8.僕は
さて、なんで僕がダッシュボードに頭を打ち付けながら叫んでしまったかを説明しようと思う。
まずはヒサコさんが言った物語之中心町だけど、ここは陸の孤島や陸の要塞、天然要塞とも言われる町だ。
なぜなら、町の全方位を山が囲っているからだ。
そんな場所いくらでもあるだろ?とか思ったよね。
僕も初めはそう考えたけど、衛星写真を見てありえないと思ったんだよ。
なぜなら、山で囲われた内側の形がキレイな正方形だったから。
普通、山裾が真っ直ぐ一直線になるなんて、崖でもない限りありえないのだけど、物語之中心町の山裾は崖でもないのに本当に線でもひいたかのように真っ直ぐなんだ。じゃあ逆の山裾は?と見てると、逆の山裾は真っ直ぐ一直線なんてことはなく、普通の山裾だった。
ありえないだろ?
そんな町を中心から南北にキレイに真っ二つにするように東西の山の中央にあるトンネルから国道、高速道路、電車が一直線に通っていて、それが物語之中心町に行くための唯一の交通手段だったりする。
山の高さはそんなにないのに山越えの道路や歩道がないのもありえないことだと思わない?
そういった理由とかもあって物語之中心町は陸の孤島や陸の要塞、天然要塞なんて言われているんだよ。
そして、この町には2つの高校がある。
北の端にある女子高校と南の端にある男子高校。
この2つの高校は日本一、いや世界一と言っていいほど厄介でおかしな名前の高校だったりする。
その理由は、女子高校という名前の高校が男子校であり、男子高校という名前の高校が女子校だということ。
つまり、名前と中身が全く逆なのだ。
まぎらわしいよ!まぎらわしすぎるだろ!
多分、この2つの高校のことを知った人は大体こう叫ぶだろう。そして、なんでこんな高校名にしたのか、何度聞いても不思議で仕方ない。
もちろん、色んなところで色んな都市伝説のような予測がされている。
宇宙人の仕業とか某国の陰謀論とかどこかの秘密結社の地下アジトがあるとか政府が極秘に何かを研究していることから目を反らすためとか神の意思が働いているとか。
まぁ、そう言いたくなるのも分からなくもないよ。
だってここまでキレイな正方形の形で山が町を囲むなんておかしいし、国道や高速道路や電車が町をキレイに二分するように中央に真っ直ぐ通っていて高くもない山の山越えの道路や歩道がないのもおかしいし、そんな町の両サイドに名前と中身が全く逆のおかしな高校が建っているなんて普通にありえないものね。
だからこそ、都市伝説のような噂が出てくるのはおかしくないだろう。
と、話が反れてしまったから戻すけど、ここまで話せばなんで僕がダッシュボードに頭を打ちつけてながら叫んだのか。
そう。僕は女なのだ。
そんな女の僕が男子校である女子高校に入学するなんてありえないことだろ?
確かにみんなは僕が男らしいとか男っぽいとか性別詐欺とか性別詐称とか生まれてくる性別間違えたんじゃない?とか僕が男だったら良かったのにとか色々、ホントに色々言われたけど僕は女だ。
確かに身長は183センチと女子では高いほうだし、声も女子にしては低いから電話越しだと少年と間違えられることは多々あったけど、普段着は基本スカートだし、胸だって最近Cカップまで成長して女性らしくもなったんだ!だから誰がなんと言おうと僕は女なのだ!だから男子校に通うなんて絶対ありえない!ありえないんだから!
はぁはぁ。1度落ち着こう。落ち着いて話をしよう。
だから僕はダッシュボードに頭を打ちつけてながら叫んだのだ。
しかし、これでさっき会った時にヒサコさんが戸惑っていた理由もわかった。
僕が女だったからだろう。
まぁ普通は男子校に入学する人間が女だと思うはずもないし、チョウちゃんがヒサコさんに送った写真も男らしい応援団服姿の僕。なので、ヒサコさんが僕を男だと勘違いするのは仕方ないだろう。
多分、チョウちゃんがヒサコさんに応援団服姿の僕の写真を送ったのは、ヒサコさんに僕が男だと勘違いさせるためという理由もあったのだろう。
これはチョウちゃんへのお仕置きは最大級にするべきだね。あと、男子校への入学を許可した両親にも然るべき報いを受けてもらわなければ僕のイライラは収まらない。
しかし、何度も言うけど僕は男っぽいけど女だ!だから、
僕は男っぽいけど女だから男子校に行くなんて間違ってる!
って、僕は一体誰に向かって説明してたんだ?