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久世家戦記・現  作者:
宇宙編
21/25

第十部 創生戦艦と単一電池の奇跡

 再生された大地には、かつて失われていた色が戻っていた。

灰色だった空は淡い蒼へと変わり、乾ききっていた大地には草木が芽吹き、風が生命の匂いを運んでくる。


倒れ伏していた星の民たちは、ゆっくりと立ち上がり、久世たちを見つめていた。

恐れではなく、希望の眼差しで。


長老格と思しき者が一歩前に出る。

「創生の守護者よ……この星は、もはや滅びの名を持つ場所ではありません」


震える声で続ける。

「どうか、あなた方に新しい名を授けていただきたい。

我らが再び生きる証として」


静寂が広がる。

星そのものが、久世の言葉を待っているかのようだった。

久世は空を見上げ、再び輝き始めた恒星の光を受けながら、ゆっくりと口を開く。


 

 久世は静かに地へ降り立ち、再び息づき始めた大地を見渡した。

草が芽吹き、風が流れ、空には久しぶりの雲が浮かんでいる。


滅びの星だった面影は、もうどこにもなかった。

星の民たちは膝をつき、祈るように久世を見上げる。

「この星に……名を……」


久世は少しだけ微笑み、かやの方を見る。

かやもまた、うなずいた。

「ここは終わりの場所じゃない」


久世は空へ手を伸ばす。

「新たに生まれた星だ」


一拍置いて、はっきりと言った。


「この星の名は――ノヴァリア」


その瞬間、恒星の光が強く輝き、地表を黄金色に染める。

まるで宇宙そのものが祝福しているかのようだった。


星の民たちは涙を流しながら声をあげる。

「ノヴァリア……ノヴァリア……!」


新たな誕生の名は、宇宙に刻まれた。


かやはそっと久世の隣でささやく。

「本当に……生き返ったんだね」


久世は静かに答える。

「ああ。ここから始まる星だ」


滅びから生まれた、希望の世界――

ノヴァリアの物語が、ここから動き出した。


 

 星の民が戻ってから、わずか三日。

信じられないほどの速さでノヴァリアは姿を変えていた。


崩れていた街路は整えられ、白い建物が次々と組み上がり、空中を走る輸送艇が忙しなく行き交う。どこから来たのか移住希望の民まで現れ、広場では露店が並び、笑い声と呼び声が絶えなかった。


焼き立ての星果パンの香り、光る飲料を売る屋台、子どもたちが浮遊ボールを追いかけて駆け回る姿。

滅びの星だったとは思えないほどの賑わいだった。


その中心から少し離れた高台の迎賓区画で、久世たちは完全な“英雄待遇”を受けていた。

透き通るような果実の盛り合わせ、星獣の柔らかな肉料理、銀河香草を使ったスープ。

どれも口に入れた瞬間、体の奥から力が戻ってくるような味だった。


「……豪華すぎない?」

かやが小声で言うと、給仕の民が即座に深く頭を下げる。

「命を救ってくださった方々に、足りるはずがありません」


朔姫は目を輝かせて皿を抱え込んでいた。

「この星、最高すぎる!」


難波は料理を一口で消し飛ばしながら感動している。

「復興三日でこの味は反則だろ……」


風夏は気品ある所作で微笑みながら、

「平和が戻るというのは、こういうことなのですね」


と静かに言った。

華陽は街の再建速度を窓越しに眺めながら興味深そうに呟く。

「恐ろしいほど合理的な文明だな。戦後復興の理想形だ」


凛とミラとルークは広場を見下ろして楽しそうに人々を数えていた。


そして久世は――

静かにその光景を見つめていた。

戦場でも、宇宙の滅びの縁でもなく、

ただ人々が生きて、笑って、暮らしている世界。

それこそが彼の守ってきたものだった。


かやが隣に座り、そっと肩に寄り添う。

「久世……この星、ほんとに生き返ったね」


「ああ」

久世は小さく息を吐いた。

「こういう騒がしさがある場所こそ、守る価値がある」


遠くで鐘のような音が鳴り、新たな移民船が到着していた。

ノヴァリアはもう“救われた星”ではなく、

未来へ広がる星になり始めていた。

だが久世は知っている。


この平和は、次の戦いの前の静けさだということを。


そして――

欠片はまだ、宇宙のどこかで待っている。


 

