第五部 最強一家、世に知れ渡る
久遠クラブの次の試合。
恒一たちが球場に着いた瞬間――異変は起きていた。
駐車場が埋まっている。
人、人、人。
恒一「……え?」
アキト「多くね?」
スタッフ「今日は満員です」
恒一「いやここ社会人クラブですよ!?」
入口には行列。
スマホを構える人たち。
プラカード。
《落下男は来るのか!?》
《筋肉の人を見せろ》
《UMAじゃなくて本人希望》
朔姫「父上、祭りか?」
久世「戦支度か?」
「どっちも違う!!!」
中に入るとざわめきが爆発。
「いた!!」
「筋肉の人!!」
「謎の落下男ォ!!」
フラッシュの嵐。
久世が一歩歩くたびに悲鳴。
女子「え、モデル?」
男子「人間やめてない?」
難波がいたら警備員扱いされてたレベル。
恒一「やばいって!!完全にスターじゃん!!」
久世「人気は士気を高める」
「戦じゃないから!!」
アナウンスまで始まる。
「本日は特別に観客席を開放しております!」
「噂の“落下男”が登場するか注目です!」
久世、真顔。
「期待には応えねばならんな」
「応えるな!!!」
ウォームアップに出ただけで歓声。
ボールを軽く投げただけで音が違う。
ズドン!!!
ネットが震える。
観客「うわあああああ!!」
恒一「まだ本気出してないのに!!」
実況まで湧く。
「この投手、計測不能です!」
「雷のような球速!」
朔姫が小声で。
「父上、楽しそうだな」
久世「戦より平和だ」
だが――
スタンドの奥。
黒いフードの男が久世を見つめていた。
「……やはり見つけた」
「本物の器だ」
試合は異様な熱気のまま進んでいた。
久世が投げるたび、観客席が揺れる。
恒一が打てば歓声が爆発する。
だが――
スタンドの最上段。
人の波から切り離されたような一角に、黒服の集団がいた。
誰も騒がない。
誰もスマホを向けない。
ただ、久世だけを見ている。
「確認完了」
「反応値、過去最高クラス」
「魂の密度が異常だ」
耳につけた小型イヤホン。
淡々とした声。
「“継魂体”ではない」
「純粋な器+自立魂複数保持型だ」
別の男が低く笑う。
「やっと見つけたな」
「この時代で“本物”を」
一方ベンチ。
恒一はなぜか背中がゾワついていた。
恒一「……なぁアキト」
アキトも同じ方向を見ている。
「見られてるな」
「しかも普通じゃない」
久世は気づいていた。
視線の質が違う。
戦場で敵将に狙われた時と同じ。
久世(心の中)
――狩る目だ
試合終了。
歓声の中、選手が引き上げる。
その通路に――
黒服の男が一人、立ちはだかった。
「久世恒一くん」
フルネーム。
恒一「……誰ですか?」
男は名刺を差し出す。
《魂理研究機関》
「我々は“歴史魂現象”を研究している」
「あなたの中にいる存在」
「そして――」
視線が久世に移る。
「あなたの隣に立つ“完全具現化魂”」
空気が凍る。
朔姫が一歩前に出る。
「父上に何の用だ」
男は微笑む。
「保護です」
「そして管理」
アキト「……管理?」
「力は危険です」
「国家レベルで」
「あなた方はもう一般人ではない」
久世が静かに言う。
「戦場でも同じことを言う者がいた」
「守るためだとな」
男は目を細める。
「結果は?」
久世。
「支配だった」
一瞬、沈黙。
男は軽く手を上げる。
すると通路の影から――
同じ黒服が何人も現れる。
「選択してください」
「協力か」
「隔離か」
恒一の中で、魂たちがざわめく。
――来たぞ
――狩人だ
――戦の匂いだ
久世が前に出る。
「ひとつ聞こう」
「断れば?」
男は穏やかに答える。
「力ずくです」
その瞬間。
久世の足元の空気が歪んだ。
「ならば」
「戦だ」
黒服の男はスマホを一度タップした。
「映像を共有しろ」
次の瞬間、通路の壁面モニターが点灯する。
白い廊下。
無機質な鉄扉。
番号の振られた収容室。
恒一「……病院?」
男「研究施設です」
