第34話 カミオンと約束しました
私はレバーを操作して地下から抜け出した。
外に出ると先程男が動かしていた鏡を使って地下道への出入り口を閉じる。
こうしておけば私が侵入したことは分からないわよね。
急いで自分の服を隠した場所まで戻ると私の透明人間としての能力が解けて元の身体に戻った。
エリオットたちを助けるためには一刻も早く離宮にいるライに会いに行かなければならない。
私は離宮へと向かう。
離宮に着くと兵士にマクシオン商会の会長であることを話しライガー将軍に会いに来たと言ったら通してくれた。
離宮の廊下を早歩きで歩いてライの部屋を目指す。
本当は廊下を走って行きたいところだがここは獅子王が滞在している離宮。
そんな非常識なことをすれば怒られてしまうし最悪不審に思った兵士に拘束されてしまう可能性がある。
まだ獅子王にはエリオットたちのことを話していないので目立った行為をして獅子王に事情がバレるのは避けたい。
最終的にはこのカシン王国の存亡に関わる話になりそうだけどライに相談する前に私が勝手に獅子王に話すわけにはいかないものね。
すると廊下の反対側から見知った顔の男性が歩いて来た。
あ! あの人はライのイトコのカミオンだわ。
「あれ? ミアじゃないか。今日もライガーに会いに来たの?」
「え、ええ、そうです」
今日もって言われると何か私がいつもライといつも一緒にいるって言われてる気がするが最近行動を共にしていた事実があるので反論はできない。
「ふ~ん、そんなに毎日一緒にいたいほどライガーが好きなの?」
「…っ!」
カミオンの直球過ぎる言葉に私は言葉が詰まった。
ライのことが好きかと言われたら好きだ。
だけど私は人間族の商人に過ぎない。獅子王の弟であるライとは身分も種族も違う。
レア王妃には種族も身分も関係ないようなことを言われたが現実的に私がライともし結婚するとなったら様々な反対意見が出るのは間違いない。
「私は自分の身分を弁えていますのでライガー将軍様と私がお付き合いすることはありません」
「それは良かった。ミアが見かけに寄らず大人で助かるよ。ライガーはいずれこの国のなくてはならない人物になる。その時にライガーの隣りにいるのが人間族では困るからね」
カミオンの私を見つめる瞳は真剣だ。
そういえばカミオンはライが獅子王になるのを望んでいるのよね。
ライが獅子王になった時に王妃が人間族だと困るから私に忠告してるのか。
エリオットたちの存在が獅子王家にどんな影響をもたらすかはまだ不透明な部分が多いがカミオンの狙い通りにライが獅子王になる未来があれば私の恋はそこで終わるのかもしれない。
そう思うだけで胸が苦しくなるがその時はライのためにも身を引くことが最適な判断だろう。
「カミオン様。重ねて申し上げますがそのようなご心配は無用です。それでは急ぎますので失礼させていただきます」
突き付けられた現実に涙が出そうになるがグッと堪えてカミオンに一礼をした。
するとカミオンが「フッ」と僅かに笑う気配がする。
「ごめんね、ミア。君の恋を応援できなくて。ライガーに諦めろって言ってもあいつは受け入れないだろうからライガーに告白されても君から断ってくれ。その代わりそうしてくれたら俺は生涯ライガーの味方でいると約束してあげる」
私は頭を上げてカミオンの瞳を真っすぐに見つめた。
もしカミオンが生涯ライの味方でいてくれるならありがたい話よね。
これからこの国がどうなるか分からない危険性があるのならライの味方は一人でも多い方がいいに決まってる。
「カミオン様。そのお約束は必ず守ってくれますか?」
「もちろんだ。約束するよ」
「分かりました。ではカミオン様の仰る通りに致します。ではこれで失礼します」
今度こそ私はカミオンと別れてライの部屋に向かう。
今はライとの恋を考えるよりエリオットたちの救出に集中しなくちゃ。
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