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第40話 ライの勝利です


 猛虎族の王の攻撃を予測して私はギュッと目を瞑った。

 次の瞬間、身体がグイッと引っ張られふわりとした浮遊感を感じる。

 宙を浮いた感覚は一瞬のことで私の足は再び地面の感触を得た。



 何が起こったの?



 恐る恐る目を開くと先ほど私とライがいた場所から私たちは移動していた。

 よく見るとライが私の衣服を口に咥えている。

 どうやらライが私の衣服を咥えて猛虎族の王からの攻撃を一緒に避けたらしい。



「……ライ……?」


『ミア……大丈夫か?』



 ライが変化したたてがみのある虎の黄金の瞳が心配そうに優しく私を見つめていた。



 ああ、この瞳を私は知ってる!

 ライだわ! 正気に戻ったのね!



「ライ! 良かった! 正気に戻ったのね!」


『ミアのおかげだ。だが今はあの猛虎族の王をどうにかしなければならない。奴をこのままにしていたら被害が拡大する』



 ライの言う通りに周囲はライと猛虎族の王の力によって吹き飛ばされた品物などが散乱している。

 今の段階では人的被害までは確認できないがこのまま猛虎族の王とライが暴れたらケガ人が出る可能性が高い。

 それにこの場にはタクオス獅子王がいるのだ。タクオス獅子王がケガをしたら一大事だ。



「でも、ライ。あの猛虎族の王はジオなのよ! ジオを死なせたくないわ!」



 ライが死ぬのも嫌だがジオが死ぬのも嫌な私はそう叫ぶ。

 するとライの黄金の瞳がフッと和らいだように感じた。



『分かっている。だが猛虎族の王は私が自分より上だと認めなければ引かないはずだ』


「じゃ、じゃあ、どうするの? ライ」


『こうなってしまったら私が猛虎族の王に勝って私こそが次代のこの国の王だと認めてもらう。それしか方法はないし私も腹をくくった』



 ライの瞳に強い意思の光が宿る。

 確かにこの国が表面上引き続き獅子族が治めるにはライが獅子王になることが一番の解決方法だ。猛虎族の血と獅子族の血を半々に引くライだけが両方の一族が納得できる王なのだから。

 そのためにはまず目の前にいる猛虎族の王にライが王としての力があることを認めさせる必要がある。



「だけどジオを死なせたくないわ!」


『大丈夫だ。死なせないように力を加減する。ミア、私を信じて欲しい』



 そうね。私はライを信じるわ。

 ライが猛虎族の王に勝つこともジオを死なせないことも。



「分かったわ、ライ。頑張って!」



 ライは僅かに頷くと私の前に出て猛虎族の王と対峙して声を張り上げる。



『猛虎族の王よ! 細々した攻撃などお互いに時間の無駄だ。ここは自分の最大の力を使っての一発勝負でいこうじゃないか!』


『小僧が。面白い。では我の最大の攻撃を受けてみよ! グオオオオオオーッ!!』



 猛虎族の王が咆哮を上げその身体が激しい炎に包まれる。

 ライの身体にも黄金の雷が発生する。

 次の一撃で勝負を決めるつもりなのだ。


 私には二人の命が無事で勝負が決まることを祈るしかない。



『いくぞ!』



 猛虎族の王が燃え盛る炎で攻撃してきた。炎はまるで槍のような形状でライに向かって放たれる。

 その炎がライの身体を直撃しライが激しい炎に包まれた。



「ライーっ!!」



 攻撃をまともにくらったライの身を案じて私は思わず叫んでしまう。



『口ほどにもないな。燃え尽きてなくなれ!』



 猛虎族の王の勝利を確信したような声が響くと同時に炎に包まれていたライの黄金の瞳がカッと見開かれる。



『やはり私は猛虎族の血を引いていたようだ。炎の攻撃は猛虎族の私には効かない。猛虎族の王よ! 私が新時代の猛虎族の王だ!』



 ライの叫ぶ声が聞こえライの身体から炎の形をした雷撃が放たれる。



 あれは炎? 雷?

 ううん、あれは炎をまとった雷だわ!



 炎をまとった雷は猛虎族の王を直撃した。

 猛虎族の王の身体が炎と雷に包まれる。



『ぐわわわわあぁーっ!!』



 猛虎族の王を絶叫しその場に倒れた。



『ぐうぅ……これが……新しき王の……力か……ククク、見事よ……たしかに……貴様は新しき…王だ……』



 最後にそう言い残した猛虎族の王の身体が変化してジオの姿に戻った。



 ライが猛虎族の王に勝ったわ!

 でもジオが無事か確かめないと!



「ジオ!」



 私がジオに近付いてジオの身体を確認すると意識はないようだが呼吸はちゃんとしているし大きなケガをしているようにも思えない。

 あれだけの攻撃をしてもライは手加減をきちんとしてくれたようだ。



「ジオは無事よ! ありがとう、ライ!」


『それは……良かった……』



 ライの身体がグラリと揺れてその場に倒れライの身体も変化をして獣の姿から人の姿へと戻った。

 私は慌てて今度はライのもとに近付く。



「ライ! しっかりして!」



 しかしライは目を覚まさない。

 そこへタクオス獅子王が現れた。



「おそらく力の放出で体力が尽きたんだろう。ライもそのジオって子も離宮に連れて行こう。ミア会長も一緒に来て欲しい。今回の騒動を説明してもらいたいしね」



 タクオス獅子王は獅子王として今回の真相を知るべき人物だ。

 ライの意識がいつ戻るか分からないから事情を知っている私がタクオス獅子王に説明する必要がある。



「分かりました。今回の事件のことを私から説明します」



 タクオス獅子王にそう答えた私はこの場の片付けをディオンに頼み関係者とともに離宮に向かった。

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