 豪華な料理が並ぶ円卓に、穏やかな時間が流れていた。

果実の透明な果汁が光を反射し、香草の湯気がふわりと漂う。

その時だった。


扉の向こうが少し騒がしくなり、警備兵――休士たちの一人が困った顔で現れる。

「久世様……少々よろしいでしょうか」


「どうした?」


「こちらの機械生命体が、どうしても中に入りたいと……」

その後ろから、金属の足音とともに姿を現したのは――

レオンロボだった。


「入店を拒否されました。差別です。明確な差別です」


「ここは生命体専用だと説明されまして」

休士が肩をすくめる。

「ですが“久世様の知り合いだ”と主張されまして……確認のためお連れしました」


一斉に視線が久世へ向く。

久世は一瞬目を見開き、すぐに笑った。

「……久しぶりだな、レオン」


レオンロボの目の光が柔らかく揺れる。

「生存を確認できて安心しました。創生の守護者」


かやが思わず立ち上がる。

「レオンさん……!」


「あなた方が星を再生させたことは観測済みです。成功率、想定を大きく上回っていました」


朔姫は首を傾げる。

「ていうか、ロボットってレストラン入れないの?」


「香りを楽しめない存在に席は不要だそうです。非常に非論理的判断です」


難波が吹き出す。

「いやロボに匂い関係ねぇだろ!」


久世は軽く手を上げた。

「問題ない。俺の客だ」


休士がすぐ頭を下げる。

「失礼しました!どうぞお入りください!」


レオンロボは堂々とテーブル横に立つ。

「感謝します。文明レベルが一段階向上しました」


華陽がくすっと笑う。

「相変わらず理屈屋だな」


久世は椅子を一つ引いてやる。

「座れ。食事はできなくても、話はできるだろ」


「最適配置に感謝します」


そしてレオンロボは静かに告げた。

「創生期の記録をさらに解析しました。

欠片の反応――次の星が、すでに動き始めています」


その場の空気が一気に引き締まる。

平和な食卓の上に、次の旅の予兆が落ちた瞬間だった。


 

 かやはレオンロボをまっすぐ見つめた。

「……でもレオンさん、あの時……動かなくなって、光になって消えて……」


テーブルの空気が一瞬しんと静まる。

ミラもルークも息をのむ。

久世でさえ、少しだけ目を伏せた。


レオンロボは数秒沈黙し――

首を傾げた。

「生き返った……とは?」


「え?」


「私は機械生命体です。死亡判定という概念は存在しません」


「いやでも……消えたよ!?光になって!」


レオンロボの目が一瞬ぱっと明るくなる。

「あ」


まるで思い出したような声だった。

「それは演出です」


「……え?」


「自己終了時に“感動的な別れ感”を演出するため、ホログラム放出機能を起動しました」


全員固まる。


「え、じゃあ……」


「本体はその場で転倒しただけです」


「……」


「ちなみに動力源は単一電池二本です」


「は?」


難波が叫ぶ。

「宇宙創生期の科学者の記憶詰め込んで単1電池!?」


「高効率です」


華陽が頭を抱える。

「文明の進化とは何だったのか……」


朔姫は腹を抱えて笑い転げる。

「ちょっと待って感動返して!!」


かやはぽかんとしたまま久世を見る。

「久世……あれ、めっちゃ泣いたよね私……」


「ああ」

久世は遠い目をした。

「星が再生した奇跡レベルで泣いた」


レオンロボは胸を張る。

「成功したようで何よりです」


「成功って言うな!!」

一斉ツッコミがレストランに響いた。

少し離れた席の星の民たちが何事かと振り返るほどだった。


久世は深く息を吐いて苦笑する。

「……お前、創生期からそういう性格だったのか?」


「はい。セラ様に“無駄にドラマチック”とよく叱責されていました」


その名前に、空気が一瞬やわらぐ。

かやは小さく笑って言った。

「でも……生きててくれてよかった」


「稼働中であることに感謝します」


そしてレオンロボは静かに続けた。

「別れではありませんでした。

これからも私は同行します。欠片がすべて戻るその時まで」


久世は頷いた。

「頼りにしてる」

平和な笑いの中で、旅は確実に続いていく。


 