扉が開く。
そこにいたのは――
人。
だが目が虚ろ。
全身に管が繋がれ。
胸元には刻印のような紋様。
「被験体A-12」
「魂定着率34%」
次の部屋。
少年。
身体が痙攣している。
「武将魂の強制憑依実験」
「成功率は低い」
「ほとんどは廃人化」
朔姫「……外道だな」
華陽「魂を道具にしている」
さらに奥。
ガラス張りの巨大空間。
そこには――
複数の“人形”。
恒一の家にあったものと同型。
だが量産されている。
その中には中途半端に動くものも。
呻き声。
「魂が耐えきれず崩壊した失敗作です」
恒一「そんな……」
男は淡々と続ける。
「あなた方は奇跡の成功例」
「だからこそ管理が必要なのです」
久世の拳が震える。
「戦場でも」
「ここまでの外道はいなかった」
男は肩をすくめる。
「歴史は常に犠牲で進みます」
モニター最後の映像。
拘束された男が暴れる。
魂が暴走。
身体が裂け――
画面が暗転。
沈黙。
恒一「……俺たちは」
「ここに連れてこられる予定だったんですか」
男ははっきり言う。
「はい」
「最高ランクの研究素材として」
空気が完全に変わった。
久世が低く言う。
「貴様らは研究者ではない」
「狩人だ」
男は微笑む。
「進歩のための狩人です」
朔姫が刀を抜く構え。
「父上」
久世「斬る価値もあるな」
黒服の男がゆっくりと指を鳴らした。
「連れてこい」
施設の奥。
重厚な隔壁が開く。
空気が変わった。
重圧のような気配が流れ出す。
鎖。
拘束具。
無数の術式。
その中心に――
立っていたのは、一人の男。
全身に傷跡。
筋肉は岩のよう。
眼光は獣。
「我々の最高傑作」
「魂完全定着率100%」
「戦闘能力、計測不能」
恒一「……やば」
朔姫「父上と同じ気だ」
華陽「いや……それ以上」
男がゆっくり顔を上げる。
その瞬間。
久世の瞳が見開かれた。
「……夜叉」
空気が凍る。
黒服「識別名・コードY」
「戦闘専用兵器です」
夜叉の目が揺れた。
次の瞬間――
久世と視線がぶつかる。
沈黙。
夜叉の拳が震え出す。
鎖が軋む。
「……殿?」
かすれた声。
久世が一歩前に出る。
「生きていたか」
夜叉の瞳に一気に光が戻る。
「殿ォォォォ!!」
鎖が引きちぎれる。
拘束具が吹き飛ぶ。
黒服「なっ——制御不能!?」
夜叉は久世の前に膝をついた。
「迎えが遅れて申し訳ありません」
久世「いや、よく耐えた」
次の瞬間。
夜叉が振り向く。
目が完全に鬼。
「……殿に手を出したな?」
施設が揺れる。
黒服「止めろ!拘束プログラムを——」
ドンッ!!!
一撃で壁ごと吹き飛ぶ。
久世「夜叉」
「皆殺しは許可する」
夜叉「御意」
そこからは蹂躙だった。
実験兵器が一瞬で破壊され。
警備部隊が消え。
施設が崩壊していく。
朔姫「敵じゃなくて災害だな」
華陽「組織側が選択を間違えましたね」
最後に残った黒服の男。
這いつくばる。
「なぜ……制御が……」
久世が見下ろす。
「戦友は道具にならぬ」
夜叉が静かに首を落とす。
――魂理研究機関、壊滅。
静寂。
恒一「……味方強すぎない?」
朔姫「父上の人脈がバグ」
華陽「敵に回したら世界が終わりますね」
夜叉は再び久世の後ろに立つ。
「殿、どこまでもお供します」
久世「現代でも戦があるとはな」
こうして――
最大の脅威は一瞬で消えた。
しかも味方補強付きで。
休日の昼下がり。
恒一はソファでスマホを見ていた。
動画再生中。
――くるくる。
恒一「あれ?読み込み遅っ」
その時。
ドン。
床が揺れた。
恒一「地震?」
いや違う。
リビングの中央。
夜叉と難波が向かい合っていた。
夜叉「……久しぶりだな難波」
難波「殿の前で力比べは礼儀だ」
恒一「なんで今!?」
朔姫「始まるな」
華陽「始まりますね」
久世が腕を組む。
「よい」
「全力でやれ」
「許可すんな!!!」
次の瞬間。
ドン!!!!
