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遠山の金さん

作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
掲載日:2026/08/17

夜の住宅街で竹次郎が出会ったのは、全裸で桜吹雪を晒す「遠山の金さん」……ではなく、気味悪く蠢く刺青を宿した「何か」だった。

王道時代劇のパロディと怪異ホラーが織りなす、恐怖と爆笑の新感覚ノンストップコメディ

━━遠山の金さん━━。

 昔、そんなタイトルの時代劇とかいうジャンルのテレビ番組があったそうな。

 竹次郎は平成に生まれたのでそれを知らなかった。

 だからこそ、いま目の前で全裸の男が「この桜吹雪が見えねぇか!」と叫びながら迫ってくる状況を、新手の変質者としか思えなかった。

「ちょっと、警察呼びますよ!?」

「警察? お奉行所のことか! 悪党め、白州へ引かれてお縄を頂戴しろ!」

男の肩には、血のように鮮やかな桜吹雪の刺青。だがよく見ると、その桜の花びらは一つひとつがピクピクと蠢き、蠢くたびに「……タスケテ……」と小さな甲高い悲鳴を上げていた。

本物の金さんではなく、怪異に侵された「何か」だったのだ。

「いや刺青喋ってる! こわッ! 警察じゃなくてお祓いだよこれ!」

竹次郎はスマホを投げ捨て、深夜の住宅街を全力でダッシュした。背後からは「これにて件コンティニュー!」という意味不明な決めゼリフとともに、不気味に蠢く桜吹雪の男が爆速で追いかけてくる。

 平成生まれの竹次郎にとって、初めての時代劇体験は、あまりにも理不尽なホラーの始まりだった。


     【了】

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

幼い頃に見た王道時代劇の爽快感と、夜道でふと感じるゾクッとした恐怖。その2つを混ぜ合わせたら、なぜか全裸の男が夜の住宅街で叫ぶカオスな物語になってしまいました。

恐怖と爆笑の奇妙なハーモニーを少しでも面白がっていただけたなら幸いです。

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