あたしと結子は立っていた。

ある人を探す為に。



「そろそろ来ると思うんだよねー」


「知沙、あんたも随分変わったよね」



冷めた、呆れが混じってる声で言われても何とも思わないよ。今のあたしは爽の為だけに動いてるんだから。



「なんでそんな爽の事に執着するの? これは爽と彼女の問題だと思うんだけど……」



ため息を吐かれたけど、そんなの気にしない気にしない。

今は彼女探しに集中。



「あたし隆のとこ行きたいよー、ねぇ知沙……あたし」

            「発見!」



結子が言い終わる前にあたしはさっさと彼女の所に駆けていった。結子はまたため息を吐いて渋々あたしの後を追う。



彼女こと、爽の元彼女の若葉ちゃんは本当におしとやかでおとなしくて可愛い女の子。委員会とかの仕事やクラスの仕事とか文句も言わないでやっちゃう彼女が、浮気なんてするわけない!!



「若葉ちゃん! ちょっと待って!」



帰ろうとする若葉ちゃんを後ろから呼び止めた。

若葉ちゃんは驚いた顔をしたけど、すぐに笑顔になった。

この笑顔が可愛いんです。


            「知沙ちゃん、どうしたの?」


「う、うん……話があって」

            「………爽君の事?」



俯いて暗い口調になった若葉ちゃん。でもあたしは頷いた。確かめなきゃいけない事があるから。



「若葉ちゃんは、その……。………う、浮気したの?」


「直球すぎるだろ」



後ろから結子のため息混じりの声がした。確かに直球すぎたかもしれない。



「それは、えっと……。……場所、変えてもいい?」



若葉ちゃんの言葉に頷いて、三人は人がいない階段辺りに移動した。

三人は沈黙に包まれて誰も話せずにいたが、若葉がふいに話し始めた。



「爽君との事心配してくれたんだよね? ごめんね、心配かけて……」


「全然いいよっそれより……なんで別れちゃったの? やっぱり若葉ちゃん、浮気したの?」



知沙の問いにまた沈黙が流れる。若葉は俯いて、ゆっくりと顔を上げると二人を見つめた。



「………爽君以外に、ほかに好きな人ができたの」


「……え」



知沙は一瞬何を言われたのか理解できなかった。しかし頭はすぐに覚醒して、言葉の意味を瞬時に理解する。

若葉は確かに好きな人ができたと言った。



「多分爽君はその人と私が一緒に帰ってる所を見たんだと思う。私もそのまま何も言わなかったから尚更こじれて……結局別れる事になったの」



若葉の言ってる事は分かる。でも何故だか納得いかない。

だって、爽はまだ……。



「なるほどね……分かった。じゃあもう若葉は爽の事は好きじゃないんだね?」

            「う、うん……」



突然今まで傍観してた結子が若葉に話しかけた。結子はため息を吐いて、若葉を見る。



「それじゃあもう若葉は関係ないよ。きっちり別れたのにどうこう言う事ないし」


「ま、待ってよ結子! 若葉ちゃんは良くても爽は……」


            そう。爽はまだ若葉が好きな筈だ。なのにこんなのってひどすぎる気がする。

納得いかない。



「知沙、分かってる? これは爽と若葉の問題なんだよ。他人がいちいち口出しする事じゃない。爽自身が何か相談してきたなら話は別だけど、後は二人が解決する事だよ」


「だけどっ」


「知沙が心配する気持ちも分かるけどさ、あたし達がでしゃばっていい事じゃないんだよ? 二人の恋愛なんだし、二人が決めた事なんだから」



結子の言う事も分かる。

だけどそれでいいの? 爽の事を考えるとこれじゃダメな気がするよ……。

これっておせっかいなのかな?



「もう爽君とは話したよ。別れる事にした」


「そっか。引き止めてごめんね」


「ううん、それじゃあ私行くから……」


「ばいばい、またね」


「ばいばい」



手を振って若葉は玄関の方へと歩いていってしまった。知沙は手を振る事ができないまま、放心状態になり固まっている。

そんな知沙を結子は見てため息を吐くと、知沙に言った。



「……恋愛ってさ、難しいよ。好きでも別れなきゃいけない時も来る。でもいつまでも引きずってちゃいけないんだよね、爽はもうきっと大丈夫だよ。隆達がいるし」



自信満々に答える結子を疑問に思いながら、あたしは爽と若葉ちゃんの事をひたすら考えた。



好きな人ができた若葉ちゃん。それを認めて、でもケンカして好きなまま別れてしまった爽。

だけど爽はもう吹っ切れたのかもしれない。

あたしには分からないけど、恋って時間が経てば傷は浅くなるのだと思う。

まだまだ未来はあるんだし、道はある。



あたしが心配する事なかったのかもしれない。

爽はきっと大丈夫、そんな気がする。



あの時の爽はものすごく辛そうだったけど、あたしは納得できなくても爽は納得したかもしれないね。

最初から他人が口出ししちゃいけないんだ。

恋愛は二人がするものなんだし、他人は他人。

大丈夫……だよね。



「……うん、そうだね。爽は大丈夫だ、きっと」


「心配なら様子見に行く?」

            「……行く!」



笑って、一つの思い出にしようね、爽。まだまだ未来はあるんだしさ!





爽と若葉ちゃんは結局別れてしまいました……。これで“GROPE”は隆以外全員彼女なしになりましたね。この事がこれからにどう響くのか、温かく見守っていただけると嬉しいです。 ではここまでありがとうございました。また次話もよろしくお願いしますね。

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