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第39話 猛虎族の王が目覚めました


『ガルルルルゥーッ!』



 目を瞑った私の耳に低い獣の咆哮が聞こえる。

 私は慌てて瞳を開いた。その私の瞳に飛び込んできたのは大きな虎の姿だ。



 え? これがジオが変化した姿なの?

 それならこの虎が猛虎族の王だというの!?



 辺りを見回してもジオの姿はない。

 ジオの封印が解けてこの大きな虎に変化したと考えるのが自然だろう。



「ジオ!」



 私はその虎に向かって叫ぶが私の声に虎は反応せずその鋭い眼差しはライが変化したたてがみのある虎に向けられている。



『貴様が猛虎族の新しき王だと? そんな不完全な虎の姿しかできぬお前など王と認めるわけにはいかぬ』



 ジオから変化した猛虎族の王の声がその場に響き渡った。

 どうやら猛虎族の王は虎に変化しても自我もあるし言葉も話せるらしい。



 自我があって言葉が分かるなら話し合いができるはず。

 それならライとジオが無駄に争うのを回避できるかも。



「猛虎族の王様! ライは本当は猛虎族の王になりたいわけじゃないんです! でもこの国をこれからも穏便に統治するには獅子族と猛虎族の血を引くライが獅子王として王位に就くのが一番良いと判断しただけなんです!」



 正確にはまだライは獅子王ではないしこの案件についてタクオス獅子王に報告もしてないのでこれから先ライが無事に獅子王になれるかは分からない。

 しかしこの場はまず目覚めた猛虎族の王とライが争うのをやめさせることが先決だと考えて私はそう叫ぶ。

 すると猛虎族の王が私の方をチラリと見た。



『たとえお前の言う通りであったとしても我を越える力がなければそれは認められぬ。我を倒せたらこやつが新しき猛虎族の王と認めてやろう』



 猛虎族の王はそう言い放つと同時にその身体が炎に包まれる。

 その炎が猛虎族の特殊能力のようだ。



 ダメだわ! 猛虎族の王は戦いをやめるつもりがないわ!

 それならライから猛虎族の王を説得してもらわないと!



 先程のライは私に対しても威嚇してきたが猛虎族の王が本来の虎の姿でも私と言葉を交わせるならライだって落ち着いてくれれば変化後の姿でも言葉が通じるはず。

 その可能性に賭けて私はライに叫ぶ。



「ライ! 落ち着いて話を聞いて! 貴方が獅子王になる決意を猛虎族の王に話せば争うことはないわ!」


『グルルルルーッ!』



 しかしライは相変わらず私に威嚇の唸り声をあげるだけで私の言葉を理解している様子はない。

 それどころかライの瞳は新たに現れた猛虎族の王に向けられている。

 ライは猛虎族の王を敵と認識しているのだろう。


 そしてライの身体から黄金色の雷が発生してその身を包む。

 不謹慎にも私はその黄金色した雷に包まれた美しく奇妙な獣の姿に見惚れてしまう。



『いくぞ! 小僧!』



 猛虎族の王の声が響いて私はハッと我を取り戻した。

 気がつけば猛虎族の王がライに向かって突進してくる。



「やめてえぇーっ!」



 私は無我夢中で突進する猛虎族の王の前に飛び出して両手を広げて立ちふさがる。



『邪魔だあぁーっ! どけ! 小娘!』


「きゃああっ!!」



 猛虎族の王が私の身体を片足を使って弾き飛ばす。

 ものすごい勢いで私の身体は吹っ飛ばされてライの目の前に倒れ込んだ。

 地面に叩きつけられた衝撃で私の身体に激痛が走った。



「うっ!……ラ、ライ……」



 思わず私の口からライの名前が漏れる。



 ライ、お願い……ライもジオも傷ついて欲しくないの……こんな争いやめて……



 痛みで言葉にならない声で私はライの黄金の瞳を見つめながら懇願する。

 するとそれまで何も映してないように思えたライの黄金の瞳が揺れた。



『……ミア……?』


『女によそ見している暇はないぞ! その小娘もろとも殺してやるわ!』



 ライが私の名前を呼んだ瞬間、猛虎族の王がライと私に向かって飛びかかってきた。



 られる!

 ライ! 私のことはいいから逃げて!



 心の底から私はそう叫んだ。


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