表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/96

第32話 ジオとライの関係は複雑そうです

 二人の男たちの後を追うと中庭のような場所に出た。

 中庭の中央には小さな泉があり泉の周りに三本の白い柱が立っている。


 柱にはそれぞれ鏡が付いていて一つの柱の上には天使像があった。


 ここが「光の泉」かしら?

 ただの小さな泉にしか見えないけど。


 私が疑問に思っていると男が一つの柱に取り付けてあった鏡を動かす。

 鏡は動かされたことによって太陽の光を反射してもう一つの柱にある鏡に光が当たる。


 するとさらにその光は反射して最終的には天使像のある柱の鏡に光が届いた。

 そしてその天使像の柱の鏡が反射した光が泉の中央に光を差し込む。


 すると「ゴゴゴゴーッ」という音と共に泉の中から石柱のようなモノが現れた。

 そこには扉が付いている。


「おい、早く行くぞ」


「おう」


 男たちが扉を開けると地下に向かう階段があるのが見えた。


 光の泉の中を探せってこの地下への階段を見つけろってことだったのね。


 二人の男が階段を下りて行ったので私は入り口が閉まる前に男たちと中に入る。

 中に入った男たちは階段を降りた所にあったレバーを上げた。すると先ほどの入り口が再び音を立てて閉まっていく。


 なるほど。中からはこのレバーを操作して開け閉めするのか。


 地下には人の手で掘ったと思われるトンネルのような通路があった。

 通路には所々にランプの灯りがあるので比較的明るい。


 奥へと進む男たちに私はさらについて行く。


「おい、俺はあの方に報告して来るからお前は先に捕まえた奴らに食わせる飯を奴らの所に持って行け。まだ奴らを死なせる訳にはいかないからな」


「分かった」


 男たちは二手に分かれる。

 私はどっちの男について行くか迷った。


 捕まえた奴らってエリオットたちの可能性が高いわよね。

 あの方に報告の「あの方」は今回の黒幕かもしれないからそれが誰か調べるのも重要かも。

 でもまずはエリオットたちが無事なことを確かめたいわ。


 「透明人間」になっている今の状態でエリオットたちを救えるかは分からないが無事かどうかの確認はしておきたい。

 犯人たちは「まだ死なせる訳にはいかない」とは言ってたが現在どのような状態に置かれているのかを知っておくべきだろう。


 私はエリオットたちの方に向かうと思われる男の後ろを追った。

 男が行きついた先には牢屋がありそこの中にエリオットとレイオットの姿がある。


 二人は牢屋の中でも手足をロープで縛られ座っていた。

 男が近付くと二人とも顔をこちらに向ける。


 エリオット! レイオット! 生きててよかった!


 男が牢屋の檻の下にある小さな穴から自分が持ってきたパンを二つ中に入れた。


「おらよ! 食事だ。死にたくなかったら食いな」


「手が使えないのに食えって言うのか?」


 エリオットが男に挑戦的に言葉を発するが男は鼻で笑う。


「その手には乗らねえよ。お前たちには何事も牢屋越しに行えって言われてるんでね。あんだけ捕らえるのに苦労させやがって。生かしてやってるだけありがたく思いな!」


 男はそう言って元来た通路を戻って行った。


「チッ! ジオのことがなければ奴らなんか殺してやったのに…」


 エリオットは悔しそうに去っていく男の後ろ姿を睨む。


「まあまあ、彼の言う通りすぐに殺されなかっただけありがたく思わねば。ジオの中に眠るアレを起こされる訳にはいかなかったんですから」


 レイオットがエリオットを宥めるように小さな声で注意した。


 ジオの中に眠るアレを起こされる訳にはいかなかった?

 アレって何かしら?

 もしかしてそのジオの中に眠る何かを目覚めさせないためにレイオットたちは犯人たちにわざと捕まったの?


「ジオはうまくミアに保護されたかな」


「たぶん大丈夫でしょう。ミアはライガー将軍と私たちの家に来たはずです。最悪、ジオのアレが目覚めてもライガー将軍が何とかすると思いますから」


「どうだかな。レイオットに事前に言われてたからジオを逃がすことを最優先にしたがライガー将軍だってまだ自分が何者か知らないんだろ?」


「そうですね。知らないからジオと接触してもまだ問題ありませんよ。ジオのアレはライガー将軍の「本当の姿」にしか反応しない。ライガー将軍が自分の「本当の姿」を恐れている限りその姿でジオの前に現れることはないのですから」


「お前も危険な賭けに出るもんだな。会わせる訳にはいかない二人をわざと一緒にさせるなんてさ」


「仕方ありません。今までは逃げることでジオのアレが目覚めることを防いできましたがジオの存在があの男に知られてしまった以上、私たちだけでジオを隠すのには限度があります」


「まあ、いずれはあの二人は決着をつけなきゃいけない日が来るのは俺にも分かっているが…」


「今はおとなしく体力を温存しましょう。いざという時に動けるように」


「そうだな」


 二人はそのまま黙ってしまった。

 私は二人の会話を聞いて頭に疑問符ばかりが浮かぶ。


 ジオのアレとは何なのか。

 ライの「本当の姿」というのは何なのか。


 そしてジオとライが本来出会ってはいけない存在だった理由も分からない。

 それに二人が決着をつけるという意味も。


 ジオとライとの関係は一筋縄ではいかない複雑な関係なのかもしれない。


 「透明人間」になっていなければこの場で二人に質問できたかもしれないが今は私の存在をエリオットたちに知られる訳にはいかない。


 とりあえず疑問は置いておいてエリオットとレイオットはすぐに助けなければ死ぬという状態ではないことが分かった。

 それならここを脱出してすぐにライに応援を頼んで助けにくればいいだろう。


 実際問題、牢屋の檻を開ける方法が今の私にはないし。


 エリオットとレイオット。もう少し我慢してね。必ず助けに来るから。


 私は牢屋から離れると黒幕を探すために通路を戻り始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