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unhuman  作者: イナゴ
18/51

018

リュウギが中学に上がったその年の春に、両親は離婚した。

何が原因だったのかはわからない。

両親は特に不仲なようでもなかった。

積もりに積もった互いに対する小さな不満が、分かれることを選択させたのだろう。

どんな事情があったところで、それはリュウギの知ることの出来ない大人の事情で、だからリュウギには両親の離婚を止めることが出来なかった。

当たり前と思っていたものが、何の前触れもなく突然崩れた。

13歳のリュウギにとっては、両親がいる――ということは、当然過ぎるほど当然のことだった。

彼の現実を安定させている楔だった。

それが突然に外れた。


リュウギは父親に引き取られた。

母もリュウギと別れることは望まなかったが、経済的な理由などで、リュウギは父親の元に残るほうが良いと、両親の間で合意は出来ているようだった。

もともと母などいなかったように、それからの五ヶ月間を、リュウギは過ごした。

夏休みも終わり、一月経とうというころ、父親が再婚した。

このときはさすがに父から事前に話は聞いていたから、心構えは出来ていた。

新しい母親に連れ子がいるということも。

そ連れ子が、いおだ。

血のつながらない、四つ年下の妹。

13歳にして出来た妹は可愛かった。


リュウギは乞われるまま、エマに、いおが妹になった経緯を話した。

なぜエマが、いおが本当の妹でないことを知っていたのか、何度か問いただしたが、のらりくらりとかわされ、逆にリュウギのほうがエマに尋ねられ、答える羽目になっていたのだ。

「確かに血はつながっていない。そういう意味では他人だよ。でも7年も一緒に住んでいれば、もう家族だよ。大事な妹さ」

「7年・・・。それだけ過ごさなければ、家族にはなれないんでしょうか」

「え?あ、いや、そういうわけじゃないと思うけど。そもそも本当の家族なら、年月は関係ないしね」

「そう・・・そうね」

物思いに沈んでいくように見えるエマに、リュウギは声をかけかねる。

「ありがとう、リュウギ。本当はあまり話したくないことだったんでしょ」

「うん、本当言うとね。でもエマに頼まれると、断りにくいしね」

「ありがとう、リュウギ。――ごめんね」

『ごめんね』――エマのその言葉を、リュウギは深く考えなかった。

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