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unhuman  作者: イナゴ
17/51

017

美香子のさびしげな背中に、いおは駆け寄った。

しかし言葉をかけることは出来ずに、友人の隣に身を置き、一緒に歩いていく。

言葉を交わすことのなかった二人だったが、しばらくして、美香子がポツリと漏らす。

「あの人、綺麗だったね・・・」

「何言ってるの!」

いおは憤慨した。

弱気な美香子に対してだ。

「でもあんな綺麗な人が相手じゃ、私・・・。それにリュウギさんだって・・・」

美香子の歩みが止まる。

うつむいて、鼻をすんすんと鳴らす。

「女は顔じゃない!度胸よ!」

友人の励ましの言葉にも、美香子はすぐには言葉を返せなかったが、やがて

「いおが言うと説得力あるね」

「言ってくれますねえ」

減らず口をたたく元気があることにほっとしつつも、半ば本気で美香子を睨んでしまう。

顔を上げて、いおに笑顔を向ける美香子だったが、やはりその笑みは弱々しい。

「お兄ちゃんにはさあ」

「うん」

「あの人は似合わないよ」

「綺麗だから?」

「しつこいね、君も。つか酷い。――確かにお兄ちゃんではつりあわないと思うけど、そういうことじゃなくて・・・なんていうのかなあ・・・お兄ちゃんには、もっと普通の人が似合うってこと」

「確かに普通じゃないほど綺麗だったもんね」

「だからしつこいって。――つまりお兄ちゃんには美香子が似合ってるって言いたいわけ」

「そ、そうかな」

「そうです。だからもっと自信持ちなさい。なんたって私が応援してるのよ。梁瀬リュウギの妹が」

「そうだね。うん」

うなずく美香子に、いおはほっと胸をなでおろす。

「でも、いおはいいなあ」

「え?」

「リュウギさんの妹で。私もそうだったら良かったのに」

「妹なんてそんないいものじゃないけど」

「でも兄妹って関係はずっと続くんでしょう。何があっても。それが羨ましいの」

「まあ、家族ってそうだよね」

「あーあ、お母さん、いおのお父さんと再婚しないかなあ」

「勝手に人の親を離婚させないで」

「でも、それでしかリュウギさんの妹になれないよ」

「君はおにいちゃんの妹になりたいのか?恋人になりたいのか?」

「妹で恋人?」

「それは駄目だろ」

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