表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/89

第6話 大予言者ミアと私の関係です

 私がディオンと他の商人たちに挨拶をしていると後ろから呼びかける声が聞こえた。


「お~い、ミア!」


 私が振り向くとそこには四十代後半くらいの黒髪に黒い瞳の男性がいて私に近付いて来る。


「まあ、コリンドおじさん。ここで商売していたの?」

「まあね。私たちの商隊は明日には他の国に行くがね」


 このコリンドは私の父の親友であり私と同じ商人だ。

 スナード商会の会長をしている。

 マクシオン商会ほどではないがスナード商会も商人の間では名が売れた商会だ。


 父が亡くなった時は葬儀の準備とかもいろいろ手伝ってくれた。

 私にとっては本当の叔父さんのような存在。


「マクシオン商会がアインダル王国に来ると聞いたからもしかしたら会えるかと思っていたがミアの元気そうな顔が見れて嬉しいよ」

「ありがとう、コリンドおじさん。父が亡くなった時はお世話になりました」

「いやいや、ナルファは私の親友だったからね。彼が亡くなったのは残念だよ」


 コリンドは表情を若干曇らせる。

 ナルファというのは私のお父様の名前だ。

 子供の時からお父様とコリンドは本当に仲が良かった。


 お互いに商人なのでライバルといえばライバルなのだが、それよりもお互いに情報交換をしたり品物の取引をしたりして協力していることが多かった。


 商人たちはライバルであると同時に情報交換をしてどこで商売をするのがいいのかを判断する。


 商人が扱う品物は商隊によって特徴があるし、まったく同じモノを取り扱うわけではないからそれよりはお互いに協力して商売をした方が効率が良いと商人たちは考えている。


 その結果できたのが私の育った「商人の町」だ。

 商人の町はシャガー大河に架かる大きな橋を渡って東側に少し行った所にありどこの国の領土でもない。

 住んでいるのは基本的に商人たちだけだ。


 商人たちはこの「商人の町」で商売の準備をして西側の人間の住むグドリアーナ帝国に行って商売したり東側の異種族の国に行って商売をする。


 実は私のお父様は私が産まれるまではグドリアーナ帝国に住んでいた。

 ところが私が産まれた時にお父様もお母様も困ってしまった。

 なぜなら私が大予言者ミアが予言した日時に産まれた子供だったから。


 ギオンも言っていた大予言者ミア。

 大予言者ミアについては謎の多い人物だがこのミアが存在したのは約千年前と言われている。


 そしてミアが予言したことはこの千年の間に次々に的中してきたため、大予言者ミアの名前は有名になった。


 その大予言者ミアの最後の予言が千年後のある日時に産まれた子供は『運命の王』になるというものだった。


 異種族の国ではあまりそのことに興味を示す者はいなかったが人間族の国であるグドリアーナ帝国は違った。


 グドリアーナ帝国の勇者王はこの子供が生まれるのを極端に恐れていたらしい。

 自分の王位を脅かす者として。


 なのでお父様たちには勇者王に私がその日時に産まれた子供だと知られたら殺されるかもしれないと思い悩んだ。

 そしてお母様が言ったらしい。


 『商人の町なら大陸の東側だから勇者王も気づかないんじゃない?そこへ引っ越したらどうかしら?』

 『そうだな。それなら安心だ。よし、引っ越そう』


 あっさりと商人の町への引っ越しを決めた両親。


 その時はマクシオン商会は既に大きな商会だったから引っ越すのも大変だったけど、「商人の町に行ってもっと商売を手広くやる」というお父様の言葉を疑う者はいなかった。


 そして私は商人の町で育つことになる。

 でもこの時の両親の判断は間違っていなかった。


 私たちが商人の町で生活を始めた頃、グドリアーナ帝国では勇者王による一歳以下の子供を虐殺する事件が起こったのだ。


 まったく何が「勇者王」よ。勇者が子供を虐殺するなんてさ。


 でもそれなら私の名前を大予言者ミアと同じミアにする必要があったのかって思ったけど、答えは単純だった。


 大予言者ミアにあやかりたいと「ミア」と名付ける親が人間には多かっただけ。

 逆に「ミア」と名前を付けた方が目くらましになるとお父様は考えたのだ。


 木の葉を隠すなら森の中にっていう発想と同じ。

 おかげで私が予言の日時に産まれたことを疑っている人物はいない。


 まあ、でも私が『運命の王』なのかは私も知らない。

 他の人と違うのは前世の記憶があるくらいだからね。

 それとお父様から受け継いだ「透明人間」のスキルか。


「ミア。今日の夕食を一緒に食べないかい?」


 コリンドがそう言ったので私は頷く。


「喜んで」

「じゃあ。夕方テントに行くから」

「分かったわ。ではまたあとでね。コリンドおじさん」


 私はコリンドと別れて再び商人たちへの挨拶巡りを始めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