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第44話 ライからの求婚です



 次の日。離宮に泊まっていた私の元にエリオットとレイオットがやって来た。



「ミアさん。今回はミアさんにも迷惑をかけてしまい申し訳なかったですね。貴女は獅子族とも猛虎族とも関係なかったのに。すみません」


「いえ、私が好きでやったことですしなんとか無事に事件が解決しそうで良かったです」



 レイオットに頭を下げられて私は慌ててそう答える。

 けれどレイオットの「獅子族とも猛虎族とも関係ない」という言葉に少しだけ胸がズキンッとした。



 レイオットの言うとおり私にできるのはここまでだわ。

 これからのことは新しく王位に就くライと猛虎族のレイオットたちで決めていくことなんだから。



 たとえライに愛情を向けられても今の私の存在はライの邪魔になるだけ。

 それを自覚しなければならない。



「レイオットさんたちはこれからどうするんですか?」


「とりあえずライガー将軍とはこれから連絡を密にしてもう二度とジオの中の猛虎族の王が目覚めないようにジオを見張りながら生活するつもりです」



 そうね。猛虎族の王が再び目覚めることがあったら大変かも。

 でもあの時の猛虎族の王の様子だったらきっと再び目覚めたとしてもライの邪魔はしない気がするけど。



 猛虎族の王はライを新しき王だと認めていた。

 再び目覚める可能性は少ないだろう。



「ミアさんはどうされるんですか?」


「え~と……」



 レイオットに問われて私はこれからのことを考える。

 このままこの国の王都に行って商売することも考えたが元々今回の旅は各国の王に私がマクシオン商会の会長になったことを知ってもらうためのもの。


 既にタクオス獅子王や新しい王になるライに私のことを知ってもらえているのだからわざわざ王都に商売に行かずにこの町で商売をして次の国に向かった方がいいかもしれない。

 この世界は広いので時間は無限ではないから他の国を回るのも月日がかかる。



 それにきっと私がいつまでもこの国にいたらライのためにもならないだろうし。



「しばらくこの町で商売したら次の国に移動します」


「そうですか。それじゃあ、これでミアさんとはお別れかもしれませんね。でもまたこの国に商売に来るのでしょ?」


「ええ、もちろんです」


「それならその時は鍛冶師ザキの新作をマクシオン商会に売ってやるよ。だから必ず来いよ」



 ぶっきらぼうな言い方だがエリオットが魅力的な提案をしてくれる。



 鍛冶師ザキの新作を扱えるならマクシオン商会にとってとても有益な話ね。



 私の商人魂に火がつく。

 シャナールとして一流になりたい私だが商人としても一流になりたいのだ。



「それなら必ずこの国に来たらエリオットさんたちに連絡するわね。鍛冶師ザキの新作を扱えるなんて商人として嬉しいわ」


「ああ。ミアだけは特別に格安に売ってやるよ。それじゃあ、俺たちはそろそろ自分の家に戻るから」


「分かったわ。元気でね。エリオットさん、レイオットさん」



 二人とは笑顔で別れた。



 さて、私もマクシオン商会に戻ろうかしら。



 そう思っていた時に再び私の部屋に来訪者がやって来た。

 その人物はライだ。



「ミア、少しだけ話をしてもいいだろうか? とても大事な話なんだ」


「え、ええ、どうぞ」



 部屋のソファに向かい合うように二人で座るとライは真剣な表情で口を開く。



「これから話すことは誰にも話さないでミアの心にしまっておいて欲しい。実はタクオス兄上のことなのだが……」



 そう言ってライが私に話し始めたのは昨夜タクオス獅子王が自分の罪について告白したこととこれからタクオス獅子王の次の王になる話だった。

 中身についてのことは「透明人間」になって聞いていたので私に驚きはない。むしろ部外者といってもいい私に詳細な事件の真実を話してくれるライの誠実さに嬉しくなる。



「そういうことで私はすぐに王都に戻りいろいろと事件の対応をしなければならない」


「そうなのね」


「それに先程マレオを捕まえたという連絡もあった」



 マレオが捕まったの?

 それは良かったわ。



 マレオが捕まればライの即位を邪魔するものはいなくなる。



「それは良かったわ。これから大変だと思うけど頑張ってくださいね」


「ああ、私は必ずこの国の王をなる。そ、それでだな、ミアにはどうしても話しておきたいことがあって」


「何でしょうか?」


「わ、私が獅子王になったら私と結婚してくれないだろうか?」



 ライは頬を僅かに赤くして私に結婚を申し込んできた。



 私もライが好き。でもこの結婚を受けるわけにはいかない。

 だって私の存在はライの邪魔になる。



「すみません、ライ。私はまだ人間族では成人していません。だから結婚の話は私が成人した時に考えていいでしょうか?」



 私が成人するまでの数年の間にきっとライは私より相応しい相手を見つけるはず。

 ライに好意を抱いている私は完全にライの求婚を断るのは忍びなくてギオンの時と同じような言葉を使った。



「そ、そうか。それもそうだな。ではミアが成人した時に改めて求婚しよう。それまでに必ず国の統治を盤石なものにするから」


「はい。ライにならできると思います」


「ミアは王都には来ないのか?」


「ええ。私はこの町での商売が終わったら次の国に行くつもりです」


「分かった。ではまたミアに会える日を楽しみにしている。それでは失礼する」



 ライはニコリを笑みを浮かべて部屋を出て行った。



 はあ、ギオンに続いてライにも求婚されちゃったけど私のことはきっと忘れてしまうわね。

 でもそれがギオンのためにもライのためにもなるんだもん。



 私は離宮からマクシオン商会に戻りしばらくその場所で商売をした後に次の国へと旅立った。




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