ニセモノクライム
聞き捨てならないな
その噂が流れたのは最近だ。
『ニセモノ』
携帯で自分の写真を撮り、自分宛にメールする。
すると、ニセモノが生まれる。
ニセモノは自分の代わりに学校に行き、宿題をしてくれる。
ただし、ニセモノのお願いを断ると……
私、秋瀬理科は平凡な女子高生だ。
と、誰もいない教室で一人つぶやく。
「平凡な人生だなぁ」
私はごく普通に生きていた。
そしてごく普通に死ぬのだろう。
「なんて、つまらない人生」
だから。
「『ニセモノ』……試してみようかな」
ポケットから取り出したのはスマートフォンだ。
自分を写し、自分宛にメールする。
「着信だ」
もちろん自分からだ。
開く。
「あれ?」
写した時と表情が違う。
そして、髪留めが左右逆だ。
「どういうこと?」
「それは、その写真に写っているのはニセモノだから、だよ」
後ろから突然の声。
振り返る。
そこには、秋瀬理科がいた。
いや、髪留めが左右逆だ。
「初めまして。秋瀬理科です。なんてね」
彼女はそう言って笑った。