 笑いがようやく収まった頃。

レオンロボはテーブルの中央に小さな星図を投影した。


青く光る銀河の一点。

「次に向かう星について報告します」


久世が腕を組む。

「生命反応は?」


「あります。それも――極めて高密度」

レオンロボは一瞬、間を置いた。

「創生期の同胞がいます」


空気が変わる。


朔姫と凛が同時に顔を上げた。

「まだ……生きてたの?」


「はい。

彼女は当時から“改造と進化”を専門とする技術者でした」

モニターに映るのは、機械と生命が融合した都市の映像。


「名前は――イリス」

「身体強化、魂転写、星間兵器、宇宙船強化、ほぼすべて彼女の設計思想が元になっています」


難波が低く唸る。

「やべぇやつじゃねぇか……」


レオンロボははっきり言った。

「ですが味方になれば、ネメシスに対抗する最大戦力になります」

「彼女の思想は一貫しています」


――進化は止まった瞬間に滅ぶ。

久世はゆっくり息を吐いた。

「創生期の仲間か……」


かやが静かに言う。

「会いたい?」


久世は少し迷ってから、微笑った。

「会うべきだろ」

「俺たちの過去も、未来も、そこに繋がってる」


レオンロボは深く頭を下げる。

「ぜひ仲間にしてください」

「彼女が加われば――創生軍は“完成形”に近づきます」


宇宙船の窓の向こうで、星々がゆっくり流れていく。

次なる目的地。

創生期最後の技術者が待つ星へ。



 レオンロボは少しもじもじしながら続けた。

「……それと、もう一つ個人的な願望があります」


久世が眉を上げる。

「願望?」


レオンロボのモニターに一瞬、イメージ映像が浮かぶ。


長身

広い肩幅

無駄のないスマートな装甲

どこか渋さのある顔立ちのダンディーロボ


全員「……」


「かっこよすぎだろ」

華陽が即ツッコむ。


レオンロボは少し照れたように言う。

「イリスなら可能です」

「私は長年、単一電池で動く簡易型でしたが」

「そろそろ――大人のロボになりたいのです」


難波が腹抱えて笑う。

「お前、宇宙の存亡より自分の見た目気にしてんのかよ!」


「重要です」

レオンロボは真顔だった。

「戦いの最前線に立つ以上、威厳は必要です」


朔姫がくすっと笑う。

「確かに今のレオン、ちょっと可愛い寄りだもんね」


「……可愛いは不本意です」


久世は静かに笑った。

「いいじゃねぇか」

「この旅は欠片を集めるためだけじゃない」

「それぞれの“願い”を叶える旅でもある」


かやが優しく頷く。

「レオンも生き直してるんだもん」

「好きな姿になっていいよ」


レオンロボの目が一瞬強く光った。

「……感謝します」

「必ずダンディになります」


華陽がぼそっと。

「なんか一番成長欲強いのロボじゃね?」


一同笑う。

宇宙船は次の星へ進路を向ける。


 