肉と肉がぶつかる衝撃。
空気が震える。
Wi-Fiルーターのランプが点滅。
恒一のスマホ――
《接続が不安定です》
恒一「通信まで死んだァ!!」
夜叉が押す。
難波が受ける。
床がミシミシ鳴る。
ズン!!ズン!!
近所の犬が吠える。
車のアラームが鳴る。
恒一「災害じゃん!!!」
難波「まだだ夜叉ァ!!」
夜叉「受け止めろォ!!」
ドゴォン!!!
その瞬間――
ブツン。
家中の電気が消える。
恒一「停電まで!?!?」
久世「良い勝負だ」
「評価すんな!!」
朔姫「父上、Wi-Fiが死んだ」
久世「戦場では通信など幻想」
「ここ戦場じゃない!!」
最終的に。
2人が同時に押し合い、動かなくなる。
夜叉「……引き分けか」
難波「認めよう」
床は陥没。
壁にヒビ。
ルーター沈黙。
恒一、崩れ落ちる。
「修理代いくら……?」
久世が肩を叩く。
「強さとは代償だ」
「現代では払えない代償なんだよ!!!」
こうして――
久世家は局地災害指定されかけた。
床は陥没。
壁はヒビだらけ。
Wi-Fi死亡。
大家、激怒。
「出てってください」
恒一「ですよねえええええ!!」
久世「追放か」
「追放じゃなくて立ち退き!!」
荷物を抱えて途方に暮れる一行。
夜の街を歩く。
朔姫「宿は?」
華陽「この人数では難しいですね」
難波「野営か」
「現代で野営すんな!!」
曲がり角を間違える。
ネオンが増える。
音楽ドンドン。
恒一「……あれ?」
《CLUB》《BAR》《HOST》《LOUNGE》
久世「城下町か?」
朔姫「派手だな」
夜叉「戦場の前の祭りか」
「全部違う!!!」
キャッチのお兄さん登場。
「兄ちゃん!飲んでかない?」
久世「毒か?」
「違う!!!」
難波「腕相撲なら受ける」
「壊すな!!!」
キャッチが久世の肩を掴んだ瞬間。
筋肉の硬さにビビる。
「え…鉄?」
朔姫「父上、誘われている」
久世「ほう、歓待か」
「ぼったくりだよ!!!」
ホスト看板の写真を見る久世。
「この武将、なかなかの面構えだ」
恒一「武将じゃない!!」
夜叉「殿、敵陣だらけです」
久世「包囲されておるな」
恒一、頭抱える。
「なんで一番治安悪そうなとこ来てんだよ……」
そのとき。
通りの奥にあった一軒の看板。
《会員制 格闘バー・無限》
重厚な扉。
難波の目が光る。
「……強者の気配」
夜叉も感じ取る。
「いるな」
久世が笑う。
「宿より先に腕試しか」
「寄るなァァ!!」
こうして――
最強集団、夜の闘技場に吸い込まれる。
重たい鉄扉が開く。
中は地下闘技場。
リング。
檻。
歓声。
観客「やれぇぇ!!」
「殺せ!!」
恒一「完全にアウトな場所じゃん!!」
久世「戦場と変わらぬな」
「褒めるな!!」
屈強な男たちが並ぶ。
元ボクサー。
元傭兵。
地下格闘王。
司会「挑戦者いるかぁ!?」
難波が一歩前へ。
「俺が出る」
会場爆笑。
「でけぇだけじゃん!」
試合開始。
ドン!!!
