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第31話 エリオットからのメッセージです

 すやすやと眠るジオの顔を見ながら私はこれからのことを考える。


 まずはエリオットとレイオットを捜すことが第一よね。

 この二人が見つかれば「獅子王の剣」の秘密や「獅子族」と「猛虎族」の関係も分かるし。


 ライの母親の前王妃襲撃事件のことも調査したいがそれは多少後回しになっても仕方ない。

 エリオットとレイオットは生きていると私は信じているが襲撃者に連れて行かれたと考えるのが自然だ。


 それならエリオットたちは今も命の危険に晒されているに違いない。


 どこに拉致されたかもう一度エリオットたちの家に手掛かりがないか探してみようかしら。


 襲撃者が再びあの家に現れる危険性もあるが私の「透明人間」の能力で姿を消していれば襲撃者に見つかることはないから問題ないはず。


 私がそう思っているとジオの声が聞こえる。


「う~ん…エリオット兄ちゃん…レイオット兄ちゃん…」


 どうやらエリオットたちの夢を見ているようだ。

 そこでジオが寝返りをうつ。


 その瞬間、ジオが寝る時まで握って手放さなかったエリオットの短剣がジオの手を離れベッドから床に落ちた。

 短剣は「ガチャン」と音を立てて剣が鞘から飛び出たがジオは目を覚まさない。


 この短剣はジオが寝ている時は離しておいた方がいいわね。


 たとえ今のジオにとってはこの短剣がエリオットたちの代わりであっても短剣は短剣。

 寝ている間にジオがケガでもしたら困る。


 私は床に落ちたエリオットの短剣の剣と鞘を拾い上げた。

 剣を鞘に納める前にその剣と鞘を見る。


 やっぱりザキの短剣は美しいわよね。刃の部分も鞘の装飾も。


 商人としての好奇心が湧いて私はその短剣の剣と鞘をよく観察してみる。

 すると鞘の部分に縦に割れ目のようなモノがあった。落とした時に鞘が破損して割れ目ができたのかとも思ったがそれにしては割れ目の筋が直線的だ。


 もしかしてこの鞘は二つに割れるのかしら。


 そう思って鞘の部分を割れ目に沿うように力を入れてみると思った通りに鞘が割れた。

 そして鞘の中から小さく丸めた紙が出て来る。


 なんだろう? これは。


 丸めた紙を広げるとそこには文字が書いてあった。

 その文字は『ミア。光の泉の中を探せ』とある。


 光の泉? 私のこと名指ししているからこれはエリオットからの私へのメッセージだわ! 


 もしかしてエリオットは今回の襲撃を予測していたのかもしれない。

 だから短剣にメモを入れてジオに託したのかも。


 私は慌ててルールドの町の地図を取り出し『光の泉』を探す。

 どうやら『光の泉』はエリオットたちの家から遠くない場所にあるようだ。


 このことをライに報せようかしら。

 でも『光の泉』に何があるか分からないわよね。


 紙にはただ『光の泉の中を探せ』としかなくそこに何があるかまでは書いていない。

 私は少し考えてから決めた。


 とりあえず私だけで光の泉に行ってみよう。

 私一人だけなら、最悪、敵が居そうな時は「透明人間」になって逃げられるし。


 もしエリオットたちの行方が分かるようなモノがそこにあるならそれを見つけてからライの力を借りても遅くはないだろう。


 私は短剣の鞘を元通りにしてその短剣をテーブルに置いた。

 そしてテントを出てディオンを呼ぶ。


「ディオン。ちょっと出かけて来るからジオの世話をお願い」


「承知しました。ミア様」 


 これでいいわ。急いで「光の泉」に行かないと。


 私は「光の泉」を目指して出発した。






 「光の泉」にたどり着くとそこは何やら小さな神殿のような建物がある。

 どうやらこの神殿の中に「光の泉」があるようだ。


 神殿の入口には「信者以外立入禁止」と書いた紙が貼ってあった。


 一人で来て正解ね。

 「透明人間」になればこの中に入れるもの。


 私は自分の血を舐めて「透明人間」になると神殿の中に潜入した。

 神殿の中には人の気配がない。


 何の神殿か分からないけど信者とかいてもおかしくないのに。


 その時二人の男が廊下を歩いているのを見つけた。

 人相が悪くとても神を信じるような者たちには見えない。


 怪しい二人ね。


「おい、早く「光の泉」を通って報告しないと怒られるぞ」


「ああ、分かってる。しかしガキが見つからなかったのは誤算だったな」

 

 ガキが見つからなかった? それってジオのことかも。

 ならこの二人はエリオットたちを襲った奴らの可能性が高いわね。


 身体に緊張が走るが今の私は「透明人間」なのでこの二人に見つかるはずはない。


 大丈夫。落ち着いて調査するのよ。


 軽く深呼吸して私は自分自身に言い聞かせる。

 二人の会話からこの二人が「光の泉」に向かっているのは分かったので私は男たちの後をついて行くことにした。

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