 ノヴァリアの星が、ゆっくりと遠ざかっていく。

再生した大地には光が満ち、

人々は手を振りながら久世たちを見送っていた。

「また来てねー!!」

「英雄たちー!!」 


宇宙船の窓越しに、かやが小さく手を振る。

「ちゃんと生き返ってよかったね、この星」


久世は静かに頷く。

「ああ。これで一つ、宇宙は救われた」


レオンロボがすぐ横で言う。

「次の目的地――機械文明星アルケオン

「そこにイリスがいます」

「創生期最高の改造技師です」


華陽が目を輝かせる。

「ついにレオンの夢が叶う星か」

「ダンディ化計画始動だね」


レオンロボは妙に背筋を伸ばした。

「覚悟はできています」

「私は進化します」


難波「なんで一番気合入ってんだよ」


そして到着する、異常な星

ワープが解けた瞬間――

一同、言葉を失った。

星全体が都市だった。


空中を走るレール

宙に浮かぶビル群

自動で組み上がる建造物

星の表面そのものが巨大工場のように動いている


「……え、ここ星だよね?」

朔姫がぽつり。


「都市国家どころじゃない」

「都市惑星だ……」

ジンが震え声で言う。

「アルケオンは文明レベルが銀河トップクラスです」

「イリス一人で技術を数百年進めたと言われています」


久世が静かに呟く。

「やべぇの来たな」


イリス初登場

着陸と同時に、無数のドローンが囲む。

だが敵意はない。

むしろ――歓迎。


中央通路が割れ、一本道が形成される。

その先から歩いてきたのは――


白銀のロングコート

片目に機械義眼

背中に浮遊式ツールアームが六本

年齢不詳の美しさと知性の塊みたいな女性

彼女は久世を見るなり、即理解した顔になる。

「……なるほど」

「あなたが“輪廻と創生の融合体”ね」


全員「え?」


初対面で核心ぶち抜かれた。

久世「説明一切してねぇんだが?」

イリスは退屈そうに指を鳴らす。

するとホログラムが展開され、久世のエネルギー構造が完全解析されて映る。

「魂構造、宇宙創生級」

「自然エネルギーと銀河エネルギーの完全共存」

「理論上存在不可能」

「でも存在してる」


レオンロボが震える。

「……やはり天才」


イリスはようやく視線をレオンへ向ける。

「あなたが単一電池の子ね」


レオン「なぜそれを!?」


「内部構造見ればわかるわ」

「逆に感動するレベルのローテク」


難波「ボロクソで草」

レオン「泣きますよ私は」


イリスは小さく笑った。

「安心しなさい」

「あなたを――銀河最高峰のボディにしてあげる」


レオンの目が発光レベルで輝く。

「ほ、本当ですか!?」


「ええ」

「ただし」


一瞬、イリスの目が危険に光る。

「普通じゃ済まさないけど」


全員「不穏!!!!」


天才の本性

イリスは振り返りながら言う。

「改造とは芸術よ」

「限界を超えてこそ美しい」

「中途半端は嫌い」


久世がぼそっと。

「……やべぇタイプだこれ」


かや「絶対盛る人だよね」

華陽「絶対兵器になる流れだよね」

レオンロボは震えながらも拳を握る。

「構いません」

「私は――ダンディになる」



 アルケオンの中心研究区画。

天井が見えないほど高く、

無数の機械アームとホログラムが宙を舞う巨大ラボ。


レオンロボは改造台に立たされていた。

「つ、ついにこの時が……」

「私はダンディに……」


イリスは白衣を羽織りながら楽しそうに指を鳴らす。


「その前に」

「遊ぼうか」


レオン「……え?」


天才の“遊び時間”スタート

久世たちが見学席に座らされる。

イリスが振り返る。

「あなたたち、改造案ある?」

「本人の希望は一旦無視するから」


レオン「無視!?」

かや「え、いいの!?」

イリス「本人の理想より他人の欲望の方が面白いの」

華陽「悪魔の発想だ……」



第一案:夜叉監修・超戦闘型

夜叉が腕を組む。

「硬度と耐久を極限まで上げろ」

「前線で盾になる構造に」


イリス「いいわね」


一瞬でレオンの装甲が組み替わる。

重厚な黒銀の鎧ボディ

背中に巨大エネルギー炉

拳が戦艦並みに巨大化


レオン「おおおお!?強そう!!」

夜叉「兵器だな」


第二案:朔姫監修・超高速型

朔姫が目を輝かせる。

「速さ特化!」

「見えないくらい速く動けるやつ!」


イリス「素敵」


装甲が一瞬で分解→再構築。

細身の流線型ボディ

脚部に量子加速ユニット

残像が常にブレる


レオン「速すぎて自分が見えません!」

久世「存在がラグってるぞ」


第三案:難波監修・筋肉型(意味不明)