相手が宙を舞う。
壁に突き刺さる。
観客沈黙。
司会「……KO?」
久世「次」
夜叉登場。
相手が殴る。
夜叉、受け止める。
拳が砕ける音。
夜叉「弱い」
次々瞬殺。
会場、恐怖に変わる。
その横で――
華陽が冷静にオッズ表を見る。
華陽「全財産いきましょう」
恒一「やめろォォ!!」
だが華陽の賭けは全部的中。
敵が出るたび一瞬で終わるから倍率爆上がり。
札束が積み上がる。
華陽「ふむ、三千万ほどですね」
恒一「いつの間にそんな!?」
裏社会のボスが青ざめる。
「化け物だ……」
最後に久世がリングへ。
チャンピオン登場。
筋肉の塊。
久世、構える。
チャンピオン突進。
ズドン。
天井にめり込む。
会場、悲鳴。
久世「終わりか」
華陽が財布を閉じる。
「家、買えますね」
恒一「ここで稼ぐな!!!」
ボスが土下座。
「お願いです……ここを拠点にしてください」
久世「宿ができたな」
恒一「犯罪の巣になるわ!!!」
こうして――
裏社会は一夜で制圧された。
そして華陽は不動産資金を確保した。
裏闘技場の控室。
札束の山。
恒一は頭を抱えていた。
「普通こういう金って警察来るんだよ……」
華陽は涼しい顔。
「大丈夫です」
「きれいに通します」
恒一「何を!?」
華陽が指を鳴らす。
「この街、夜が金を生みます」
「最短で拠点を作るなら――」
「ホストクラブです」
恒一「は????」
朔姫「武将がホスト?」
夜叉「接客戦?」
華陽「戦と同じです」
「人の心を掴んだ方が勝つ」
恒一「戦略理論やめろ!!」
久世が目を輝かせる。
「酒があるのか?」
華陽「最高級で」
久世「やろう」
即答。
恒一「即決すんな!!!」
数週間後。
夜の街に現れる新店舗。
《HOST CLUB 不動》
― 鬼のように強く、甘く守る ―
恒一「ネーミング怖すぎる!!!」
開店初日。
朔姫と華陽が並ぶ。
モデル級。
客が悲鳴。
「え、俳優!?」
「映画の撮影?」
秒で満席。
久世はVIP席。
酒を飲み放題。
「現代は天国か」
「飲み過ぎ!!」
華陽が売上を確認。
「初日で八桁ですね」
恒一「バグってる!!」
裏社会の連中が警戒しに来るが――
夜叉が入口に立つだけで帰る。
「営業妨害ゼロ」
久世「完璧だな」
朔姫「父上、酒場作って正解だったな」
久世「うむ」
こうして――
最強武将たちは夜の街を制圧し始めた。
しかも合法で。
《HOST CLUB 不動》は開店一週間で異変を起こした。
予約三週間待ち。
入店制限。
SNSトレンド入り。
《筋肉守護神の店》
《イケメン武将ホスト》
《落下男のVIP席あり》
恒一「情報量多すぎだろ!!!」
だが真の黒幕は――
華陽。
華陽は一度も派手な接客をしない。
ただ静かに座り。
相手の話を聞き。
的確な一言だけ返す。
女性客、次々と沼。
「私だけ分かってもらえた気がする……」
売上、爆増。
他店が潰れ始める。
夜の街のオーナー達が集まる。
「誰だあの新人」
「裏社会の闘技場潰したらしいぞ」
その夜。
華陽は招かれる。
夜の街の重鎮会合へ。
誰もが圧をかける。
だが華陽は微笑むだけ。
「争いは利益になりません」
「共存しましょう」
一人が怒鳴る。
「舐めるなガキ!」
その瞬間。
