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第29話 ザキが襲撃されたようです

 レア王妃にライの過去に関する事件を聞いて衝撃を受けたのは事実だけれどとりあえず今はいろんなことが分からないままで手の打ちようがない。

 獅子王の剣を抜くからくりは何なのか。獅子族と猛虎族の関係は何なのか。獅子族がカシン王国を治める時代が終わってるとはどういうことなのか。

 そしてライのお母様の襲撃事件の真実も調査しなければならない。


 私はレア王妃に「ライガー将軍との約束がありますので」と断りを入れてレア王妃の部屋を出た。

 ライの部屋に向かう廊下を歩きながらこれからのことを考える。


 調査することは多いけどその全てに関係しているのはライの存在よね。

 レイオットも「問題の鍵を握るのはライガー将軍です」って言っていたし。


 そう考えるとまずライをレイオットたちに会わせることが先決だろう。

 少なくともそうすれば獅子王の剣のからくりも獅子族と猛虎族の関係も獅子族がカシン王国を治める時代が終わっているという意味も明らかになるはず。


 私はライの部屋の前に来て扉をノックする。

 すると扉が開いた。


「待っていたよ、ミア。遅いから何かあったのか心配してたんだ」


 黄金の瞳には言葉通りに心配そうな光が宿っている。


 ああ、本当にライの瞳は綺麗よね。美しいだけじゃなくて神々しくて威厳があるというか。


 ライの黄金の瞳に見つめられているというだけで私の心臓はドキドキして高鳴る。


 やっぱり私はライの力になりたい。ライの心の傷を癒してあげたい。 


 でもレア王妃に聞いたライの過去の事件のことを私が知っていることはライには言わない方がいいだろう。

 ライがいつか自ら私に話してくれるまで。


 そう判断した私は笑顔を作りライに答える。


「申し訳ありません。少し寝坊をしてしまって」


「そうか。ミアにはいろいろ負担をかけてしまっているからな。疲れているならザキの家の場所を教えてくれれば私だけでザキに会いに行ってもかまわないが」


 ライは優しく私の身体を労わってくれた。

 その何気ない優しさも嬉しい。


「いえ、大丈夫です。ライは出かける準備はできていますか?」


「ああ。すぐに出かけられる」


「ではザキの家に案内致します」


「分かった。では出かけよう」


 ライと私はそれぞれ馬に乗り離宮を出発してエリオットたちの家を目指した。

 エリオットたちの家に着くとライも私も馬を下りる。

 馬を近くの柱に繋いで私はライと一緒に入口の扉を叩いた。


「エリオットさん! レイオットさん! ミアです。約束通りに来たので開けてください!」


 自分の名前を名乗り扉を叩くが中からは何の応答もない。


 まだ寝てるのかしら? でも二人とも寝てるってことあるのかな?


 時間的に早朝という訳ではない。


「もしかして出かけているのかな」


 ライを連れて来る約束をしたが詳しい日時をレイオットたちと約束をしていた訳ではないのでもしかしたらどこかへ出かけてしまったのかもしれない。


 どうしよう。ここで待ってるしかないかな。


 私がそう思いながらもう一度扉を叩こうとするとその腕をライに掴まれた。


「どうしたんですか? ライ」


「シッ! 静かに。ミアは下がってくれ」


 ライの言葉は小声だったが鋭い声だった。

 私を自分の後ろに移動させてライが扉に身体をくっつけるようにした。

 どうやら家の中の様子を探っているようだ。


 なんだろう。なんか嫌な感じがする。


 ライのその様子を見て私は不安を覚える。


「ミア、もう少し後ろに下がっていてくれ」


「は、はい」


 私が扉から離れるとライは入口の扉を足で蹴破った。

 バキッと音を立てて入口の扉が壊れる。


 な、なに!? どうして扉を壊したの?


 驚愕している私を置いてライが剣を抜いて家の中に入って行った。

 慌てて私もその後に続く。


 家の中に入って私は啞然とした。

 テーブルや椅子がひっくり返り壁や床には血のような赤い染みの跡がある。

 どう見てもなんらかの争いがあったと思われる状態だ。


「いったい何があったの!? レイオットさん! エリオットさん! ジオ!」


 三人の名前を呼ぶが返事はないし三人の姿はない。

 ライは床の血痕を確認している。


「致命的な血の量ではないが…誰かに襲われた可能性が高いな。襲撃者の手がかりや遺体がないか奥の部屋も確認してみよう」


 ライは剣を持ち用心しながら奥の部屋に向かう。


「なんでこんなことに……」


 そういえばレイオットは自分たちを邪魔に思う奴らがいるって言ってなかったっけ?

 もしかしてそいつらに襲撃されたの!?


 私は床にある血の跡を見ながらも自分自身を落ち着かせるように呼吸をする。


 大丈夫よ。ここにはレイオットたちの遺体はないわ。

 襲撃されてケガをしても三人が襲撃者から逃げられた可能性だってゼロじゃない。

 でも奥の部屋に三人の遺体があったら……。


 ライが様子を見に行った奥の部屋の方を見つめながら私は三人の遺体がないことを神様に祈る。


「ミア! こっちに来てくれないか! ここに子供がいる!」


 その時奥の部屋からライの声が聞こえた。


 子供!? もしかしてジオのこと!?

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