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第42話 獅子王家にまつわる事件の真相です



 私はライの部屋へとやって来た。

 そこで私は一瞬躊躇する。

 今はもう夜遅い時間だ。もし何もないのに私がライの部屋に入ってそれをもし外部の者に見られたらライと親密な関係になったと誤解されかねない。

 ライはこれから次代の獅子王になるべき存在。人間の私と深い仲だという噂が立てばライが獅子王になる時に迷惑がかかる。



 仕方ないわ。ここは「透明人間」になってライの部屋に入ろう。

 ライの無事が確認できればいいんだもの。



 私はその場で「透明人間」になり衣服を廊下の柱の陰に隠す。

 そしてライの部屋の扉をそっと開けた。

 最初のリビングには誰もいない。私はそのまま部屋に侵入する。

 するとさらに奥の方の部屋から何か物音が聞こえ私は一気に緊張した。



 誰かがいるのかもしれないわ。

 それともライが目覚めたのかしら。



 緊張する手で奥の部屋の扉を開けるとそこはやはり寝室だった。

 大きなベッドがありライが寝ているのが分かるがそのベッドの横に立っている人物がいるのが確認できる。



 あれはタクオス獅子王だわ!



 タクオス獅子王がライの寝室にいたことで私の勘が当たったのかと思ったがもしかしたらただライの様子を見に来ただけかもしれないので私はそっと寝室に入った。

 タクオス獅子王に近付くとその様子を伺う。



「ライガー。君って本当に昔から邪魔な存在だよね」



 え? ライが昔から邪魔な存在?



 タクオス獅子王はその瞳を濁らせ呟き続ける。



「ライガーが私より猛虎族の血を強く引いたおかげで母上の愛情を一身に受けてさ。まあ、それも仕方ないかな。母上はザキの一族の血を引いていたからライガーが次代の獅子王になると思っていたんだろうから」



 なんですって! ライとタクオス獅子王の母である前王妃が猛虎族の血を引いていたことは知っていたけどそれがザキの一族なんて。

 ということはこの二人はエリオットたちとも親戚関係なのか。

 それにしても前王妃はタクオス獅子王よりライの方に愛情を注いでいたとは知らなかったわ。



「だから私はライガーに復讐してやると決めたんだよ。ライガーは母上が大好きだったから母上がいなくなれば絶望すると思ってね。母上の襲撃事件は私が仕組んだモノだったのにライガーも周囲も気付かないなんて傑作だったな。でもあの事件でライガーが中途半端な獅子族の姿を現してくれたおかげでその後私が王位に就くのが楽だったけどね。君は本当に愚かだよね。母上を殺したのが私だと気付かないなんてさ」



 その言葉に私の驚いて心臓が止まるかと思った。

 まさかタクオス獅子王が自分の母親でもある前王妃を殺害した犯人だとは思わなかった。



 実の母親を殺したいぐらいにライのことを憎んでいたの?



 ライは眠っていて起きる気配はない。

 もしこのことをライが知ったらどう思うだろうか。

 ライはタクオス獅子王のことを心から慕っている。その人物が自分の母親を殺しその理由が母親にタクオス獅子王より自分が愛されたことが原因だと知ったら。きっとライはすごく傷つくに違いない。



「でもね。私がせっかく王位に就いてもやはり君は私の邪魔なんだよ。レアと結婚する時に周囲がそれを認めたのは私が「獅子王」だったからだ。もし私が「獅子王」でなくなればレアとも離婚しろと周囲に言われかねない。そんなことは許せない。だから私は「獅子王」であり続けなければならないんだ。それでマレオと昔母上から聞いた猛虎族の王との約束を利用して君を亡き者にしようとしたのに猛虎族の王に認められるなんて信じられないよ。だからライガー。今度こそ死んでね」



 タクオス獅子王が雪兎族のレア王妃との結婚を認められたのは獅子王だったから周囲が逆らえなかったのね。

 それが本当の理由かは分からないけど少なくともタクオス獅子王はそう信じて王位に固執しているんだわ。

 そして今回マレオと猛虎族の王を利用してライを殺そうとしたというのが真相だったのね。

 やはりタクオス獅子王は獅子族と猛虎族の関係を知っていたのか。



 タクオス獅子王は懐から短剣を取り出した。



 いけない! ライを助けないと!



 私がそう思った時にその場に低い声が響いた。



「タクオス兄上。母上を殺すほど私が憎かったのですね……少し前でしたら貴方の望む通りにこの命を貴方に奪われても良かったですが今はそういかなくなりました。すみません、兄上」



 それまで眠っていたと思っていたライが瞳を開きベッドから身を起こす。

 タクオス獅子王は驚いたように一歩後退った。



「なっ!? 医者にはよく眠らすように睡眠剤を使うように指示したはずなのに!?」


「睡眠剤は私には効きません。母上の襲撃事件の時に眠れなくなり投与された睡眠剤の副作用で睡眠剤が効かない身体になったのですよ、タクオス兄上」



 ライが悲し気な顔になる。

 真実を知ったライの心が深く傷ついたことを私は理解した。



「それは残念だ。だが今、話したことを証明できる者はいない。この場には私とお前しかいないのだからね。お前が何を訴えても誰も信用しないさ」



 そうだ。私は一部始終を聞いていたけど今は「透明人間」になっているから私は証人にはなれないわ。

 ライがこのことを他の人に言っても国王への不敬罪に問われる可能性が高いわね。



 私は唇を噛む。

 なんとかタクオス獅子王の今の言葉を証明する証人がいないだろうか。




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