入口がギィ……と開く。
夜叉が立っている。
難波もいる。
空気が死ぬ。
華陽「彼らは警備です」
「揉め事は起こらない方が良いですよ?」
沈黙。
全員が悟る。
――逆らえない。
数日後。
夜の街のルールが変わった。
・ぼったくり禁止
・暴力排除
・健全営業
・利益の公平分配
すべて華陽主導。
売上は逆に爆伸び。
街は安全に。
客は増加。
いつの間にか呼ばれる。
「夜の帝王・華陽」
一方その頃。
久世はVIP席で飲んでいた。
「良き国になったな」
恒一「国じゃない!!!」
朔姫「兄上、天下取ってるぞ」
華陽は淡々と帳簿を見る。
「まだ半分です」
恒一「何を目指してんの!?」
こうして――
戦国の知将は現代の闇を平定した。
血を流さずに。
夜の街は平和だった。
あまりにも――完璧すぎるほどに。
争いは消え
裏社会は統制され
金は回り
誰も逆らえない
だがそれは同時に――
一人の意志で支配された世界でもあった。
夜叉は屋上で一人、街を見下ろしていた。
「……殿も華陽様も」
「止める者がいなくなった」
かつて戦場には必ずいた。
無茶を止める者
叱る者
心を戻す者
今はいない。
夜叉は静かに人形を作り始める。
木を削り
形を整え
魂の器を用意する
恒一が気づく。
「夜叉……まさか」
夜叉「恒一殿」
「力を貸してほしい」
恒一「誰を呼ぶつもりだよ……」
夜叉は一言だけ告げる。
「この一族で」
「唯一、殿を叱れた方だ」
静寂。
恒一の魂が震える。
懐かしい温もり。
優しさと強さが同時に流れ込む。
次の瞬間。
人形が光を帯びる。
ゆっくりと息をする。
瞼が開く。
「……久世?」
その声に、全員が凍った。
朔姫が震える。
「……母上」
そこに立っていたのは――
かや。
変わらぬ眼差し。
穏やかで、芯の強い女性。
久世が振り返る。
「……かや?」
一瞬で距離を詰められる。
そして――
バシン!!!
乾いた音が夜に響く。
久世「」
恒一「」
朔姫「」
華陽「」
かや、静かに言う。
「調子に乗りすぎです」
「あなた、また天下取る気?」
久世が目を逸らす。
「……酒がうまくて」
「理由になりません」
華陽にも向き直る。
「華陽」
「統治は支配じゃない」
華陽、初めて言葉に詰まる。
夜叉は深く頭を下げた。
「どうか……お止めください」
かやは頷く。
「任せて」
「この家の暴走は――私の仕事です」
こうして
最強の抑止力が現代に復活した。
力じゃなく、愛と記憶で。
夜の帝王となった華陽。
伝説の落下男・久世。
怪物夜叉。
破壊神難波。
――誰も止められなかった。
ただ一人を除いて。
かやは腕を組んで立っていた。
静か。
だが殺気ゼロなのが逆に怖い。
「久世」
呼ばれた瞬間。
久世の背筋が伸びる。
「……はい」
恒一(将軍よりビビってる)
かや「ちょっと話があります」
久世「ここでか?」
かや「逃げますか?」
久世「いいえ」
次の瞬間。
ドゴォン!!
ボスッ!!
ガシャン!!
久世が廊下を転がる。
朔姫「父上ァァァ!!」
(でも止めない)
夜叉「……殿が殴られている」
(でも助けない)
難波「……ご愁傷様です」
久世「待てかや!!話せば分かる!!」
かや「話す時間はさっきまでに終わりました」
さらに一撃。
ズゴン!!!