難波「筋肉だろ」

イリス「機械に筋肉?」

難波「魂だ」

イリス「理解した」


なぜかメカなのに

鋼鉄の“筋繊維”が隆起しまくるゴリゴリロボ誕生。


レオン「物理法則どうなってるんですか!?」

華陽「気合で成立してるね」


第四案:かや監修・かわいい型

かや「えっと……」

「ちょっと可愛くしてあげてほしい」

イリス「いいわ」


突然、丸みのある白ボディ

光る目がきゅるん

小さな羽付き

レオン「なぜマスコット路線!?」

久世「宇宙のゆるキャラ誕生」


イリス、完全にノってる

イリスは笑いながら次々切り替える。

「楽しい!」

「改造ってこうじゃなくちゃ!」

「本人の意思とかどうでもいい!」


レオン「ひどい!」

レオン、ついに叫ぶ

「お願いですイリス!!」

「私はダンディな大人ロボになりたいだけなんです!!」


研究室が静まり返る。

イリスは一瞬だけ真顔になり――


そしてニヤッと笑う。

「……いいわ」

「じゃあ最後に“本命”を作ってあげる」

「私の美学でね」

久世「嫌な予感しかしねぇ」

 


 イリスの指が止まる。

無数の光が収束し、最後の改造が完了する。

煙が晴れて――

そこに立っていたのは。


……いや、立っているというか浮いている。

まん丸の球体ボディ。

そこから申し訳程度に伸びた細い手と足。

顔もなく、装飾もなく、ただの——

球。


沈黙。


久世「……え?」

かや「……え?」

朔姫「……え?」

夜叉「……え?」

難波「……え?」

華陽「……え?」

風夏「……え?」

ジン「……え?」 


イリスが胸を張る。

「完成よ」

「無駄を削ぎ落とした究極のフォルム」

「知性と機能美の結晶」


久世「いや削ぎすぎだろ」

華陽「ほぼパーツじゃん」

朔姫「途中段階じゃないのこれ!?」

難波「俺の筋肉どこ行った」

夜叉「戦場で即折れる構造だ」


だが。

レオンだけが震えていた。

ゆっくり自分の細い腕を見て、

くるっと回転してみて、

感動で声が裏返る。

「……美しい……」

「これだ……これこそ私の理想……」


一同「え?????」


レオンは誇らしげに浮遊しながら言う。

「過剰な装甲は知性を曇らせる!」

「筋肉など野蛮!」

「球体こそ最もエネルギー効率が良く、完璧な存在!」

「これぞダンディの極致!!」


久世「ダンディの定義ぶっ壊れてんな」

かや「理系の美学こわ……」

華陽「科学者の感性、宇宙規模でズレてる」


イリスは満足げにうなずく。

「わかるわ」

「球体はロマンよ」


レオン「ですよね!?」

イリス「最高」

夜叉「この二人止めていいか」

難波「俺が物理で止めるか?」


レオンは嬉しそうにふよふよ浮かびながら宣言する。

「これで私は――」

「銀河一ダンディな科学者ロボです!!」


久世「見た目ほぼ観測用ドローンなんだが」



 一同がまだざわついている中。

レオンは満足げに浮かんでいる。

「完璧だ……私は完成した……」


久世「いや完成の方向性おかしい」

華陽「進化じゃなくて簡略化だろそれ」


そのとき。

イリスが静かに指を鳴らした。

カチン。


すると――

レオンの球体表面に、無数の光の線が走る。

まるで幾何学模様のように広がっていき……

球体がほどけるように分解・再構築を始めた。

金属が流体のように動き、

形が次々と変わる。


人型。

獣型。

翼を持つ形。

巨大砲台形態。

細身の高速戦闘型。

一瞬ごとに別の姿へ。


かや「……変形してる」

朔姫「いや進化してる」

夜叉「戦場対応型だ」

難波「ロマンの塊じゃねぇか」


イリスが淡々と告げる。

「球体はね、最も構造制限が少ない形状なの」

「骨格も関節も前提にしない」


「つまり——」

「どんな姿にも即座になれる“完全可変躯体”」


レオンが誇らしげに回転する。

「そう!」

「私は“形に縛られない存在”になったのだ!」


久世「最初からそれ言え」

華陽「ただのネタ改造かと思ったじゃん」


イリスは少しだけ笑う。

「見た目を犠牲にした代わりに」

「銀河最高クラスの適応兵器にした」

「戦闘・探索・修復・建設・宇宙航行すべて対応」


朔姫「強すぎでは?」

夜叉「軍一つ分の価値がある」


レオンはドヤ声で締める。

「ダンディとは——」

「無駄を削ぎ落とし、可能性を最大化することだ」


難波「理屈はかっこいいのに見た目が丸だ」

かや「でも強いから何も言えない……」


 

