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第38話 ライの本当の姿を見ました

 私たちがマクシオン商会に着くと特に大きな騒ぎは起こっていないようだった。

 おそらくまだタクオス獅子王が襲撃されたということではないのだろう。


 広場の入り口付近には獅子王家の紋章の入った馬車が止まっている。

 タクオス獅子王がマクシオン商会に来たのは本当のようだ。


 タクオス獅子王が商会に来たらディオンが対応しているはずよね。

 ディオンはどこにいるのかしら。


 私はライたちを引き連れながらディオンを探す。

 すると商会が商売をしている一角にディオンがいた。


 その近くに一緒にいる男女が見える。

 タクオス獅子王とレア王妃だ。


「ライ! あそこに獅子王様たちがいるわ!」


 私がライに伝えるとライの厳しい表情も少し和らいだ。

 タクオス獅子王の無事が確認できたからだろう。


「まったく、兄上は人の気も知らずに呑気に買い物などして……」


 そう呟きながらライがタクオス獅子王に近付こうとした時にタクオス獅子王たちが買い物をしている隣りの売り場を見ていた客と思われる男がスッとタクオス獅子王に近付いた。

 一瞬だけその近付いた男の手元がキラリと光った。


 あれは刃物だわ!


 直感的にそれが小型の刃物だと確信した私はライに叫ぶ。


「ライ! あの男、刃物を持っているわ!」


「クソッ!」


 ライもその言葉でその男の刃物に気付いたようで慌ててその男とタクオス獅子王の間に立ちふさがった。

 そのためタクオス獅子王を狙って放たれた小型の刃物がライの腕を掠める。


「きゃあっ!」


「ライガー!?」


 レア王妃の悲鳴とタクオス獅子王の叫ぶ声が聞こえた。

 刃物を放った男は逃げようとしたがライによって取り押さえられた。


「獅子王暗殺の現行犯で逮捕する! おい! お前たちこの男を捕縛しろ!」


 ライの指示を受けてライの親衛隊がその男を縄で縛った。

 しかし暗殺が失敗したというのにその男はライを見てニタニタと笑っている。


 この男はなぜ笑っているの?

 もしかしてまだ何か私が見逃していることがあるのかしら?


「へへへ、作戦はうまく言ったぜ。ライガー将軍様よぉ。あんたが獅子王暗殺を阻止に現れるのは計算済みさ。むしろそうじゃなきゃ困る。俺の暗殺対象はあんただからな」


「なんだと!? …うぅっ!」


 突然ライがその場にうずくまり苦しみ始める。


「ライ! しっかりして! ちょっとあんた! ライが暗殺対象ってどういうことよ!」


 ニタニタ笑う男を私が問い詰めるとその男はさらに愉快そうに笑う。


「言葉通りの意味さ。俺を雇った人物はライガー将軍の命を奪えと言ったのさ。なんでも自分の一番邪魔になるのがライガー将軍なんだとよ。俺が放った刃物には特別な毒が仕込んである。その人物の本性を暴く毒だ」


 毒? ライの本性を暴くってこと?

 それってどういう意味?


 その間にもライは息を乱し苦しそうに顔を歪ませる。


 とにかく毒なら何かの毒消しの薬が効くかも。

 でも本性を暴く毒って聞いたことがないわ。


 私も毒について詳しい知識がある訳ではない。

 マクシオン商会では毒消しの薬も多く扱うが使用された毒の種類が特定されないとそれらの薬は使えない。


「ディオン! 医者を呼んで!」


「はい!」


 ディオンは慌てて医者を呼びに走って行く。

 すると苦し気な声でライが私に言った。


「はあ、はあ、ミア…私から離れろ……兄上を連れて……遠くに……」


「何を言ってるの!? ライをこのままにしておけないわよ!」


「お願いだ……私がアレになってしまう……もう、抑えきれない……うおおおおーっ!!」


「きゃあっ!!」


「ミア会長、危ない!」


 私は雄叫びを上げたライのそばからタクオス獅子王によって引き離される。

 その瞬間、眩い光がライから放たれた。


 な、何が起こったの!?


 反射的に目を瞑ってしまった私が恐る恐る目を開けるとそこには一匹の獣がいる。

 ソレは私が今まで見たことのない奇妙な獣だ。


 身体は虎のような縞模様があるのに頭部には獅子のようなたてがみがある。

 まるで虎と獅子の両方の特徴を持っている獣だ。


 この獣ってもしかしてライの本当の姿?


 先代獅子王がライの本当の姿は奇妙な姿だったと表現していたはずだ。


「ライ!」


『グルルルルゥーっ!!』


 その獣は私を敵視するかのように唸り声を上げた。


「ミア会長! 近付いたらダメだ! 今のライガーは正気ではない!」


 タクオス獅子王は私の腕を掴みライに近付こうとする私を制止する。


 ライが正気じゃないなんて。

 でもなんとかライを元の姿に戻さないと被害が出るかも。


 私は必死にどうすればいいか考える。

 その時、子供の悲鳴のような声が辺りに響いた。


「うわあああああああーっ!!」


 その声の主はジオだ。ジオはマクシオン商会で預かっていたから騒ぎを聞いてここにやって来たのかもしれない。

 ジオの声に重なるように今度はレイオットが叫ぶ。


「いけない! ジオの封印が解ける!」


 え? ジオの封印が解ける?

 あ! そうだ! ジオの中には猛虎族の王が眠っていてライの本来の姿に反応するって言ってたわよね?

 ライが本来の姿になってしまったからジオの封印も解けてしまうの!?


「うまくいった」


 一瞬、私の耳にそんな言葉が聞こえた気がしたがそれが誰の言葉か確かめる間もなくジオの身体から強烈な光が放たれ私は目を瞑ってしまった。



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