壁にめり込む久世。
恒一「人類で初めて久世にダメージ入れてる!!」
華陽「母上は別格ですね」
かやが仁王立ち。
「夜の街を支配?」
「喧嘩で解決?」
「飛び降り?」
「何歳ですかあなた」
久世(床から)
「……戦国生まれ」
「関係ありません」
最後にデコピン。
ピン。
久世、気絶。
沈黙。
朔姫「父上……負けたな」
夜叉「生涯初では?」
難波「ですね」
恒一「ラスボス母ちゃんじゃん……」
かやが全員を見渡す。
「あなたたちも」
全員ピシッと姿勢正す。
「やりすぎたら止めます」
全員「はい!!!」
その後。
久世が目覚める。
包帯ぐるぐる。
「……夢か?」
かや「現実です」
久世「もう飛ばぬ」
「約束です」
久世「守る」
恒一(国家より強い存在)
こうして――
最強ヒエラルキー頂点はかやになった。
朝。
久世は顔に湿布。
腕に包帯。
それでもご機嫌だった。
「かや」
「昨日は元気だったな」
かや「反省しました?」
久世「してない」
ドス。
「しました」
朔姫「学習は早いな父上」
華陽「生存本能ですね」
久世がそっと手を差し出す。
「今日は町へ出よう」
かや「デートですか?」
久世「夫婦だからな」
恒一「言い方が戦国」
そして街へ。
かやの姿は――
長い髪が風に揺れ
澄んだ瞳
柔らかな笑顔
完全に絶世の美少女モード。
通行人、二度見三度見。
「え、モデル?」
「芸能人?」
久世、当然のように隣を歩く。
腕を組む。
「俺の妻だ」
恒一(後ろから)
「言うな言うな言うな!!」
かや、ちょっと照れる。
「そんな堂々と言わなくても……」
久世「誇りだ」
周囲の女子、ざわつく。
「なにあの筋肉イケメンと美少女夫婦……」
「映画?」
かやがクレープを見つける。
「久世、あれ食べたいです」
久世「よし買おう」
(五個買う)
かや「多いです」
久世「一つでは足りぬ」
かや、笑う。
「昔もそうでしたね」
「何でも多め」
久世「戦では足りぬより余る方が良い」
「平和です」
ベンチに座る二人。
かやが久世の肩にもたれる。
「こうして歩ける日が来るなんて」
久世「戦のない世は良い」
「だが一番良いのは」
かやを見る。
「お前が隣にいることだ」
かや、真っ赤。
「……ずるいです」
久世「何がだ?」
「急にそういうこと言うところです」
久世、首傾げる。
「事実だが?」
恒一(遠くから)
「天然最強かよ……」
二人で笑い合う。
平和。
本当に平和。
その頃。
朔姫がぽつり。
「父上が一番幸せそうだな」
華陽「かや母上が最強の治安ですね」
こうして――
世界を救った夫婦はただの甘々夫婦になった。
華陽の資金力で用意された新居。
――一軒家。
しかも広い。
庭つき。
地下あり(なぜか鍛錬場)。
恒一「どこの要塞だよ……」
華陽「安全第一です」
引っ越し当日。
夜叉が冷蔵庫を片手で持つ。
難波がソファを肩に担ぐ。
恒一「業者いらねぇ!!!」
久世は堂々と主のように立つ。
「良き城だ」
かや「お城じゃありません、お家です」
久世「なるほど」
「我が家だな」
全員一斉にほっこり。
初日の家族会議(という名の騒音)
華陽「家訓を決めましょう」
夜叉「破壊禁止」
難波「全力禁止」
恒一「それだけでいい!!」
久世「酒は?」
全員「制限付き!!!」
久世「無念」
リビング事件
夜叉が座る。
ソファ沈む。
難波が座る。
床がきしむ。
恒一「耐震設計とは……」
初めての家族ご飯
かやがキッチンに立つ。
久世が後ろから覗く。
