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unhuman  作者: イナゴ
21/51

021

三人は連れ立って、駅前のアーケード街に向かった。

エマの服を買うためだ(エマが履いているスニーカーは、リュウギが買ったもののようだ)。

店はアーケード街にあるのだ。


『お兄ちゃん、あの人との関係、後でしっかり答えてもらいますからね』

――そう予告しておきながら、いおがリュウギに詰問することはなかった。

エマに対しても、何も尋ねない。

積極的に会話を交わそうとはしない。

エマに何かを尋ねられると、『はい』とか『ええ』とか、生返事を返すだけ。

いおのそんな態度に、しかしエマが気を悪くした様子はない。

しかしリュウギに対しては違った。

エマはリュウギに対してもあれこれと話しかけるのだが、それに対してのリュウギの答えは、『ああ』とか『うん』とか、適当な相槌だったのだが、これにはエマは気を悪くし、怒って見せたり、拗ねたりした。

リュウギはそのたびにはっと我に返り謝るのだが、心に片隅では、ずっと同じことを考えていた。

いおに、エマのことをどうやって説明すればいいのか、そのことばかりを考えていた。

そんなわけで、目的の場所に着いたとき、三人が三人とも、微妙に不機嫌だった。

しかしそれも店内に入るまで。

中の様子を見ると、エマといおの気分は見事に切り替わったようだった。

「リュウギ。好きなもの、選んでいいんでしょう?」

「え、ああ。いいよ」

リュウギだけは、いまだ道中の気分を引きずっているようだったが。

リュウギの了承を得ると、エマは大きな笑顔でうなずく。

それを見て、やっぱり普通の女の子なんだなあ――と、リュウギは思う。

「ずいぶんと大きなこと言ってるけど、予算ってあるんでしょう。いくら?」

そこへ、いおの皮肉交じりの声。

リュウギは右手を開いてみせる。

「五万」

と、いお。

「五千だよ」

いおは、正気を疑うような目で兄を見て

「全然足りない。せめてこのくらいは要るわよ」

両手を開いてみせる。

「十万!?」

叫ぶリュウギ。

「一万よ」

「うーん。もう少し負けてもらえないかなあ」

「私に言われてもねえ」

答えながら、いおは、開いたままの両手を、兄に向かって差し出す。

「はい。一万」

「仕方ないなあ」

渋りながらもリュウギは、財布から万冊を一枚抜き取ると、いおの手のひらにのせた。

「まいど」

いおは、にっと笑うと、エマの元へ駆け寄っていく。

店の入り口で待っているのも居心地が悪いし、かといって、いおとエマについて回るのも気恥ずかしいので、リュウギは外で待つことにした。

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