 レオンはくるりと浮かびながら問いかける。

「ところでイリス君」

「私の単一電池仕様はどうなったのかね?」


一瞬。

空気が止まる。


イリスが視線を逸らす。

「……残してある」

久世「嫌な予感しかしない」


イリスは少し頬を赤らめて続ける。

「一番取り出しやすくて」

「構造的にも衝撃に強くて」

「なおかつエネルギー循環効率が良い場所に」

「格納しただけ」


華陽「どこだよそれ」

夜叉「まさか……」


イリス、指をさす。

「……股間」


沈黙。


宇宙が止まる。


レオン「ほう」

「合理的だ」


イリスが操作説明をする。

「ここを——押すと」


カチッ。

ニュッ。

金色に光る巨大単一電池がスライド排出。


かや「出てきたぁ!?」

朔姫「いや普通にギミックとして完成してるのが怖い」

難波「誰がその発想許可した」


イリス(早口)

「戦闘中でも即交換可能!」

「エネルギー残量も触覚で把握!」

「外部衝撃で暴発しない位置!」


久世「説明が完璧なのが余計にダメだ」


レオンは満足そうに頷く。

「素晴らしい」

「これぞ科学者のロマン」


華陽「ロマンを履くな」


そしてイリスが小声で付け足す。

「……ちなみにフルパワー稼働だと」

「だいたい三日で切れる」


全員「短っ!!」

レオン「では私は三日に一度“電池交換の儀”を行うのだな」

かや「言い方が神聖すぎる!」



 都市は光でできた海のようだった。

宙に浮かぶ道、透明な建造物、星雲をそのまま閉じ込めたような街灯。

かやは振り返って小声で言う。


「久世、レオンさんたちの時間だよ」


久世は頷く。

「行ってこい。邪魔するもんじゃない」


朔姫たちも察して、何も言わず歩き出す。


その場に残ったのは

久世、レオン、イリス。

しばらく誰も喋らなかった。 


レオンが先に口を開く。

「……変わったな、クゼ」

「創生期の頃は無茶ばかりしていた」


久世は苦笑する。

「今も大して変わっとらん」

「ただ守るものが増えただけだ」


イリスは腕を組んで眺めていた。

「あなたがまたここに立つとは思わなかった」

「何度も星は再生したけど」

「あなたが戻る未来だけは計算できなかった」


レオンが静かに笑う。

「君はいつもそうだ」

「完璧なのに、希望だけは予測できない」


イリスの表情が一瞬柔らぐ。

「……科学じゃ測れないものもある」

「それを証明する存在が、あなた達なのよ」


久世は都市を見渡した。

「ここも、よく燃えたな」


イリス「三回ほど壊滅したわね」

レオン「そのたびに君が直した」


イリスは小さく息を吐く。

「直したんじゃない」

「まだ生きたいって言われたから作っただけ」


しばらく沈黙。

遠くで子どもたちの笑い声が響く。


レオンがぽつりと言う。

「セラがいたら喜んだだろうな」


イリスの指が一瞬震える。

「……ええ」


久世は空を見る。

「俺たちはまだ終わっとらん」

「この宇宙を、ちゃんと未来に渡すまでな」


イリスは微笑む。

「だから私は改造を続ける」

「あなた達が走れる限り」


レオンがくるっと回転する。

「では次はどんな無茶に行くのだね?」


久世「欠片集めだ」

「ついでに宇宙を救う」


イリス「相変わらず規模が馬鹿」

レオン「だが楽しい」


遠くからかやの声が響く。

「久世ー!こっちすごいよー!」


久世は振り返って手を振る。

「今行く!」


イリスはその背中を見つめて静かに言う。

「……やっぱり希望は生き物ね」


レオン「うむ」

「そして電池で動く」


イリス「それは関係ない」



 都市の中央にそびえる塔の最上層。

イリスの研究区画は星の心臓みたいに静かだった。

宙に浮くケースの中で、淡く脈打つ光。

欠片だった。


イリスは操作パネルを閉じて言う。

「実はね」

「この星が崩壊したとき、いくつか回収していたの」

「ネメシスに奪われる前に」


かやが息をのむ。

「じゃあ……これ全部」


イリス「ええ、エーテルスターの欠片」

「あなた達が集めているもの」