「手伝おう」
「邪魔です」
それでも皿を並べる久世。
食卓に並ぶ山盛り料理。
難波「うまい!!」
夜叉「戦場の飯より良い」
恒一「比較対象おかしい!!」
久世が満足そうに頷く。
「これが平和か」
かや、微笑む。
「そうですよ」
夜
庭で風に当たる久世とかや。
「皆がいると賑やかですね」
久世「城より良い」
「城じゃなくて家です」
久世「だが守る場所だ」
かや、そっと手を握る。
「一緒に守りましょう」
こうして――
戦国最強一家の現代生活が始まった。
騒音と愛情つきで。
その日。
恒一はいつも通り出勤していた。
平和。
何も起きないはずだった。
……はずだった。
校門の前。
異様な集団。
身長2mの難波。
殺気ゼロなのに圧だけで空気を割る夜叉。
モデル体型の華陽。
そして堂々と腕組みして立つ久世。
生徒「……映画?」
先生「ロケ?」
恒一(遠くから見て)
「来てる来てる来てる来てる!!!!」
久世が恒一を見つける。
「恒一ィ!」
全校に響く声量。
生徒たちざわつく。
「知り合い!?」
「誰あの軍団!?」
恒一が走る。
「なんで来たの!?」
久世「見学だ」
「社会科見学じゃないから!!」
夜叉「殿を一人で働かせるのは危険かと」
「危険なのはあなた達!!」
難波「敵陣調査も兼ねている」
「学校は戦場じゃない!!」
華陽が微笑む。
「恒一の生活環境を把握するのは重要です」
先生が恐る恐る近づく。
「えっと……保護者の方ですか?」
久世、即答。
「父だ」
恒一「年齢どうなってんだよ!!!」
朔姫(後ろから遅れて登場)
「兄上の城か、ここは」
「城扱いすんな!!」
授業参観(地獄)
後ろの席に座る久世たち。
机が小さすぎてミシミシ鳴る。
先生「ではここを読んで――」
久世が手を挙げる。
「その戦術は甘い」
先生「え?」
久世「挟撃すれば被害は半分で済む」
クラス騒然。
恒一「戦争の授業じゃない!!!」
体育の時間
難波がボール投げる。
校庭の端まで一直線で消える。
夜叉が短距離走。
計測不能。
生徒「人間じゃない……」
恒一「だから来るなって言っただろ!!!」
昼休み
かやが弁当を差し出す。
「恒一、ちゃんと食べてますか?」
周囲、静止。
「……誰?」
「美人すぎない?」
久世が誇らしげに言う。
「我が妻だ」
校内パニック。
恒一(人生終了)
最終的に。
校長室呼び出し。
校長「……今日は帰ってください」
久世「了解した」
恒一「二度と来ないで!!!」
去り際。
夜叉「良い戦場でした」
難波「鍛えが足りぬな」
恒一「感想いらねぇ!!」
その日から。
恒一は学校の伝説になった。
“戦国一家を連れてきた男”として。
年に一度のビッグイベント。
――運動会。
恒一は嫌な予感しかしなかった。
スタンドに。
もういる。
夜叉(腕組み)
難波(準備運動で地面揺らす)
華陽(保護者席で女性陣がざわつく)
朔姫(走る気満々)
かや(お弁当係)
そして中央にドンと座る久世。
恒一「なんでフルメンバーなんだよ!!」
久世「祭りだと聞いた」
「平和な祭り!!戦じゃない!!」
司会「次は保護者参加競技です!」
久世「出る」
恒一「出るな!!!」
保護者リレー
号砲。
久世、スタート。
ドン!!!
地面にクレーター。
一瞬で一周。
まだ他の人スタート地点。
審判「……え?」
観客「え?」
ゴールテープが風圧でちぎれる。
恒一「物理法則!!!」
綱引き
久世チーム。
夜叉&難波参戦。
開始の笛。
ドゴォォン!!!
