第23話 ライのいとこの男性と会いました
ライと離宮に戻りライの部屋に行こうと離宮の中に入ると一人の男性がいた。
金髪に緑の瞳の見た目はまだ若そうな男性だ。
「やあ、ライガー。帰りを待っていたよ」
「カミオンじゃないか。なぜお前が離宮に? 王宮で奴を見張っていろって言ったはずだが」
「もちろん、頼まれた通りに見張っていたさ。だがあの人物の周囲に妙な動きがあってね。それをライガーに伝えようと思ってさ」
「そうか。なら、後で私の部屋で話そう」
カミオンと呼ばれた男性は私に気付いたようで私を見た。
「その可愛い少女は誰だい? ライガーの恋人にしてはまだ幼そうだけど」
いきなり初対面で「幼い」なんてちょっと失礼しちゃうわね。
確かに私はまだ14歳だけどマクシオン商会の会長を務めるぐらいの実力はあるのよ。
だいたいこの人誰なのかしら?
「コホン! 失礼なことを言うな、カミオン。彼女はマクシオン商会の会長のミア殿だ。ミア、この男は私のいとこの王族の一人、カミオン・ミラース・カシンだ」
ライのいとこだったのか。王族の一人というならきちんと挨拶しておくべきね。
「初めまして。カミオン様。マクシオン商会の会長のミア・マクシオンと申します」
私は自己紹介をしてカミオンに頭を下げる。
「へえ、君がマクシオン商会の新しい会長か。よろしくね、ミア。ライガーの恋人が飽きたら俺の恋人にならない?」
「っ!? 」
あまりに軽い口調で自分の恋人にならないかと誘うカミオンに思わず私は言葉が詰まった。
慌てた様子でライがカミオンに説明する。
「わ、私とミアはそのような関係ではない! 彼女に失礼じゃないか! 謝れ、カミオン!」
「ふ~ん、違うのか。てっきり女を近付かせないライガーが連れていた女だから恋人だと思ったのに。まあ、でもまだ身体も成長途中のようだからもう少し大人になってから恋人にするのもいいかもね」
カミオンの視線が私の胸の辺りを見ていたので私は自分の胸を手で隠すようにした。
もちろん服を着ているので胸が見えているわけではないが男性に注目されるほど私の胸が大きくないことは私自身が一番知っている。
ちょっと! 変な目で見ないでよ!
今は胸はないけどいずれ私だって胸ぐらい大きくなるわよ!
私は非難めいた目線でカミオンを見るがカミオンはニヤニヤしているだけで自分が失礼な言葉を言ったと反省している様子はない。
「カミオン……それ以上ミアを侮辱するならたとえお前でも許さぬぞ」
地獄の底から響き渡るような低い冷たい声をライが発した。
ライの瞳は薬の効果が切れたのか元の黄金の瞳に戻っている。
カミオンを睨みつけるその鋭い視線は視線だけで相手を殺してしまえそうにも感じた。
「分かった! 分かったって! 本気で怒るなよ、ライガー。ちょっとした冗談さ。ミアは今でも十分魅力的な女性だって認めるし、ライガーの恋人を俺が本気で奪う訳ないじゃん」
「だからミアは私とは…」
「ラ、ライガー将軍様。私は気にしてないので怒らないでください。みんなも見ていますし…」
そこでハッとしたようにライが辺りを見ると離宮の使用人や兵士たちが遠巻きに騒いでいる私たちを見ていた。
廊下で大声を出していたのでみんなの注目を引いてしまったのだ。
「す、すまない。つい声を荒げ過ぎた」
「そうそう内密な話をしに来たのにここで騒いじゃダメじゃないか。ライガー」
いかにも悪いのはライガーだと言わんばかりの態度をカミオンは取る。
このカミオンって人は何なのよ。自分がライを怒らせるようなこと言っておいてライが騒いだのが悪いみたいに言うなんて。
でもライのいとこの王族に私から喧嘩を売る訳にはいかないもんね。
納得はできないけどここは早々にライの部屋に行った方がいいわね。
「お前いつか覚えてろよ。ミア、とりあえず私の部屋へ行こう。カミオン。私はミアと少し話があるんだ。それが終わったらお前の話を聞くから客室で待っててくれ」
「分かったよ。俺だって恋人の二人の逢瀬の邪魔なんかしないさ。でもこっちも割と大事な話だから二人で仲良くやることはちゃっちゃと終わらせて俺を呼んでね。朝まで俺を待たせないでくれよ」
「カミオン! 貴様何言って…」
「ライガー将軍様、落ち着いてください! とりあえず部屋へ行きましょう!」
私がライの腕を掴むと再びライは我に戻ったようで私を見る。
「す、すまない、ミア。では私の部屋に行こう」
「ええ」
再びライがカミオンと口論にならないように私はライの腕を掴んだ手を離さないでいた。
ライと私はライの部屋に向かう。
廊下の角を曲がる時に私は一瞬だけ振り返りカミオンを見た。
カミオンは私と視線が合うとウィンクしてくる。
もう、なんだか分からない男だけど、ライを怒らせる能力は天才的かしら。
でもライとカミオンからは言い争っていても不穏な感じは受けなかった。
普段は仲が良い二人なのかもしれない。
カミオンか。何かライに話があったみたいだけど私の話も重要だもんね。
私はカミオンのウィンクには何も反応せずこの場では無視することにした。