久世は静かに近づく。

「なぜ今まで黙っていた」


イリスは目を伏せる。

「渡したら、あなた達はまた危険な戦場へ行く」

「少しでも休ませたかった」


沈黙。


レオンがくるりと回転した。

「つまり、旅は続くということだな!」

イリス「……そうなるわね」


久世が言う。

「なら一緒に来い」


イリスが目を見開く。

「私が?」


その瞬間、レオンが被せる。

「当たり前だろ!」

「君が来なければ誰が私の整備をする!」


イリス「自己修復機能が——」

レオン「壊れたらどうする!」

「ネメシスの攻撃で砕けたら!」

「誰が直すんだ!」


イリス「……」


レオンは少し声を落とす。

「私はロボだ」

「だが君に直してもらわなければ生きられない」

「それは昔も今も変わらない」


久世が静かに言う。

「イリス、お前はもう戦いから逃げられん」

「創生の民として」

「俺たちの仲間としてだ」


かやが優しく笑う。

「一緒に行こ?」

「怖くても、みんなでなら平気だよ」


しばらくイリスは黙っていた。

やがて、ふっと息を吐く。

「……技術者が現場に出るなんて最悪の判断ね」

「でも」

「一人で待つよりマシか」


レオン「よし決定だ!」 


イリスは欠片のケースを持ち上げる。

「全部持っていきなさい」

「そして宇宙を終わらせましょう」


久世は笑った。

「終わらせて、未来に渡すんだ」



 宇宙船の格納ドック。

外宇宙に開いた巨大ハッチの奥で、イリスの目が完全に研究者モードに入っていた。

無数のホログラム設計図が空中に展開される。


イリス

「まず言っておくわ」

「あなた達の船……よくここまで無事だったわね」


ジン

「え、頑丈ですよ?」


イリス

「原始レベルでね」


全員

「原始!?」


イリスは淡々と続ける。

「ネメシス軍と銀河戦をする船じゃない」

「これは“観光船”よ」


久世が腕を組む。

「なら戦艦に変えろ」


イリスの目が光った。

「待ってました」


宇宙船・創生改装プロジェクト開始

空間が一気に動き出す。

ドローン、重力クレーン、分子分解装置。


■ エーテルエンジン搭載

「欠片の微粒子を動力化」

「通常ワープの百倍速度」

「ネメシスの追撃は不可能」


ジン

「百倍!?宇宙割れません?」

イリス

「割れるのは敵」


■ 創生シールド展開

「星の糸を模した多層防壁」

「銀河級爆発でも無傷」


夜叉

「要塞だな」

イリス

「城塞都市レベルよ」


■ 意志連動操縦システム

「操縦桿不要」

「搭乗者の思考で機動」


かや

「考えただけで動くの?」

イリス

「戦場で反応遅れは死よ」


■ 久世専用・創生共鳴砲

船首に巨大結晶砲身が形成される。

「久世のエネルギーと共鳴して撃つ」

「一発で恒星を切断できるわ」


久世

「やりすぎだ」

イリス

「控えめよ」

レオン

「どこがだ!!!」


個人パワーアップも開始

イリスが端末を操作。


● かや — 未来視ブースト

「未来視の範囲を数秒 → 数分」

「戦場シミュレーション可能」

かや

「え、未来が映画みたいに見える……」


● 朔姫 — 超加速進化

「空間摩擦無効化」

「光速近い動きが可能」

朔姫

「これもう瞬間移動じゃん!」


● 凛&夜叉&難波 — 創生装甲

「攻撃吸収→反撃変換型」

「ダメージが力になる」

難波

「殴られたほうが強くなるって何」


● ジン — 星間解析AI融合

「全宇宙文明・兵器即時解析」

ジン

「私もう図鑑じゃなくて銀河ウィキペディアだ」


イリスは最後に言う。

「これであなた達は」

「旅人から――銀河戦力よ」


静かになるドック。

完成した船はもう“宇宙船”じゃなかった。

創生戦艦だった。


久世が笑う。

「これでネメシスと真正面からやれるな」


イリス

「ええ」

「逃げる旅は終わり」

「ここからは取り戻す旅よ」



 

 

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