表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
unhuman  作者: イナゴ
4/51

004

エリザベータの言ったとおり、確かにあの液体は薬だった。

とんでもない薬だった。

良薬口に苦し、とは言うがあれは酷過ぎた。

注射を打たれたその後数時間、エマは激痛にのた打ち回ることになった。

体の心が解けてしまったような倦怠感が一気に襲ってきた後、その激痛はやってきた。

全身の骨からとげが生え、内臓は体の外に出ようと勝手に暴れまわっているような、しかもその内臓は鉄の塊になってしまっていて、内側から体をずたずたにされていくような――痛み、という言葉がもはや何の意味も持たない激痛だった。

死というものがどういうものか考える前に、エマは死にたいと思った。

この苦痛からのげれることが出来るなら、今すぐ死んでしまいたい。

だがエマは死ねない。

簡単には死ぬことが許されないアンヒューマンだから。

――耐えるしかなかった。

正気を取り戻したとき、エマは時間間隔を失っていた。

一体どれくらい、自分は地獄のような苦痛を耐え切ったのだろうか。

数時間――数日――数週間――数年――。

正気を取り戻した今も、時間間隔は麻痺したままだ。

エリザベータが現われたあのときから、一体どれくらいの時間がたっているのだろうか。

この部屋に時計などはもちろん、無い。

誰もやってくる気配が無い。

エリザベータもナジャも、来ない。


ひとり。


真っ白いこの部屋にいるのは、自分だけ。

自分ひとりだけ――。


そのとき気づいた。

あの液体は、確かに薬だったのだと。


胸がしめつけらるような孤独感を覚えたとき、体の奥から湧き上がってくる抑えられない衝動――吸血衝動が起きなかったのだ。

だから思い至った。

エリザベータは嘘なんかついていなかったのではないか、あれは本当に薬――吸血衝動を抑えるための薬だったのではないか。

だからといって、軟禁されているに等しいこの状況を良しと出来るはずもなかった。


白い部屋。

白い壁。

白いカーテン。

白いベッド。

白いシーツ。

白いドア。

白白白白白白白白白白白――。

気が変になりそうだ。


再びエリザベータとナジャが現われなければ、本当に気が変になっていたかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