相手チーム空を飛ぶ。
司会「勝者……えっと……」
恒一「やりすぎ!!」
借り物競争
紙に書いてある。
《力持ち》
全員が夜叉を指差す。
即ゴール。
朔姫の本気走
号砲。
風しか残らない。
タイム表示バグる。
先生「計測不能……」
恒一「オリンピック案件!!」
昼休み
かやの手作り弁当。
久世が誇らしげ。
「我が妻の飯だ」
保護者「羨ましすぎる……」
最後の大玉転がし
久世が押す。
ボールが転がるというより飛ぶ。
校庭横断。
校舎にぶつかって止まる。
校長、青ざめる。
その日の結果。
久世家チーム:全競技圧勝
恒一「もう出禁になるよ!!」
久世「良い祭りだった」
先生たち(震え)
翌日。
学校掲示板
《今年の運動会は安全管理のため規模縮小します》
理由:戦国最強一家参戦のため
こうして――
運動会は伝説行事になった。
運動会の翌日。
恒一のスマホが鳴り止まなかった。
《昨日の怪物一家って何者?》
《あの筋肉の人どこのジム?》
《リレー早すぎて編集追いついてない》
恒一「もう終わった……人生終わった……」
その時。
ピンポーン。
インターホンのカメラ。
そこに映るのは――
テレビ局クルー十数人。
カメラ三台。
マイク。
恒一「来たァァァァ!!」
久世「使者か?」
「違うメディアァァ!!」
ディレクターが深々と頭を下げる。
「昨日の運動会の件で取材を……!」
久世「我が軍の武勇が広まったか」
「軍じゃない!!!」
そのまま強引に収録スタート。
街の噂インタビュー
「ええもう怪物ですよ」
「綱引きで人が飛びました」
「地面割れてました」
テロップ:《謎の最強一家現る》
久世への直撃
記者「ご職業は?」
久世「武将だ」
スタッフ「……え?」
恒一「無職です無職!!」
記者「力の秘密は?」
久世「鍛錬と戦」
「戦言うな!!!」
再現チャレンジ
番組スタッフが走ってみる。
普通。
次に朔姫。
風だけ残る。
カメラ倒れる。
スタッフ「編集追いつきません!!」
難波チャレンジ
車を押す企画。
難波、軽く持ち上げる。
スタッフ悲鳴。
かやの家庭感アピール
「普段は普通の奥さんです」
→料理が山盛り
→包丁が速すぎて見えない
テロップ:《普通とは》
久世が最後に一言。
「皆、鍛えればこうなる」
全国の視聴者:「無理」
その日の夜。
トレンド一位。
#謎の最強一家
#筋肉の武将
#人類超えてる
恒一、床に崩れる。
「もう普通の人生無理だ……」
久世、満足そう。
「良き広報だった」
かや「怒られますよそのうち」
久世「なら逃げる」
「戦国思考やめろ!!!」
こうして――
久世家は全国的都市伝説になった。
テレビ放送の翌朝。
恒一のスマホが――
爆死していた。
通知:999+
メール。
「出演のご相談」
「ぜひ筋肉の方を…!」
「ゴールデン特番枠です!」
「ドッキリ企画お願いします!」
恒一「芸能事務所かよここ!!」
華陽が冷静に確認。
「全部大手局ですね」
久世「戦の誘いか?」
「仕事ォォ!!」
企画内容がぶっ飛んでる
久世VS最強プロレスラー
難波で車引き
朔姫で100m世界記録チャレンジ
夜叉で壁破壊実験
かやで家庭料理対決
恒一「最後だけ平和!!」
久世「全て受けよう」
全員「ダメ!!!」
スタジオ初登場
観客、悲鳴。
司会者「本物来ちゃったよ!!」
久世が一礼。
「久世だ」
会場「キャーーー!!!」
司会「自己紹介それだけ!?」
久世チャレンジ
鉄パイプ曲げ。
クシャ。
司会「えぇぇ!?」
朔姫スピード対決
カメラ追いつかず。
スタッフ「残像しか映ってません!」
難波の牽引
バス引く。
司会「物理法則どこ!?」
かやの癒しコーナー
料理一口で芸人泣く。
「母の味ぃぃぃ!」
視聴率
爆伸び。
歴代最高。
翌日から――
全局からオファー殺到。
「週レギュラーで!」
「冠番組で!」
「海外進出!」
恒一「もうスポーツ漫画じゃねぇ!!!」
久世「国を治めるより忙しいな」
かや「静かに暮らしたいですね」
夜叉「敵より厄介ですな」
こうして――
久世家は日本のエンタメを支配し始めた。
しかも無自覚で。




