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第20話 鍛冶師ザキは二人いました

 エリオットは町外れの石造りの家まで来るとようやく振り返って私を見た。


「ここが俺たち兄弟の家だ。中に入りな。お茶ぐらい出してやるから」


 抱いていたジオを下ろしてエリオットは扉を開けて中に入って行く。

 その後を追うようにジオも家の中に入って行った。


 さっき俺たち兄弟の家って言ったけど両親とか他に家族はいないのかしら。

 

 もしそうなら男性しか住んでいない家に一人で入るのは危険だ。

 でも中にはジオがいる。


 いくらなんでも幼い弟の前で女性を襲うってことはないわよね。


 そう考えて私も扉を開けて中に入る。

 家の中は見た目より大きくて奥行きのある家のようだ。


 最初の部屋は食事をしたりするための部屋なのかテーブルと椅子がある。


「そこの椅子に座って待ってな。今、お茶を淹れるから。ジオは自分の部屋で勉強してろ」

「は~い。エリオット兄ちゃん」


 ジオは素直に返事をして家の奥に行ってしまう。

 エリオットも家の奥に行ってしまったので私はおとなしく言われた通りに椅子に座って待つことにした。


 部屋は男兄弟で住んでるわりには綺麗に片付いている。

 そして壁には剣や斧、槍などの武器が飾られていた。


 この国は武器の需要が高いって言ってたものね。

 それに他種族との争いも多いって言ってたからこの飾ってある武器は実戦用ね。


 武器は剣に限らず「儀礼用」のものと「実戦用」のものに別れる。

 私の目利きではこの部屋に飾られている武器は一見して儀礼用に見えるがよく見るとちゃんと実戦用の武器の特徴を持っていた。


 そしてその中の一つの剣に私の目が留まる。


「あれは……ザキの剣だわ!」


 思わず私は声を出してしまった。

 そして椅子から立ち上がりその壁に飾られている剣の側に行く。


 その剣の文様はザキが好んで使用する文様で複雑な文様なので他の鍛冶師では真似ができないと言われている。


 この剣があるってことはエリオットが本当にザキと繋がっている可能性は強いわね。


「へえ、あなたは武器の目利きができるんですか」

「っ!」


 誰もいないと思っていたら後ろから声をかけられて私は驚いた。

 振り返るとエリオットがいる。


「え、ええ。仕事の関係でいろんな物の目利きをすることがあって……」

「そうするとあなたは商人か何かなんですか?」


 エリオットがニコリと笑みを浮かべながら私に近付いてきた。

 そこで私は違和感を覚える。


 あれ? エリオットってさっきまで少しぶっきらぼうで言葉もこんな丁寧な感じじゃなかったような。


 一瞬、別人かとも思ったが顔も身体つきもどう見てもエリオットだった。


「どうかされましたか?」

「あ、いえ。別に……」


 そう言い返したがやはり先ほどとは違う優しささえ感じるエリオットの笑顔に私の疑念が膨らむ。


「そういえばあなたは鍛冶師のザキを探しているんですよね?」

「え、ええ。そうです。先ほどザキに会わせてくれるって言いましたよね? ザキはどこにいるんですか?」


「目の前にいるだろうが」

「え?」


 もう一人の男性の声が聞こえたのでそちらを見るとそこにもエリオットがいた。


 エリオットが二人!? どういうこと、これ!?


 驚いて固まった私に後から現れたエリオットが持ってきたお茶の入ったカップをテーブルに置く。

 カップは全部で三つだ。ということは私が幻覚を見ているわけではないはず。


「やれやれ、彼女の驚きようを見ると私たちが双子だって話していなかったのかい? エリオット」

「あ? だって俺たちに会えば双子ってことぐらい分かるだろう? レイオット」

「ふ、双子……」


 私が呟くとレイオットと呼ばれた男性が申し訳なさそうに私に声をかけた。


「ごめんね。エリオットはめんどくさがりだから説明不足で。私はエリオットの双子の兄のレイオットです。まあ、椅子に座ってください」

「そ、そうなんですね…」


 心臓が止まるぐらい驚いたが双子だと聞けば納得できる。


 そして私たち三人は椅子に座った。

 私の前にはテーブルを挟んでそっくりな双子のエリオットとレイオットが座っている。


 でもこんなに姿がそっくりなのに中身は違う感じね。

 まあ、いいわ。とにかく今はザキの居場所を聞かないと。


「すみません。私も驚いてしまって。それで話の続きですが鍛冶師ザキは今どこに?」

「ああ? さっきの言葉聞いてなかったのか? ザキは俺たち二人のことだよ」

「へ?」


 思わず間抜けな声を出した私にレイオットが苦笑交じりに説明してくれる。


「私たちは二人で「鍛冶師ザキ」なんです。私が剣を作ってエリオットは鞘を作り装飾を施します。だから二人とも「鍛冶師ザキ」なんです」


「鍛冶師ザキって二人いたんですか!?」


 再び私は驚いて声を上げた。

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