3人で勉強会
「おはよう」
「あ、結花おはようー!」
ひかりが元気よくしっぽを振って本当の犬であるかのようにふるまった。
一方、咲良はむすっとした顔でこっちをちらっと見て顔をそらしてる。
「おはよう咲良」
「......ん」
昨日の私の報復がよほど恥ずかしくて効いたのか。やりすぎたかな。
そう思ったもの束の間、咲良は自身のスマホを取り出して画面を見せた。
「そうえばあんた、こんな投稿してたんだっけ。こんなイキったこと書いちゃって」
う......これは確か数年前に私が某所に投稿したコメントだ。
あのやろう、わざわざ昔の投稿を遡ってこんなの探していたのか。
「私も音楽を作ってみたの。」
「おい、まさか」
「わかった? もしアンタがあれを使おうとしたら、私だってこれを使うから。ちゃんと覚えておきなさいよ」
相互確証破壊が成立した。
「え、二人ともまた対立してるの?そろそろ仲良くしてほしいんだけど......」
いつも自分の周りで結花と咲良の対立を見ているひかりは思わずそうこぼした。
「わるい。こいつがいつも絡んでくるから」
「何?私のせいにするの?あんたから絡んでるくせに」
と、いつもの調子で言い争いが続く始末である。
「ふーん。でもなんだかんだ二人はよく一緒にいるよね。悪口言い合っても本気で毛嫌いしているようには見えないし」とひかりは少しからかうような笑みを含めていう。
「本当は仲良くするのが照れくさいだけだったり?」
絶対にそんなことはない!思わず否定の言葉が口から飛び出してしまう。
それより咲良の奴、私と同じタイミングで同じこと言いやがって。見ろよ、わんこが余計に何か勘違いを深めたような顔をしているぞ。
「まあ、確かにひかりのいう通り周りで緊張が続いていると嫌だもんな。もうすぐテスト近いし、咲良が赤点とらないように私が勉強教えてあげるよ」
「ちょっと待って、私赤点とったことないけど!? それに何よ、教えてあげるって! まるで自分の方が勉強できるみたいな言い方!」
「まあまあ、そんな怒るなって。私は咲良のこと心配してるんだぞ」
「どの口が」咲良は私をにらみつけながら言い放つ。
ひかりは通常通り進む光景に呆れながら、テストや勉強といった言葉で何かを想いついたようで話を進めた。
「そうそう、今日よかったら3人で一緒に勉強会しようよ!学校帰りにお店によって勉強したりとかしてみたいな~。二人にも仲良くなってもらいたいし」
「え、勉強会?いいけど」
「うん、いいね。結花が勉強についていてるか不安だったし」
「うるせー!」
ほんと、こいつは一言余計なこと言うんだ。性格悪いわ。
こうして私たち3人は放課後一緒に帰り、どこかに集合して勉強会をすることにした。
放課後、3人で集まって一緒に帰った。
開催場所はひかりの家になった。ちょうどうちら二人の家へ向かう道の途中にあったから。
「おじゃましまーす」
「上がって上がって! こっちが私の部屋!」
ひかりが案内してくれて私たちは彼女の部屋に入った。
私は一年の頃何回かここに来たことある。
部屋には犬のぬいぐるみがあり、ベッドには犬のキャラクターが書かれた毛布がひかれている。本人がイヌミミだけあって、まあ関係するのかは知らないけど、犬が好きなようで犬関連のグッズが何個か置いてある。そういえばこの家では犬を飼っているんだけって。たしかトイプードル。
そんなことを思い出しているうちに、学校のこととか勉強のこととかの話題が始まった。去年と比べると授業の内容が多少難しくなったり、テスト近くてだるい、いやだー、とか定番の話で盛り上がった。
「あ、そうだ。ふたりとも喉乾かない?私は喉乾いてきたかも」
「あー、乾いてるかも?
「じゃあ、私何か飲み物持ってくるね。二人は何飲みたい?」
とひかりは立ち上がって私と咲良に飲み物の種類を尋ねた。
「え、いいの?じゃあオレンジジュースで」と私は言う
「オレンジジュースとかまるで子供ね」すかさず咲良は突っかかってくる。相変わらずうっとおしいな。コイツは。
「私はコーラで。」咲良はこう答えた。いやいやお前だって同じじゃないかよ。コーラを頼んでおいて人に子供っぽいとか言えた立場か?何様よ。
「了解!じゃあ持ってくるから待っててねー!」そう言ってひかりは階段を下りて行った。
いままではひかりが側にいたから、ここはひかりの家だし咲良と対立するのを抑えていたけど、さっきのジュースの件でだんだんとイライラが募って何とかってやりたくなった。ふと咲良のノートを見ると先ほどみんなで解いていた社会の問題の自己採点が書かれていた。
「1、2、3、4、5。うわー5問も間違えている。咲良って勉強苦手なの?私が教えてやろうか?」
「え、何人のノート盗み見してるの気持ち悪い。あんただって数学の問題で同じくらいミスしてたでしょ。しかも単純なミスで。結花はおっちょこちょいだからもう少し気をつけようね?」
お互いに嫌味を言いあい始めた。他人の家にお邪魔しているので双方ともトーンは抑え気味だ。
「お待たせ!ごめんみんな、冷蔵庫にジュースなかった。お茶しかなかった!」ギスギスした雰囲気に一匹の犬が現れた。ひかりという名の犬が。先ほどまで冷え切った関係に雪解けが訪れた。中立な第三者の存在はありがたい。
「じゃあしょうがないね。ありがとう!」と私が答え、「ううん、喉乾いていたからなんでもいいよ。ありがとうね。」と咲良が答えた。じゃあ水道水でも飲んでろ。




