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10.この程度では

 うなぎを頼んだことで少し足取りが軽くなったヒサコさんに連れられて理事長室の前までやって来た。


 この中にチョウちゃんが居て、ようやくチョウちゃんへのお仕置きをすることが出来るわけだね。


 ようやくかとワクワクする反面、ここで油断してはいけないと女の勘が言っているので、扉を開けようとするヒサコさんの肩を叩く。


「な」


 振り返ってきたヒサコさんの口に手を当てながら自分の口に人差し指を当て、シー、と静かにするようにジェスチャーすると、頬を赤らめたヒサコさんは1度頷いた。


 今はそんな反応をされても困るんだけど、と思いつつも、自分からした行動が原因なので仕方ないことだ。


 と、自分に言い聞かせつつヒサコさんの口から手を離すと、ヒサコさんと入れ替わるようにして前に出て扉の前に立つ。


 まずは、相手がこちらを見ているかの確認からだね。


 というわけで、スマホを取り出してカメラ機能を立ち上げると、スマホを見ながら周りを1周と天井も見ていく。


 隠しカメラはない、か。


 スマホのカメラ機能で確認すると隠しカメラを見つけることが出来ると前にテレビで言っていたので間違えはないだろう。


 ということは、こっちの動きがチョウちゃんにバレているということはない。


 だったらと僕はジェスチャーで扉横の壁際を指さすと、ヒサコさんは黙って頷いてくれた。なので、2人で扉横まで移動してからヒサコさんに小声で、


「僕がノックしたら僕を連れてきたと言ってください」

「分かりました」


 また少し頬が赤くなったヒサコさんだが、僕の提案には頷いてくれたので、扉をノックする。


「はい」


 ノックの音に反応したチョウちゃんから返事が返ってきた。


「理事長。コウくんをお連れしました」

「入ってくれ」


 チョウちゃんからマジメなトーンの返事が返ってきた。


 しかし、だからといって扉の前に立って開けようとは思わないので横から開ける。すると、


「おかえっ!………あれ?」


 おかえり!と迎え入れようとした相手が居なかったことに戸惑うチョウちゃんの声が聞こえてきたので、やっぱり何かサプライズを考えていたのだろう。


「お~い。ヒサコ。どこ~?コウくんすら居ないんだけど~?」


 不思議に思ったチョウちゃんが顔を出してきた瞬間、その顔をアイアンクローで捕まえた。


「久しぶり、チョウちゃん。会いたかったよ」


 本当にこの時をどれだけ待ちわびただろう。こうやってチョウちゃんをお仕置き出来るこの時を。


「えっ?」


 驚愕の表情で僕を見てくるチョウちゃん。


 その表情だけでも僕の怒りの数%は収まったが、まだまだ溜まった怒りはたくさんあるので、まずは軽く手に力を込める。


「イタい!イタいよコウくん!」


 抗議してくるチョウちゃん。


 しかし、この程度でお仕置きが終わるわけないので力はそのまま入れ続ける。


 あと、まだチョウちゃんの顔しか部屋の外に出ていないので引っ張り出すと、その手にはバズーカが握られていた。


 あれは多分、バズーカ型クラッカーなのだろう。


「やっぱり。何かしてくると思ったよ」


 何も考えずに理事長室に入ったらこのバズーカ型クラッカーを食らっていたわけだ。


「か、歓迎のクラッカーなんだからいいでしょ!」


 確かに。歓迎という意味合いもあるのだろうが、驚かすという意味合いのほうが多く含んでいるだろうからその時点でアウトだろう。さらにいえば、チョウちゃんなら0距離から撃ってくるぐらい普通にしそうなので驚くどころか衝撃でダメージまで食らいそうだ。


「そんな大きなクラッカーを用意しておいて歓迎?驚かす意味合いの方が大きいのじゃない?」


 さらに力を少し強めながらチョウちゃんを押して理事長室の中まで入っていく。


「イタい!イタい!そんなことは!」

「ないとは言わせないよ」


 さらに力を強めるがこれでもまだ力半分だし、溜まった怒りは半分も解消出来ていないのでチョウちゃんのイタいという言葉は聞き流す。


「イタい!イタい!イタい!」


 と言いつつもバズーカ型クラッカーを僕に向けようとしてくるチョウちゃん。


 まぁ、この程度ではチョウちゃんの心は折れないよね。


 そう思っていたので足でバズーカ型クラッカーを蹴り飛ばしてあげた。


「あぁ!」


 反撃の道具を失ったチョウちゃんだが、その目を見るとまだ心は折れてはいないようだった。


 しかし、ここからどうやったところで反撃してくる?


 と考えていると、チョウちゃんはポケットからスイッチを取り出した。


 まさか!さらに何かを仕掛けていたというのか!


 驚く僕の顔を見たチョウちゃんは、痛みに耐えながら口元をニヤけさせた。


 そして、迷いなくスイッチを押した。


 次の瞬間、壁や天井からバズーカ型クラッカーがざっと見渡しただけで100本は突き出てきた。


 それらは全て僕とチョウちゃん、正確に言うなら僕を、しっかりとロックオンしてきた。


 僕やチョウちゃんが食らうだけならいいけど、このままだとヒサコさんまで巻き込んでしまうので、とっさにヒサコさんを押して遠ざける。


「きゃっ」


 ヒサコさんにはあとで謝らないとな、と思った直後にバズーカ型クラッカーから紙吹雪とビニールテープが一斉に発射されて僕とチョウちゃんを直撃し、視界がなくなり動けなくなるくらいビニールテープまみれになってしまった。

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